2400 以上のブランドから最適なアイテムを選んでくれる、人工知能スタイリスト 「SENSY(センシー)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

人工知能がユーザーの好みを自動的に学習して推薦。自分にぴったりの服やグッズを購入できるアプリ
展開している事業・特徴

20150513-1人工知能を活用したさまざまなサービスは、今後の10年間でメインストリームになるといわれている。本日紹介するアプリは、人工知能のスタイリスト・サービス「SENSY(センシー)」だ。

複数のブランドを横断したファッション系ECモールとしてはZOZOTOWNやロコンドなどが有名だが、SENSYの強みは、大量のブランド・アイテムの中から、人工知能が自動的にユーザーの好みを学習し、好みに合ったものをレコメンドしてくれること。

まず利用開始時、ユーザーに50~100アイテムの商品を見てもらい「好き・嫌い」を選択させることで、好みを把握するための基礎学習を行う。さらにアプリ内での行動履歴、例えば、閲覧時間の長いページや、買い物かごに入れたけど購入には至っていないといった情報も人工知能が学習し、ユーザー個別の好みをより深く理解する仕組みになっている。

SENSYを開発・運営するカラフル・ボード株式会社では、SENSYと通常の検索エンジンを比較して、どちらが好みのアイテムを多く見つけられるかという実験を行った。検索した結果が、ある人の好みの度数を5点満点で集計したところ、通常の検索エンジンでは1~2点が78%だったのに対して、SENSYのスコアは4~5点以上が50%という結果になった。

日々インターネットを使っているユーザーなら、検索エンジンでなかなか思ったような結果が得られない体験をしたことがあるだろう。目的の情報や商品が明確であれば別だが、「なんとなくこんな感じ」といったニュアンスを、検索キーワードに変換するのは意外と困難だ。SENSYはそうしたニュアンスをくみ取って検索してくれる機能を実現したわけだ。

2014年11月リリースされたばかりだが、ダウンロード数は半年で3万を突破。提携しているブランドは 2465 にのぼり、ファッション分野のサービスアプリとしては国内最大級となっている。

本格的なマネタイズはこれからということだが、収益モデルとしては提携している各ブランドからの広告収入や、販売手数料、また外部ECサイトへSENSYの人工知能エンジンを提供して利用料を徴収するモデルも視野に入れている。

コンサルティング時代に気づいた、アパレル業界の非効率性にビジネスチャンスを見いだす
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150513-2カラフル・ボード株式会社は、2011年11月に設立されたベンチャーだ。創業者の渡辺祐樹氏は、慶応義塾大学理工学部でシステム工学を専攻し、機械学習・人工知能の研究を行っていた。そのまま研究者の道を目指すことも考えていたそうだが、研究成果を世の中に役立たせるためにはビジネス経験も必要と思い直し、フォーバルに入社した。その後は、IBMビジネスコンサルティングサービスに転じ、戦略コンサルタントとして従事。また、同社在籍中には公認会計士試験にも合格している。公認会計士の資格を取った理由を尋ねたところ、「起業するためには財務・会計の知識は必要かなと思いました。」という答えが返ってきた。

IBMビジネスコンサルティングサービス時代に、アパレル業界を担当し、毎年大量の新商品を出し、膨大な廃棄を繰り返す非効率なモデルに、ビジネスチャンスがあることに気づいた。

膨大なアイテムが在庫として存在するが、それらをユーザー自身が検索して探しだし、購入するのは難しい。また、セレクトショップの店員がキュレーションするにしても、人力である以上、扱えるアイテム数に限界がある。

そこで、人工知能に探させれば探索コストはゼロに近くなり、ブランド側としても廃棄せずに新たな販売機会が得られるメリットが生まれる。しかし、ファッションアイテムを人工知能に探させるとしても、単にスペックだけで検索していてはユーザーの好みにマッチしない……。そこで好み自体を学習する人工知能をつくるアイデアにいきついた。

ただし、人工知能の開発は一筋縄ではいかない。同社では慶応義塾大学の相吉教授と千葉大学の岡本准教授を共同研究パートナーとして迎えて、ファッションセンスを学習するアルゴリズムを開発した。開発期間は約1年。会社設立時の資本金は300万円だったが、新たに個人投資家などから数千万円を集めて開発投資した。米国で特許も出願している。

また並行してSENSYに参加するブランドの開拓にも力を入れた。まずはトップブランドから口説き落とす戦略で、ビームスなどの大手にSENSYの構想をプレゼン。粘り強い交渉の結果、トップブランド10社の参画が決まった。そのニュースがメディアなどで取り上げられた結果、ほかのブランド側からも参加させてほしいという問合せが多く寄せられるよう。2014年11月のリリース時点で約1600ブランドでスタートし、取材を行った2015年5月時点では2465ブランドが参加している。

人工知能エンジンを軸に、音楽業界や飲食業界にも進出予定。将来的には、1人1台の人工知能の提供を目指す
将来への展望

渡辺氏に今後の展望を伺ったところ、当面の目標として2016年3月までにSENSYのダウンロード数を30万まで伸ばすこと。

そのためのさらなる研究開発投資やプロモーション費用として、2015年4月にACA株式会社のファンドなどから1億4000万円の資金調達を行った。

また、今後の事業計画ではファッション分野以外に、音楽業界や飲食業界への進出も予定している。すでに某大手音楽会社や大手飲食サービスと連携交渉も進んでいるそうで、それ以外にも旅行分野や住宅・インテリアなどの分野も視野に入れている。

渡辺氏は、大量の選択肢があるが、個人の好みが意思決定に強く関与する分野はすべて事業領域として考えているとのこと。

繰り返しになるが、人工知能を活用したさまざまなサービスは、今後10年以内にメインストリームになる。それこそ、人力では把握・整理できない大量の選択肢から、人工知能アプリが最適な候補を提示してくれるような世界が、もうすぐ実現しようとしている。

カラフル・ボード株式会社
代表者:渡辺 祐樹氏 設立:2011年11月
URL:
http://sensy.jp/
http://www.colorful-board.com/
スタッフ数:15名
事業内容:
・ファッションスタイリストアプリ SENSYの開発・運営
・インターネットメディア事業

当記事の内容は 2015/5/19時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める