事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染拡大によって打撃を受けた中小企業等に対する、経済産業省の支援策です。中小企業等が新分野展開や事業転換などをするときに費用の一部を補助し、補助金の最高額は1社あたり1億円にもなります。
中小企業等が事業再構築補助金を申請しようと考えたとき、認定支援機関(認定経営革新等支援機関)という組織のサポートを受ける必要があります。
認定支援機関(認定経営革新等支援機関)は、「中小企業が経営相談等できる」公的な支援機関で、金融機関や税理士、公認会計士、弁護士等がいますが、全国におよそ33,000の登録があり、どのように選べばいいのか分からないという声もあるようです。
ドリームゲートにも認定支援機関に属するアドバイザーがいますが、この記事では、認定支援機関がどのような組織で、中小企業等に何をしてくれるのか、どのように探すといいのか?報酬額・手数料はどのくらいかかるのかなどを紹介していきます。
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事業再構築補助金を軽くおさらい
さいしょに事業再構築補助金の概要をおさらいします。くわしく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。事業再構築補助金は、コロナ禍によって売上高が減少した中小企業等が、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組むとき、1社あたり最大1億円を補助する内容になっています。
申請の要件は主に3つの条件があり、①売り上げが減っている ②新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等に取り組む ③認定支援機関と事業計画を策定する この3つを満たしていなければなりません。
※第3次公募の公募内容や変更点はこちらの記事を参考にしてください。
売上高減少の幅
事業再構築補助金の対象になるのは、売上高が大幅に減少した中小企業等になります。その条件は次のとおりです。
- 申請前の直近6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少している
コロナ以前とコロナ後の同じ3カ月を比較して、10%以上減少していれば事業再構築補助金の条件を1つクリアできることになります。
何をしたら補助金が給付されるのか
事業再構築補助金は、中小企業等が、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編を実施したときに給付されます。具体的には次のような例です。
- 喫茶店が飲食スペースを縮小して、新たにコーヒー豆や菓子のテイクアウト販売を始める
- 弁当を販売している会社が、新たに高齢者向けの食事宅配事業を始める
- ガソリン販売会社が、新たにフィットネスジムを運営する
- 衣服販売店がネット販売やサブスクリプション・サービスに業態を転換する
- 半導体製造装置部品メーカーが、洋上風力設備の部品をつくる
- タクシー会社が、食品宅配サービスを始める
- 伝統工芸品をつくっている会社が、新たにネット通販などのEコマースに進出する
- 和菓子メーカーが、和菓子づくりで生まれる成分を使って化粧品をつくる
- 土木業者が、自社の土地で新たにオートキャンプ場をつくって観光業に進出する
- 画像処理のIT企業が、新たに医療向け診断サービスを始める
どのような準備が必要なのか
事業再構築補助金の獲得を目指す中小企業等は、事前準備として、認定支援機関の協力を得て事業計画を策定しなければなりません。補助金の額が3,000万円を超える場合は、さらに銀行やファンドなどの金融機関も事業計画の策定に参加する必要があります。
認定支援機関はこの記事のメインテーマになるので、あとで詳しく解説します。
補助率と補助額
事業再構築補助金の補助率と補助額は次のとおりです。
中小企業:
- 補助率2/3、補助額100万~8,000万円
- ただし「卒業枠」は補助率2/3、補助額6,000万円~1億円
中堅企業:
- 補助率1/2、補助額100万~4,000万円
- 補助率1/3、補助額4,000万円超~8,000万円
- ただし「グローバルV字回復枠」は補助率1/2、補助額8,000万円~1億円
卒業枠とは、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金 又は従業員を増やし、中堅企業に成長する中小企業で、400社限定です。
グローバルV字回復枠とは、グローバル展開を果たすなどの条件をクリアした中堅企業で、100社限定です。
補助対象経費
補助対象になる経費は次のとおりです。
- 建物費●建物改修費●設備費●システム購入費●外注費●加工・設計費●研修費●教育訓練費●技術導入費●知的財産権に係る経費●広告宣伝費●販売促進費●展示会出展費など
認定支援機関とは?
