業界騒然の「タダ引越」。ゼロ円で引越しができるカラクリとは?

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執筆者: ドリームゲート事務局

業界初の試み「タダ引越」。繁忙期には数百件の申し込みが舞い込む!

展開している事業内容・特徴

tadahikkoshi1デフレが続く昨今、多くの業界が必死の価格競争を繰り広げている。そして、そのなかでも特に苛烈な競争を強いられているのが引っ越し業者だ。零細企業まで含めると、国内で数千社がしのぎを削っているといわれ、引っ越し業界に画期的なアイデアを持ち込んだ会社が、リゲインジャパンである。

同社が運営する「タダ引越」というサービスは、その名のとおり、引っ越し代が無料になるサービスである。無料になる条件は、時期によって変わるそうだが、単身者で、平日午後の時間帯、かつ転居する場所までの距離が20km以内であれば、おおむねゼロ円というから驚きだ。

ただし、ひとつ条件が付く。それは、インターネット回線の「NTTフレッツ光」との契約。引っ越しを申し込んだユーザーが、フレッツ光と契約すると、NTTから販売報奨金が同社に入ることになる。そこから引っ越し代金を捻出するという仕組みなのだ。

「タダ引越」は、2010年11月からスタート。まったくPRコストをかけず、クチコミやSEO効果などで、売り上げを伸ばしてきた。最初の数カ月はなかなか集客ができなかったものの、自社ホームページ上でのPRや、口コミ、あるいは社員が出すメールの署名に必ず「タダ引越」についての宣伝を乗せるなど、地道な活動を続けた結果、1年ほどたった頃から、徐々に申し込み客が増え始めた。

そして、2011年の3月、業界の繁忙期に一気に利用者数が急増。現在は同サービスが誕生して2回目の繁忙期を迎えているが、すでに数百件の申し込みがあり、予想を超えた売り上げを同社にもたらしている。

仮に、引っ越し費用が同社の規定する料金を超えた場合でも、2~3万円程度を値引きした見積もりが提示できる。だから、他社との相見積もりをされても、ほぼ最安値となる。

同社は、同サービスを開始する前からフレッツ光の営業を手がけており、月間1000件以上の契約を取ってきた。その実績が評価され、同社の販売報奨金は大手量販店と同じレベルになっている。仮に同様のサービスで他社が参入してきても、価格競争で同社と競うのは難しいそうで、まだ目立った競合は現れていない。

「タダ引越」誕生のキッカケは、知り合いの引っ越し業者との会話

ビジネスアイデア発想のきっかけ

tadahikkoshi2「タダ引越」を運営する株式会社リゲインジャパンは、2005年に創業したベンチャーだ。当初はシステムエンジニアサービス(SES)業が主な事業内容だったが、法律の規制の関係で派遣業が難しくなり、2010年頃にインフラ事業部を開設した。同事業部は、インターネット回線のフレッツ光や携帯電話の販売、SEO対策のコンサルテングなどを行っている。

「タダ引越」のアイデアは、リゲインジャパンの代表・大川幹世氏が、知り合いの引っ越し業者の相談を聞くなかで生まれた。集客の難しさ、単身者の引っ越しが1万~1万5000円という超デフレ化、そんな苛烈な業界事情を聞くうちに、逆転の発想で、もっと攻撃的な集客方法ができないか、と考えたのだ。

多くの人は引っ越しする際に、電話やネット回線の見直しを検討する。確かに、その機会にフレッツ光が売れることが多かった。「引っ越し業者と提携し、タダで引っ越しを引き受ければ、圧倒的なコスト競争力が生まれ、自然と集客ができるのではないか?」。そしてマーケットを調べてみると、当時はまだ誰もやっていないビジネスモデル。「これはいける!」と確信した。

その後、半年ほどの準備期間を経て「タダ引越」のサービスがスタート。受付システムに関してはスムーズに開発できたものの、提携する引っ越し業者とのやり取りに、一番時間がかかったという。

リゲインジャパンの現在の売り上げ比率は、インフラ事業が80%、SESが20%。創業時のビジネスにこだわり続けていれば、「タダ引越」のビジネスモデルは生まれなかっただろう。

引っ越しを軸に、やりたいアイデアがまだまだある。次に狙うのはオフィスマーケット!

将来への展望

取材の最後に、今後の展開予定を聞いたところ、「実は、せいぜい数カ月先の計画しか考えていない」と大川氏。半年もすれば、ビジネスモデル自体が古くなる。市場やビジネスのやり方が目まぐるしく変わるなか、あえて立てた計画に固執せず、フレキシブルに経営体制を変えられるようにしているという。

確かに、急激に成長したり、短期間で伸びすぎる会社は、急激に小さくなったり、ダメになったりもする。大川氏は、急成長にこだわらず、まずは安定した経営体制をつくることを目標にしている。

同社は現在、「家賃値下げ.jp」というサービスも展開している。オフィス賃料の値下げ交渉を代行するサービスだそうだが、これも大川氏が自社の入居するビルの契約更新時に思いついたアイデアだという。

東京のオフィスビルは、空室率が10%を超えているといわれているが、実際には13%近いというのが大川氏の見立てだ。つまり、これからは「オフィス賃料を引き下げたい」というニーズが多いに出てくるはず。しかし、オーナービルなどの場合は、大家とも顔を合わせる機会も多く、気まずさもあってなかなか賃料を下げる交渉はしづらい。そこを代行するのが「家賃値下げ.jp」だ。

また、オフィスの契約更新時は、OA機器などの見直しも行う機会となるため、インターネット回線を含めてさまざまな商機がある。そうした商機を無駄にすることなく、新しいビジネス挑戦し続ける――リゲインジャパンが生み出す、ビジネスアイデアに注目していきたい。

株式会社リゲインジャパン
代表者:大川 幹世 社員:30名
設立:2005年7月 URL:http://tadahikkoshi.com/
事業内容:
Bフレッツ光の営業代理店、「タダ引越し」、「家賃値下げ.jp」の運営。システムエンジニアサービス業

当記事の内容は 2012/03/15 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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