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大学生が中心の地域コミュニティーで“パソコン音痴”を解消
展開している事業内容・特徴
現在、生活のあらゆる場面で「パソコン」が使われるようになり、現代を生きる上で欠かせないものになってきている。しかし、このような時代にパソコンの操作に苦手意識・コンプレックスのある“パソコンプレックス”の人もいる。そのような方に向けたサービスを提供しているのが、トライワープだ。
トライワープが展開しているパソコン教室では“パソコンプレックス”の解消をテーマに絞っており、『スキルアップではなく生活をより豊かにするためのパソコン教室』をコンセプトに、「くわしくなりたいわけじゃないけどパソコンは使ってみたい」というユーザー(主に40~70代)だけをターゲットにしている。
例えば「超入門コース」では、マウスの使い方だけで3時間掛けるといったように、難しいことは一切教えず、ユーザーが「パソコンに触れるようになっちゃったかも!」という実感を得られる内容の授業を行っている。
ここまでなら、普通のパソコン教室とあまりかわりがないが、実はこの事業のポイントは「パソコンを教えることが目的ではない…」というところにある。
実は、パソコン教室のインストラクターは、隣接する千葉大学の学生が担っている(トライワープの創業者である虎岩氏も千葉大学の出身)。大学生がパソコンを教えることを通して、若者と地域住民との世代間交流のきっかけを作り、新しい地域コミュニティを創り出すこと…というのが本当の狙いだという。
そして、トライワープが運営しているもう一つの事業に、地域SNS「あみっぴぃ」がある。これは、受講生が講座修了後も自宅で積極的にパソコンに触る機会を作れるようにという意図で開発され、大学生と地域住民のコミュニケーションを発展させるために出来たものだ。
学生の大半は卒業後には千葉を離れるが、「あみっぴぃ」を通じて関係は生き続ける。もともと「あみっぴぃ」は、西千葉地域に住む人や西千葉に関心がある人が、既存会員からの紹介を通じて入会することができるという仕組みだったが、卒業した大学生を通じて、そのネットワークは全国的な広がりを見せている。
パソコン教室×地域SNSという仕組みによりトライワープは優良な顧客を獲得していった結果、パソコン教室の受講者は延べ22000人。「あみっぴぃ」の会員数も4000人を超えているという。
そして、この「あみっぴぃ」がさまざまな形でマスコミにも取り上げられた結果、全国から「同じものを作りたい」という問い合わせが多数届くようになり、Webプロデュース事業も展開するようになった。そして、代表の虎岩氏はSNSの開発や起業に関する書籍を執筆したり、地域活性化ビジネスの第一人者として全国各地から講演を依頼されるようにようになっている。
トライワープの理念は、地域や地域住民に役立ちたいという点につきる。この理念が、あらゆる機会、例えば、パソコン教室やSNS運営の中で、あるいはWebサイト作りで、はたまた地域の祭りのお手伝いなども精力的にこなしているそうで、こうした活動が同社の成功要因だろう。トライワープは、働き手がやり甲斐を感じる、また顧客や地域住民が同社のファンになり自然と応援したくなるという、企業が成功するためのスパイラルを実現している。
「自分の中で得意なこと」ではなく、「自分たちが周りにできること」は何か
ビジネスアイデア発想のきっかけ
トライワープ社を創業した虎岩社長は、大学生時代にいろいろと思い悩んだ結果、普通に就職することを辞めて、自分で起業することを決意した。その際、自分自身の中にある2つの想いが融合して、パソコン教育事業のアイデアが生まれた。
それは、「自分達にできることは何か?」ということと、「地元との深い絆を1人でも多くの学生が感じられるよう役立ちたい!」という想いである。
虎岩氏によれば、起業するために「「自分に」できること」を突き詰めていくと、アルバイトをすれば生きていけちゃうという発想にいたり、それではフリーターに落ち着いてしまって、事業家とはいえない。そこで、「「自分たち」ができること」に発想を変えた。折りも、虎岩氏は家電量販店でアルバイトをしており、「クリック」の意味さえ良く分からないお客様が多くいること、そのような人たちに簡単なパソコンの使い方を教えるだけで、とても感謝されるという体験をした。自分達学生にとっては、「クリック」の仕方くらいなら教えることは出来る。「そうだ!パソコンに苦手意識を持つ人たちに、そのコンプレックスを解消し生活を豊かにするためのパソコンの扱い方を教えよう」と思い立った。