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)です。
自社の潜在力・底力を引き出し、経営の強化につなげるために、ぜひ各分野の専門家である認定支援機関をご活用ください。
認定支援機関の正式名称は認定経営革新等支援機関といいます。事業再構築補助金を申請できる3条件のうちの1つに認定支援機関とともに事業計画を策定するというのがあります。
この章では、認定支援機関がどのような組織で、何をしているのかを解説します。
税理士や中小企業診断士などが認定されている
認定支援機関は中小企業等の経営課題を解決する組織で、中小企業庁が認定し、根拠法は中小企業等経営強化法になります。
認定支援機関になることができるのは、税務、金融、企業財務に関する専門的知識や支援に関する実務経験が一定レベル以上に達している個人や法人です。
具体的には、金融機関、商工会議所などの団体から、税理士、公認会計士、中小企業診断士、社会保険労務士、経営コンサルタントなどの本人、または本人が経営する法人などが認定支援機関になっています。
認定支援機関は、政府公認の中小企業等支援のプロ集団ということが言えます。
どのように中小企業等を支援しているのか
経営を立て直し、業績を向上させようとしている中小企業等の経営者は、認定支援機関に支援を依頼することができます。中小企業等の経営者が認定支援機関を決めたら、認定支援機関は経営状況を把握したり、事業計画を策定したり、事業計画の実行を助けたりします。
また、事業計画が予定どおり完了しても、中小企業等は認定支援機関からフォローアップを受けることができます。
認定支援機関はどこで探す?
認定支援機関は、中小企業庁のサイト「認定経営革新等支援機関検索システム」で探すことができます。
https://ninteishien.force.com/NSK_CertificationArea
ただし、たとえば「東京都中央区」だけで421件の登録があり、どこを選んでいいのかがわかりづらいのが難点です。
ドリームゲートには、認定支援機関に登録されているアドバイザーが多数在籍しています。認定支援機関としての資格をもっているだけでなく、審査を経てドリームゲートのアドバイザーとなった起業・経営のプロなので、事業再生にトライする事業主の力強い味方になるでしょう。
事業再構築補助金において、中小企業等が認定支援機関に頼めること
事業再構築補助金を獲得するには、中小企業等は、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編といったむずかしい事業に挑戦しなければなりません。
そこで経済産業省は、中小企業等に認定支援機関のサポートをつけることにしました。
実効性のある事業計画づくりを支援してもらえる
事業再構築補助金の申請をするには、中小企業等は事業計画を策定しなければなりません。認定支援組織はそれを助けてくれます。しかし、より重要なのは事業再生に効果がある事業計画をつくることです。
たとえば「通常枠」の場合、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定するという【付加価値額要件】があります。
これらを達成するには、認定支援機関のサポートは不可欠といえます。
事前相談から「伴走」してもらえる
中小企業等は、事業再構築補助金の獲得に挑戦しようか迷っている段階から、また自社の取り組みで事業再構築補助金に採択されるかどうか相談する目的で、認定支援機関を利用することができます。つまり認定支援機関は、準備の前からサポートして、そこから事業再構築のゴールまでずっと伴走してくれるわけです。
事業再構築補助金事務局が公開している中小企業庁の村上経営支援部長が第1次公募を振り返るYouTube動画で「認定支援機関と経営者のいいチームができている」と評価しています。
じっさいに事業計画を策定した経営者からも「認定支援機関と一緒に作成してよかった」という声が多くあったということです。
採択後もサポートし続けてくれる
事業再構築補助金は成果が求められます。つまり「あげっぱなしのお金」ではありません。認定支援機関は、事業再構築補助金が採択されたあとも、引き続きその中小企業等をサポートします。
実はこれこそ、事業再構築補助金制度のキーポイントになります。企業がコロナ禍から立ち直るには資金が必要なので、政府は補助金制度でお金を補助することにしたわけですが、事業の再生に必要なのはお金だけではありません。
そこで経済産業省は、中小企業等に強い企業に生まれ変わってもらおうと考えました。しかし中小企業等が単独で実行するのは難しいので、認定支援機関のサポートを受けてもらうことにしたわけです。
事業再構築補助金は、お金、サポート制度、方向性が1セットになった支援策です。
認定支援機関の手数料・報酬
中小企業等が認定支援機関を利用すると、報酬を支払うケースがほとんどです。ただその金額は決まっているわけではなく、認定支援機関によってまちまちです。
