Vol.10「特許でどこまでビジネスモデルを守れるか?」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

○真似されるビジネスモデル

 家電量販店で買い物をすると、購入金額に応じてポイントが付与されるサービスがあります。このようなサービスは家電量販店だけでなく、ドラッグストアや他の店舗でもおこなわれています。航空会社のマイレージサービスもそうですね。

 このポイントサービス、顧客側から見れば、貯まったポイント数に応じて商品券で還元してもらえたり、現金に換算して使用できたり、といったメリットがあります。一方、サービス提供者側から見れば、ポイントをそのお店又はグループ内のみ有効に限定することにより、顧客を囲い込むことができます。また、有効期限をつけることにより、リピート数を増やすこともできます。

 このように売り手側/買い手側の双方にメリットがあることから、このようなサービスが多種多様な業界に広がっていきました。
 そのため、今では単にポイントを付与するだけでは競合他社との間で差別化することが難しくなっています。
 
 一方、事業に直結するビジネスモデルとしてみた場合、模倣されるビジネスモデルの例として、ここ数年で伸びを見せている格安航空会社(LCC: Low Cost Career)のビジネスモデルがあります。

 LCCは、航空運賃を格安にする一方、飲食物、新聞を有料にすることで機内サービスを最小限にして、とにかく安く運んでほしい、というニーズをとらえて成長しています。

 このLCCのビジネスモデルは、もともとは米国のサウスウエスト航空のビジネスモデルが原点と言われます。
Southwest Airlines:http://www.southwest.com/

 サウスウエスト航空は、「低運賃」サービスを実現するために、機内エンターテインメント機器を設けず、ファーストクラスやビジネスクラスも設けていません。他にも大手航空会社が提供するような機内食もなく、機内サービスはピーナッツとソフトドリンクのみでアルコール等は有料になっています。航空機の種類も最小限にして訓練や整備にかかる費用を抑えています。チケットの予約も自社ウェブページのみ受け付けています。

サービスを簡素化することで設備投資にかかるコストを抑え、低運賃サービスを可能にしています。

 このようなビジネスモデルがLCCの元となっています。

 いいビジネスモデルを思いつき、実施してもそれがいいものであるほど競合他社が模倣してきます。せっかくのビジネスモデル、特許権等で保護することはできないものでしょうか。
 

○特許権で保護できるビジネスモデルとは?

 思いついたビジネスモデルを模倣されないようにするための方法は果たしてあるのでしょうか。

 ところで、みなさんは、「オフィスグリコ」をご存じでしょうか。
オフィスグリコ:http://www.ezaki-glico.net/officeglico/

 仕事中、コンビニまで買いに行く時間がないけどちょっとお菓子を食べたい、というニーズを満たすサービスで、グリコのお菓子が入ったボックスの上に料金箱がくっついたものがオフィス内に置かれます。

 このボックス、お菓子の専用ボックスだけでなく、アイスクリームの専用冷凍庫や、アイスクリーム・飲料の冷凍冷蔵庫(「三温度タイプ」)もあるようです。

 グリコの方が定期的にオフィスを訪問して料金回収やお菓子の補充をしています。

 このサービス、昔の富山の薬売りのビジネスモデルを応用したもの、と言われます。
(富山の売薬:http://ja.wikipedia.org/wiki/富山の売薬)

 でも、グリコはこのオフィスグリコの販売システムで特許権を取得しています。
(特許第3986057号:「商品ボックス管理装置、商品ボックス管理システムおよびプログラム」)

 お菓子をオフィスに置いておいて後から料金を回収したり商品を補充したりする、といった部分は、富山の薬売りと同じビジネスモデルです。この部分はさすがに特許で保護することはできません。

 その点、オフィスグリコでは、賞味期限や在庫水準などを考慮しつつ、利用者にとっていつも違う商品が入っていると感じられるように独自の法則に沿って商品を入れ替えています。オフィスグリコは、そのような独自の法則部分を特許発明としました。
 

○ビジネスモデルを特許権で保護するための工夫とは?

 特許権で保護するためには、2つのハードルがあります。

 1つは、そのアイデアが「発明」である必要があることです。

 特許法では、特許権の保護対象である発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」と定義されています。つまり、ビジネスモデルといっても、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されるようなものであることが必要になります。

 そのため、これに当てはまらないビジネス方法自体やコンピュータ等を単に道具として使用してビジネスを行うようにしただけのものは、そもそも特許による保護対象にはなりません。

 もう1つは、新規性があること、容易に想到できるようなものではないことです。

 つまり、アイデアそのものは新しくても既存のものを単に寄せ集めただけのものは特許にはなりません。これはビジネスモデルに限らず、他のアイデアでも同じです。

 先のオフィスグリコは、ビジネス方法自体ではなく、その管理手法に目をつけることによって、特許化に成功しました。
 

○模倣されても仕方ないところと死守すべきところの違いとは?

 ビジネスモデルの中でも他社の模倣を排除すべきところは、収益をあげる部分です。せっかくの仕組みを真似されないようにしたいものです。

 特許権でアイデアを守るということは、模倣防止の手段の一つですが、きわめて効果の高い手段でもあります。

 そのためには、ビジネスモデルの中でも模倣されても仕方ないところと模倣から死守すべきところをしっかりと見極め、死守すべきところが先にあげた二つのハードルを越えられるように工夫する必要があります。

 半導体の米インテル社もItunesの米国アップル社もビジネスモデルと特許とを上手に使って勝ちあがった企業です。

 自社のビジネスモデルを検討中であれば、特許権で保護できるかどうか、という視点でも工夫してみませんか。。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める