もう一つ、起業につながる体験として、虎岩氏自身が千葉大在学中に企画したイベントがある。このイベントに地元商店街の協力を仰いだところ、街であいさつしてくれる人が一気に増えた。地域住民の方々に温かい言葉を掛けられ、予想もしていなかったことだけに、とても嬉しかった。このような地元との深い絆を、1人でも多くの学生が感じられるよう役立ちたい!という想いが生まれた。
そして、この2つのアイディアから起業に至るまでの行動に、虎岩氏の人間性が良く出ている。虎岩氏がとった行動は、まず、学生サークルを作るために学内で2000枚のチラシを配布し、10名の仲間を募った。そして起業プランを作成し、次に不動産屋さんから空きテナントを無料で貸してもらうために、支援してくれる商店街の有力者を探す。「事務所をタダで手に入れるプロジェクト」を発足させたのだ。
そこで知り合った「ゆりの木商店街」の会長から、「良いことをするからといって、善意だけに頼るな。」と厳しい言葉を貰いつつも、会長が所有している空き店舗を無料で貸してくれたという。また、商店街全員にも紹介してもらった。この恩返しとばかりに、商店街のお祭りの手伝いをサークルメンバーの仲間で行った。そうしたところ、おまつりに活気が出た、という事で周りから感謝されるようになり、さらに商店街の中から応援者や顧客が増えていった。最初は、1人2000円、2人で4000円とお金をため、4000円がたまったらそれで研修室を借りて20人程度の教室を開き4万円にする、といったやり方だった。そうして、地道に事業を拡大させていき、現在へとつながる。
ICTならぬ、“ICCT”社会で役立つ企業を目指す。
将来への展望
虎岩氏はトライワープを、これからのICCT社会の中で、「従業員が仕事に夢中になれる会社」、「顧客に愛される会社」・「世界に通用する会社」、「デザイン(個性・表現力等の意)豊かな会社」にしたいと願っている。
ICCTとは虎岩氏の造語だが、一般的なICT(Information and Communication Technology)に、虎岩社長独自に、もう1つの「C」(commerce:商業)を加えたもの。
今後、コマーステクノロジーがさらに発展していく中で、「サービス(接客)・ソフト・ハード」を高いレベルで統合的に展開する企業を目指すというのが、虎岩氏の目標だ。
「サービス(接客)」はパソコンライフサポート事業、「ソフト」はWebプロデュース事業で、すでに着手している。残る「ハード」に関しての取組みが、今年から立ち上げた「エネルギー事業」で、家庭用蓄電池「タイガーボルト」という商品を企画・開発し、販売している。
さらに、虎岩氏のもう一つの夢は、現在は別々の道を歩んでいる創業メンバーそれぞれが1流の社会人となって、もう一度いっしょに仕事をしたいという事だそうだ。
トライワープという会社は虎岩氏が大学生の時に立ち上げたものだが、大学を卒業するにあたって、他のメンバーには就職を勧めたそうである。その理由を聞くとは、「このまま続けることが、他のメンバーのベストプランじゃないと感じたから」という答えだった。普通ならせっかくの仲間とそのまま起業したいと思うものなのに、敢えてこのような心遣いができることに、虎岩氏の強さを感じた。
同時に、このことが、地域への貢献という事業理念の強さの原動力となり、トライワープの事業そのものの強みになっているのだろう。
株式会社トライワープ | |
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代表者:虎岩 雅明 | |
設立:2007年4月 | URL:http://www.trywarp.co.jp/ |
事業内容: パソコンライフサポート事業、Webプロデュース事業、エネルギー事業 |
当記事の内容は 2012/5/10 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。