事業再構築補助金関連の報酬の相場は次のとおりです。
- 着手金:10万円前後
- 成功報酬:10%前後
事業再構築補助金の額が大きくなるほど、成功報酬のパーセンテージは少なく設定されるのが一般的です。また、事業計画書の策定のさい、依頼者と認定支援機関のどちらが主体的になるかによって料金体系が変わるパターンもあります。
実際の料金体系の事例
認定支援機関は事業再生の「伴走者」です。長い付き合いになりますので、認定支援機関を選定するときは、報酬額だけで決めるのではなく、信頼できる相手を選びましょう。
料金の事例①
ドリームゲートアドバイザーの認定支援機関の例で説明すると、中野裕哲アドバイザーが経営するV-Spirits経営戦略研究所株式会社は、元・補助金審査員の中小企業診断士等、複数名の専門家チームで対応するの特長で、次のような料金体系です。(初回相談は無料)
- 応募に係る報酬(着手金) 補助金申込額により 50,000円~(税別)
(内訳)事業計画書等応募書類作成、申請に関するコンサルティング - 審査に合格した場合にかかる報酬 補助金申込額により 7%~(税別)
(内訳)事業実施や完了報告書、事務局対応に関するコンサルティング
料金の事例②
村野 智範アドバイザーが所属する株式会社SoLaboでは、資金調達業務に特化し、毎月120件以上の事業計画書を作成し、資金調達支援に成功しています。
メール相談は初回無料で、次のような料金体系です。
- 着手金:10万円(税別)
- 審査に合格した場合の成功報酬:補助金申込額の10%(税別)
支援内容に見合わない報酬の請求に注意
事業再構築補助金事務局が公開している中小企業庁の村上経営支援部長がYouTube動画で「相当不謹慎」と批判したのが、実際の支援内容に見合わない報酬を請求した支援機関です。
認定支援機関には採択をゴールにするのではなく、3~5年先の再構築の完了まで支援することが求められています。
有料の支援を受けたほうが採択率が高い?!
ものづくり補助金データポータルによると、ものづくり補助金においては15%の成功報酬を支払ってサポートを受けた者がもっとも採択率が高く、支援を受けなかった者と比較するとその採択率の差は約21%もあります。
10%未満の報酬と15%未満の報酬の差はそれほどなく、それ以上になると逆に採択率が下がってしまうので、成功報酬は10~15%程度が「支援内容に見合った適正な価格」であると言えるのではないでしょうか。
認定支援機関別の1次採択率は?
第1次公募の採択結果が6月18日に発表され、全体の平均採択率は36%と低い結果になりました。
認定支援機関別の応募・申請・採択状況も公表されています。
事業再構築補助金事務局発表「事業再構築補助金第1回公募の結果について」より抜粋
この資料によると「中小企業診断士、民間コンサル、地銀などの金融機関の採択率が高い」と記載があります。
申請件数でいうと税理士・税理士法人の合計数が圧倒的に多いのですが、両者を合計した採択率は27%と、全体の採択率より低い結果となっています。では「税理士より中小企業診断士や民間コンサル、金融機関に頼むほうが採択率が高いのか?」というと、ここは注意が必要です。
多くの企業に顧問税理士がいるでしょう。今回の1次申請においても「顧問税理士が認定支援機関だったので依頼した」という事業主も多くいますが、優秀な顧問がすなわち補助金に強いわけではありません。
税理士の採択率が低い結果となった理由の1つにはそのような背景があるのではと推測します。
ドリームゲート内の認定支援機関の紹介
ドリームゲートには、認定支援機関に登録されているアドバイザーが多数在籍しています。認定支援機関としての資格をもっているだけでなく、審査を経てドリームゲートのアドバイザーとなった起業・経営のプロなので、事業再生にトライする事業主の力強い味方になるでしょう。
採択への近道として、優秀なパートナーを探しましょう。
よくある質問と答え
Q.認定支援機関とは何ですか?
A.経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業が安心して経営相談等が受けられるために、専門知識や、実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関です。 金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士等がいます。
Q.事業再構築補助金は認定支援機関に依頼しないと申請できないの?
認定支援機関と一緒に事業計画を策定する要件があります。申請時の添付書類として認定支援機関による確認書の提出を求められます。
Q.認定経営革新等支援機関への報酬は必要か。また、報酬は補助対象となるのか?
A.認定経営革新等支援機関への報酬を必須とするような要件は設けられておらず、それぞれの機関と相談して決める必要があります。また、補助金への応募申請時の事業計画書等の作成に要する経費は補助対象外となります。