会員数約70万人。多くの若い女性が熱くなる、完全手書きのブログサイト「手書きブログ」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 鎌田 幹夫

すべての書き込みを手書きに徹したブログサイト:TEGAKI Blog
展開している事業内容・特徴

tegaki1日常を記すツールとして8年ほど前から一般化したブログ。ブログを書くことが日課となっている人は、自ら1日に複数のページをアップしたり、閲覧者として、友人の近況や好きな有名人の日常をチェックし続けている。ほとんどのブログは、文字や画像で構成されているが、徹底的に手書きにこだわったブログサイトが注目を集めている。それが「手書きブログ」だ。

「手書きブログ」は、ハンドルネームとタイトルを除き、コメントやアイコンなどすべてが手書きで作成することができる。サイト内には実にさまざまなイラストや絵日記が溢れていて、それぞれのユーザーがこだわりを持って独自の世界を表現している。イラストに対するコメントは、作者自身が書いているものが多く、コメントをつなげることで物語になるという工夫をする人も多い。「手書きブログ」で更新されるブログのうち約80%がイラストで、人物画がもっとも多い。残り20%は絵日記である。

2008年4月にサービスを開始し、現在、登録ユーザーは68万5000人。月間 PVは1億5000万に達したこともある。ほとんどのサイトが、検索ロボットに大量のテキストを読み込ませて運営しているなか、「手書き」という手段を使った「手書きブログ」のこれらの数字は快挙といえるだろう。

ユーザー登録をすると、すぐに絵を描くことができる。Windowsの「ペイント」よりも使いやすいと評判だ。投稿作品に対し、コメントのほか、Facebookの「いいね!」ボタンと同じ意味をもたせたハートマークをつけることができる。ブログ発信者は、このハートマークがどのユーザーからついたものか把握することはできない。しかし、ハートマークはユーザー毎にカスタマイズすることができ、ユーザー一人一人のアバターとして機能している。

つまり、「手書きブログ」ではユーザー間の交流は盛んだが、Facebookのように特定された誰かとつながるというものではない。絵描き仲間と、ゆるくつながることができる仕組みが確立されているといった感じだろうか。ユーザーは、最小限のアイデンティティを見せ合う空間に心地よさを感じているのだろう。

「手書きブログ」では、気軽に書いたお絵かき程度の絵をアップするユーザーはほとんどいない。ユーザーの熱の入れようは半端ではなく、一枚のイラストに1週間、例え落書き程度のものでも4時間はかけているという。「手書きブログ」人気の秘密は、多くのユーザーが心血を注いだコンテンツが集まっているという点にもある。

現在の収益は広告収入のみ。ユーザーのほとんどが、イラストを丁寧に描く職人気質の若い女性である。似た気質を持つユーザーが多いため、広告のヒット率は高いようだ。なかでも現在は、女性向けオンラインゲームの広告への効果が高いという。

絵文字、デコメの次は、「手書き」しかない!
ビジネスアイデア発想のきっかけ

「手書きブログ」を運営する株式会社pipa.jp の川合和寛代表は、携帯メールに絵文字が加わり、さらにデコメが流行り、メール一つにしても、豊富な表現が可能になっていく変化に注目していた。言葉だけでは伝えきれない感情表現の必然性を感じていたという。その次に何が流行るかと考えた時、「手書きだ!」と確信したという。

例えば、テキストで表された「ありがとう」に比べて、手書きの「ありがとう」には、たくさんの思いを読み取ることができる。同じ気持ちを表現する時、テキストでは長文が必要になるが、手書きならば一目見ただけで素直に伝わるのである。

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ITエンジニアだった川合氏に、「手書きブログ」を立ち上げるための技術的なバリアはなかった。そして、結果的に、潜在的ニーズがふくらむなか、絶妙なタイミングで、一番にこの「手書きブログ」を開設することができたといっていい。もちろん、成功の要因はタイミングのよさだけではない。ほとんどのサイトは、閲覧者にとっての見やすさが重視されているが、「手書きブログ」は書き手が満足できるかどうかということをもっとも重視している。このことも、絵描きマニアにとって居心地のよい空間となった大きな要因であろう。

通常、「手書きブログ」ほどのアクセス数を誇るサイトは、一般的に100台程度のサーバーが必要になる。しかし「手書きブログ」は、特殊なノウハウを駆使し、3台のサーバーのみで賄うことができている。

サイト開設後は予想どおり、ユーザー数が順調に伸びているが、これだけ濃い内容のコンテンツが集まることは想定外だったという。アクセス数が伸びるにつれ、女性ユーザーの割合が増えている。意図的に性別による扱いの差はしていないが、サイトコンセプトやインタフェイスが女性向きだったようだ。当初、川合氏は女性が集まることで、男性ユーザーも増えるだろうと想定していたが、この予想だけは外れたかっこうだ。

イラストは共通言語。世界中の人々とつながることができる
将来への展望

tegaki3今後も、「手書きブログ」に近いサイトを展開していく計画だ。pipa.jp社が運営するイラストサイト「GALLERIA(ギャレリア)」は、photoshopなどで作成した画像ファイルをuploadするサイト。これまでにも同様のサイトは存在したが、「手書きブログ」で成功した、「ユーザー間のゆるいつながりをつくること」と「書き手重視」という2つのコンセプトを大切にしている。

例えば、「GALLERIA」では友達申請ができない。「手書きブログ」は、“ビギナーに近い人同士のコミュニケーションの場”、「GALLERIA」は“本格的な絵描きマニアのための場”と位置づけられる。将来的には、ビギナーからプロシューマやプロが育つような環境づくりを目指している。

pipa.jp社は、手書きによる文字や絵による表現を「Humanity Internet」と呼んでおり、これを世界に広めることも大きな目標としている。川合氏は、手書きが感情を豊かに表現するという事実は世界中で共通しているため、「手書きブログ」の人気が海外に伝播するのも時間の問題だと予想する。

実際、「TEGAKI Messenger」という、手書きのメッセージを友人と送り合うことのできるサービスは、すでに海外の非常に評判が高いという。また、イラストは世界中の人が共通して認識することが可能だ。このようなことを考えると、言語を超えて気持ちを伝え合うサイトは世界中で利用される可能性が高いと考えられる。

pipa.jp社が提供する手書きサービスは、それぞれのユーザーが独自のアイデンティティを持ち、自らのページを作成している。大切なのは、どのようなユーザーがいて、彼らが心地よいと感じる仕組みをいかに提供し続けていくかということだ。pipa.jp社は、技術・システム的な強さを持つ一方、人々の行動や感情の原理をサービスに生かしている。

手書きの魅力は、ブログ以外でも世界中のさまざまな場面で発揮されるに違いない。今後、「手書きブログ」を始め、pipa.jp社の発展が大いに期待される。

株式会社pipa.jp
代表者:川合 和寛 スタッフ数:3名
設立:2008年2月 URL:http://tegaki.pipa.jp/
事業内容:
インターネットサービス

当記事の内容は 2012/9/13 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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