話題の「プライベートコーチのCyta.jp(咲いた.jp)」。成功の裏にある「徹底したシステム化」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

友達から教えてもらうような感覚のレッスンが大人気!「プライベートコーチのCyta.jp(咲いた.jp)」
展開している事業内容・特徴

cyta1「プライベートコーチ」というサービスが、今、静かなブームとなりつつある。1対1で語学や音楽などのレッスンを受けられる、「プライベートコーチのCyta.jp(咲いた.jp)」というWebサービスが急成長している。2011年6月に正式版がローンチしたばかりの同サービスだが、すでに生徒数1万2000人を突破した。

ユーザーは、100ジャンルものカテゴリから興味のあるレッスンを選ぶ。そして、自分のためだけにレッスンをしてくれるコーチを探すことができるコンテンツだ。価格は60分で3000~4000円程度とリーズナブル。コーチは全国に1500名以上いるそうで、レッスンを受ける場所は、自宅や職場など、自分の都合のよい場所から探せることもポイント。もちろん、時間帯も希望の時間でOKだ。

従来の各種スクールでは、場所は固定、時間もカリキュラムに合わせて選ぶしかなかった。しかし、「Cyta.jp(咲いた.jp)」では個人の都合に合わせたサービスとなっており、その点も人気の理由だろう。

「Cyta.jp(咲いた.jp)」を運営しているのはコーチ・ユナイテッド株式会社。すでに、全国2万4000カ所ものレッスン場所を確保。今でも月100件程度のペースで場所を増やしている。そのすべてをデータベースで管理しており、場所の予約もオンライン上で処理できる。

コーチの審査にも力をいれている。コーチ希望者がいれば全国どこにでも面接に向かうが、合格できるのは10%程度。審査において特に重視しているのは、コミュニケーション能力だという。基本は1対1のレッスンなので、ユーザーとの距離がどうしても近くなる。いわゆる「上から目線」であったり、ユーザーに緊張を強いるようなことがないように、コーチの人間性も重視して審査をしているそうだ。同社が定める基準に達していない限り、コーチとしてのスキルがどんなに高くても合格はさせていない。

また、サービスの質を上げるために、ミステリーショッパーとして定期的に専門のリサーチ会社がレッスンを受講して調査レポートを提出している。そうした調査を通じてレッスンの質が悪くなっていないかをチェックしており、コーチ陣とも程よい緊張感を維持しているそうだ。それらのこだわりは、ユーザーにも伝わっている。「まるで友達と話しているようで楽しい」という感想が多多く届いており、ユーザーの口コミやリピートにつながっている。

ちなみに、コーチのなかには本職が別にあり、土日だけ受け持つ人も多い。驚くような経歴のコーチもいる。例えば、コロンビア大を卒業後、スタンフォード大でMBAを取得した女性コーチ。彼女からは、ビジネス現場で使える実践的な英会話についてのレッスンを受けられる。

徹底したシステム化で低価格のレッスンを提供。その秘密は、スタッフ全員がエンジニアだから!?

コーチ・ユナイテッド株式会社代表の有安伸宏氏によれば、教育系ビジネスに重くのしかかるのが、講師や生徒などの管理コストだという。そこで、同社は徹底したシステム化によって、この管理コストを抑え、管理業務のコストを徹底的に省いている。コストが削減された分、コーチへの還元率も高くなり、結果として安いレッスンが提供できるという仕組みだ。同社の収益源はレッスン料からの手数料マージンだ。

また、すべてのレッスン状況をリアルタイムで管理できるシステムも開発・運用している。レッスン場所の予約やレッスン代の決済、レッスン後の評価・スコアもすべてシステムで完結。そうして集まった膨大な情報を分析して、さらなるサービスの品質向上に生かしているのだ。

ちなみに、取材時にシステムの概要図を見せてもらったが、160以上のテーブルからなる巨大なデータベースと、PHPのクラス数が数千にも及ぶ巨大なものだった。ITにくわしくない人にはピンとこないかもしれないが、これは通常のWebサービスで想定されるものよりも数倍の規模と複雑さで、それをわずか数名のエンジニアが開発・管理していると聞いて、さらに驚いた。

同社 には現在16名のスタッフがいるそうだが、その半分がエンジニアで、残りがコーチの管理業務などの運用を担当している。スタッフ教育にも力をいれており、エンジニア以外のスタッフ全員が、SQL(DBを操作するためのプログラム言語)やUML(システム設計で一般的に使われる記法)を習得している。簡単なデータ分析やシステム設計は、スタッフ全員がこなせるというわけだ。貴重なエンジニアを開発のコアタスクに集中させるために、比較的簡単なIT業務はエンジニア以外のスタッフが担当する。こうした取り組みも、同社の急成長要因の一つだろう。

最初のコーチは弟だった!?起業前すでにつかんでいた手応え

ビジネスアイデア発想のきっかけ

cyta2「Cyta.jp(咲いた.jp)」を起業したコーチ・ユナイテッド株式会社代表の有安氏は、大学卒業後に外資系消費財メーカーのユニリーバ・ジャパンへ入社。マーケティング職を経て、2007年1月に同社を創業したという。
 実は起業前、個人事業としてテスト版のサービスをリリースしている。その際のコーチはプロのミュージャンだった弟さんだったそうで、いきなり10人の生徒がついた。その反応を見た有安氏は、これはいけると確信して法人化。初月から100万円ほどの売り上げが挙がり、創業以来ずっと黒字経営だという。

