Facebookアプリアワード1位!審査員も絶賛した図書館開設サービス「リブライズ」

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執筆者: 谷垣 俊介

審査員も驚き!わずか1カ月で8700冊が登録。簡単に図書館を開設できるサービス
展開している事業内容・特徴

librize1カフェやコワーキングスペースなどの本棚に、オーナーの好みの本を置いているのをよく目にする。一般的に、それらは自由に閲覧可能で、一部貸し出しを行っているところもある。今回は、そのような“本が集まる場”を有効活用したビジネスを紹介しよう。それが、“すべての本棚を図書館に!”をコンセプトとした「リブライズ」だ。

簡単にいうと、「リブライズ」は、カフェやコワーキングスペースなど、本が集まる場所を図書館にしてしまうサービスである。「リブライズ」で図書館の開設に必要なのは、数千円のバーコードリーダーとFacebookアカウントのみ。通常の図書館で利用されている蔵書管理・貸出管理のシステムはかなり高額のため、本の貸し出しのシステムを構築したくてもできなかったというオーナーなどから人気を集めている。

図書館の開設方法は、まず「リブライズ」のサイトにログインし、自分がオーナーのFacebookページで本棚を作成し、本の裏表紙にあるバーコードをバーコードリーダーで読み取る。読みとられたものから、開設した本棚に本が登録されていくという仕組みだ。スキャンした本の表紙写真やタイトル、説明はアマゾンから抽出されるため、一気に100冊、200冊と登録してもさほど手間はかからない。現在はアマゾンにアップされている本しか扱うことができないが、将来的には、アマゾン上にない同人誌や、独自に制作した本を扱うことも考えているという。

図書館が開設されているカフェやコワーキングスペースのサイトページ内に「リブライズ」へのリンクを貼り付けることで、サイト内の一つのコンテンツとして利用されている。本を借りる際は、登録時に発行されたスマートフォンに表示される自分専用の貸し出しカード画面をスキャンしてもらうのみ。また、貸し借りの履歴はフェイスブックページに記録されていく。

キーワード検索機能もあり、借りたい本の情報を入力することで、その本が置いてある場所を知ることもできる。貸出中の本も確認することができるので、その場所に行ってみたけど借りたい本がなかったということは避けられる。

開設された図書館の本棚は表紙写真で一覧することができ、それぞれの図書館のオーナーがどのような分野に関心があるのか、その人となりがわかる。例えば、東南アジアの旅に関連する本が中心の図書館には、旅の情報収集をしたい人、旅が趣味の人など、オーナーとの意見交換を望む人がコンタクトを取っている。このように、単に読みたい本を借りるだけでなく、同じ趣向を持つ人と本をきっかけとして出会うことができるというわけだ。

通常の図書館は“本”を求めて人が集まるが、リブライズは、まずオーナーとの接点から始まり、そこから情報交換などの交流へ発展することで、本の貸し借りが行われているようだ。オーナーの人となりが見えることは他のSNSにはない特徴だという。

「リブライズ」は2012年9月3日にオープンし、1カ月が経過した10月現在で、貸し出しカードを取得したユーザー数は約1000人。図書館の設置場所は、北は仙台、南は沖縄まで60カ所以上存在しており、蔵書はすでに約8700冊にものぼる。最近ではマニラからの登録もあり、海外へも進出している。

また、「リブライズ」は一人一人のユーザーの滞在時間が長いことも特徴だ。ほとんどのWebサイトの滞在時間は、一人当たり数十秒が一般的といわれているが、「リブライズ」の滞在時間は平均して5~6分。いかに、このサービスへユーザーが興味を持ち、さまざまな本や施設に興味持っているということがわかる。

2012年9月26日には、「フェイスブックアプリアワード」で第1位に輝き、賞金50万円を獲得した。100ものアプリの中から1位に選ばれ、審査員がその場で「すごい!」とツイッターでつぶやくほどの高評価だったという。