起業と同時にベータ版を公開。そこから実は3年半もの間、試行錯誤しながら現在のかたちになるまで、ひたすらシステムの開発を続けてだ。そして、満を持して2011年6月に正式版をローンチした。

有安氏は、大学時代は、eラーニングを研究していた。氏によれば、eラーニング・ビジネスがなかなか軌道に乗らない理由は、「コンテンツ重視」の設計にあるという。

「ティーチングではなくコーチング」というのがポイント。あくまでお金を払うのはユーザーだが、そのユーザーにいかに「楽しい」と思ってもらえるかがサービスとしては重要だ。しかし、eラーニングを含む従来の教育ビジネスでは、カリキュラムや教材、講師の都合などが重視されがちで、ユーザーはそれに合わせて動かなければならかった。

決まった講義の枠にあわせて予約し、決まったかたちの教材をもとに教えてもらう……そうした姿勢は、あくまで提供者側の都合でしかなく、利用者側であるユーザーの都合を無視しているわけだ。それでは、確かにうまくいくはずがない。言い換えると、「コンテンツよりもコンテキスト」。つまり、「教える内容=情報」そのものよりも、「教え方=文脈」が大事なのだ。

そこに気づいた有安氏は、「Cyta.jp(咲いた.jp)」のサービスでは、画一的なカリキュラムや教材はあえて重視しないようにして、その場の流れやユーザーの興味にあわせてレッスンを心がけるようにしている。あたかもジャズのセッションさながら、その場の流れで内容が変わるという。

逆転の発想。評価しないことでうまくいく。

「Cyta.jp(咲いた.jp)」が成功した理由として、コーチ選定の仕組みにも秘密がある。有安氏によれば、初めは誰でも登録できるマッチング型のサービスを考えていたそうだが、すぐにそれではダメだと気づいた。

誰でも登録できれば、コーチ数が一気に増えるのでうまくいきそうだが、そもそもコーチの質が担保されないと、ユーザーはレッスンを買わない。ライト過ぎるサービスでは責任の所在もあいまいになる。そもそもそお金を出す側の立場に立って考えれば、教えてもらう先生の質がよいのは当たり前の話。そうした視点から、同社はコーチの審査基準を厳しくし、いたずらに数を追わないようにしている。

また、ユーザーがコーチを選ぶ仕組みにも特徴がある。それは、「評価」を公開していないということ。食べログのような星を出せば選びやすくなるのではないか、と思ってしまうし、実際に「そうしてほしい」という意見もたくさんもらうそうだが、有安氏によれば、それでは失敗するという。

cyta3食事であればある程度、「美味しい」「美味しくない」という判断が明快に出せるが、人間同士の相性などは画一的な数値で表せるものではなく、仮にユーザーからの評価を点数化して公開したとしても、その点数自体の信憑性は疑わしいものになる。

結局、根拠の薄い判断軸を出すのは無責任という結論で、同社では星をつけることはしていない。その代わりに、他の受講者とコーチのやりとりを公開しているのだ。同社はレッスン内容をすべて記録しており、その際のコメントなどを「レッスンノート」や「体験レッスンの感想コメント」というようなユーザーに公開。さらに、コーチへのインタビューやコーチオススメの書籍やCD、コーチのブログなどを通じて、コーチの人柄ができるだけユーザーに伝わるようにしている。こうした仕組みは、「学び」を見える化する、という設計理念に基づいている。

また、レッスン・ジャンルのラインナップも、ユーザーのニーズ調査をもとに設計している。まずはニーズありきで、そこに適合するコーチを探すというプロセスだ。ちなみに、レッスン提供準備中なのは、アップルのiOS関連。超人気ジャンルでコーチのなり手は少ない。しかし、こうしたジャンルでプライベートなレッスンを受けられるとしたら、IT系で仕事をしている人などはスキルアップのためにも、ぜひとも受講したくなるはずだ。

世界でも数少ないC2C型学習ビジネス。学びの流通市場をつくりたい。

将来への展望

「Cyta.jp(咲いた.jp)」のサービスモデルは、C2C型の学習ビジネスといえるが、実はアメリカでも同様のサービスが急成長している。しかし、まだまだプレイヤーが少なく、世界でも同様のサービスを展開しているのは20社 程度。日本で本格的に行っているのは同社だけだ。

有安氏に今後の目標を聞いたところ、「学びの流通市場をつくる」という答えが返ってきた。

プライベートコーチというユニークなビジネスモデルを展開している同社だが、事業運営に関しては思いのほか慎重に見える。そこには、ユーザー基点ですべてを設計・提供するという考えのもと、じっくり確実によいサービスを提供したいという有安氏の経営理念がある。まだ30代前半と若い有安氏だが、その理念にはブレがなく、取材時には老練さすら感じた。

近い将来には海外、特にアジア市場に進出したいと語ってくれたが、これだけ高品質のサービスであれば、いずれは世界中で使われるサービスになる可能性は高い。今後の動向を常に注視しておきたいベンチャーである。

コーチ・ユナイテッド株式会社
代表者:有安伸宏 社員:16名
設立:2007年1月 URL:http://cyta.jp/
事業内容:
プライベートコーチ事業の運営

当記事の内容は 2012/3/27 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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