本を活用して交流が生まれ、いい出会いをつくることができれば面白いと思った
ビジネスアイデア発想のきっかけ

librize2「リブライズ」を運営しているのは、フリーランスのクリエイター・エンジニアでもある地藏真作(ちくら しんさく)氏と同じくフリーランスで活動する河村奨氏。人が集まるスペースに本が置いてあることが多いことから、本を活用して人との交流が生まれる仕組みをつくれば面白いのではないかと考えたことから開発をスタートした。

スマートフォンの普及により、人々が“シンプルさ”を求めるようになったため、「リブライズ」の開発も“シンプルさ”を追求した。バーコードスキャンの機能はストレスのないよう、非常に簡単に仕上げるよう工夫し、タイピングなどの難しい作業は省いた。安いバーコードリーダーでは読み取りエラーを起こす可能性があるので、エラーが出ないよう補正する機能も取り入れたという。あまりの簡単操作に驚くユーザーも多いようだ。

河村氏もフリーのプログラマー・デザイナーなので、サービスの開発自体は苦労する事なくスムーズに進める事ができた。フリーの仕事をやりながらの開発だったが、「リブライズ」を開発することが非常に面白く、ついつい熱中してしまうあまり、本業に使う時間を確保するよう注意しなければならなかったほどだという。

そうしてリリースされたリブライズは瞬く間に人気サービスとなったが、「リリースしたタイミングもよかった」と地藏氏は語る。2011年3月の東日本大震災以降、SNSの必要性が見直されるようになり、Facebookを筆頭に世の中に必要な「インフラ」として受け入れられるようになった。地藏氏は、SNSの広がりとともに、個人が自分の考えを発信し、それがさまざまな人の共感を呼んでいると見ていた。特に地藏氏がよく利用する下北沢は、「若者の街として個性が強いこともあり、このような空気を他の地域より顕著に感じやすかったのかもしれない」と話す。

個性のあるコミュニティは他の人が入りにくいというデメリットもあるかもしれないが、逆に考えれば訪問者をフィルタリングすることにつながる。そのため、嗜好が似ている人が集まりやすいというメリットを享受できたのだろう。そうした個の発信、共感の活発化の風が強まったタイミングで、「リブライズ」をオープンすることができたことは、確かにグッドタイミングだったといえる。

当初は、3000円程のバーコードリーダーを自腹で購入してまで「リブライズ」を利用してくれるユーザーがいるのか心配していたそうだ。しかし、予想以上に多くの利用者がいたことへの驚きと感謝の気持ちで、彼らのためにより使いやすく便利なサービスを目指し、機能の進化を継続させている。

SNS流行の追い風に乗ってマネタイズのチャンスを狙い、世界中の本棚を図書館にする!
将来への展望

地藏氏の夢は、“世界中の本棚を図書館にすること”だという。そのために、スマートフォン版、英語版などを順次オープンしていく予定だ。

また、もっとユーザー数・書籍数を増加させるため、オンラインではなく、あえてオフラインでのイベントを通じたプロモーションも積極的に行っている。例えば、コミュニティスペースで書籍の「スキャン祭り」を開催したり、図書館を開設したいと思っている個人や団体に、実際に「リブライズ」を体験してもらうイベントも、カフェや図書館と共同で定期的に開催している。河村氏が運営する「下北沢オープンソースカフェ 」では、不定期にリブライズの説明を行っているのでぜひ足を運んでみてほしい。

現在、収益はAmazonのアフィリエイトから得ており、現時点では「リブライズ」単独で運営していくまでには達していないという。しかし、SNSの利用者数や利用時間が増加し続けている現在、マネタイズのチャンスは今後も増えていくと地藏氏は考えている。そして、インタビューの最後に、「今後も、ユーザーに喜んでもらえるものから徐々にサービス展開していき、自然なかたちでマネタイズも取り入れていきたい」と語ってくれた。

リブライズ ~すべての本棚を図書館に~
代表者:地藏 真作 スタッフ数:2名
設立:2012年9月 URL:http://librize.com/
事業内容:
リブライズの開発・運営

当記事の内容は 2012/11/1 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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