知的財産:Vol.44 増え続ける『ニセモノ』問題。巻き込まれないための対処法とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
昨今の不景気の影響か、商品の外観や中身を真似されたのでなんとかして欲しい、という相談が増えています。逆に、知らない会社から、いきなり特許権侵害の警告書を送りつけられ、顔面蒼白で事務所に来られる経営者も居ます。増え続ける悪質な模倣商品の実態や対処方法を説明していきます。

侵害の実態

 まず、侵害として一番多いと思われるのが、商品の外形形状を単純に模倣したコピー商品です。所謂「デッドコピー商品」です。侵害者からすれば、一番安易に行えるケースで、売れ筋商品の偽物を作って、本物の人気に便乗しようというものです。実際、そっくり真似されたという相談がとても多く、残念ながら製造地域は中国あたりが多いようです。私の実感では、景気が悪くなると、この手のデッドコピーが増えるような気がします。

 コピー商品は、一般に値段が安く、景気が悪いと消費者もどうしても安い商品に目がむいてしまうということもあるでしょう。しかし、コピー商品には品質が優れたものが無いというのが実態です。時として、コピー品の苦情が、正規品のメーカーに寄せられ、正規品のメーカーが直接的に被害を被るケースもあります。このようなケースがより一層、問題を険悪なものにしてしまいます。
 単に、商品の形態を真似するというだけではなく、取扱説明書の絵をそのままコピーしたり、文言をそのままコピーしたりと、よくもここまで、と思えるケースも増えています。こちらが、説明書にワザと商品と一部違う絵を描いているのに、その違う絵をわざわざ真似をする、そんなことを平気でやる国内の会社があります。使用方法の説明で、文言を完全に真似して、最後に、「当方の商品は、異音が発生しやすいので、定期的に油を差してください。」と付け加え、自分のコピー品の欠陥を露骨に認めている取扱説明書を見たときには、さすがに唖然としてしまいました。

 これは、日常的に使う雑貨類に限られたものではなく、例えば、ネットショップのサイトの商品写真をそのままダウンロードされて、別のサイトの写真にそのまま使われていたり、悪質なケースにあると、サイト自体を丸ごとコピーして新たなサイトが作られるようなものまであります。Webサイト作成会社が、依頼主に偽って、他人のサイトを違法にコピーしたページをあたかも自分で創作したと見せかけているケースもありました。
 

本物だけど偽物?

 よくある話なのですが、本物と全く同じ形状の偽物が出回るときがあります。どのような場合かと言うと、製品の金型を預けた先の成型工場が、同じ型を使って成型した製品を、非正規の別のルートに売り飛ばしてしまうのです。これだと、まさに「本物だけど偽物」となってしまうわけです。そして、この偽物の方が、安価な場合が多いため、正規品の売上に大きな影響を与えるのです。
 

侵害されない工夫

 いくつかの侵害の形態を述べてました。対策法として、まず考えなければならないことは、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権等)を取得し、その権利の所在を商品や取扱説明書で明示することです。
 「PAT.P」(Patent pendingの略)という表記を見かけたことがある方もいらっしゃると思いますが、これは「特許出願中」ということを意味しています。権利取得までいかないまでも、出願中である旨をはっきりさせて威嚇する必要があります。安易な模倣を思いとどまらせることが、最初の一歩です。

 また、取扱説明書等で、著作権の所在を明確にしたり、場合によっては、形態模倣した商品の製造販売は、不正競争防止法により処罰の対象になる旨の記載を書くのも、 1つの方法かもしれません。
※ただし、特許出願等で最終的に拒絶されて権利にならなかった場合、権利の記載が虚偽表示になりかねませんので十分に留意してください。

 侵害されない工夫を整理すると、

 ・不用意に技術情報を公開しない(秘密保持契約等の事前の措置を講じる)

 ・産業財産権を取得し、独占権を確保する

 ・「PAT.P」等の産業財産権の取得に努めている旨を明示し、また、権利取得後は商標登録済を示すレジストレーションマーク(○にR)等を積極的に表示する

 ・著作権や不正競争防止については、権利の所在を明示し、各種法令で保護されていることを示す

 ・自社のホームページ等で、権利侵害の説明ページを作成し、どのような行為が侵害に該当する可能性があるかの態様を例示したり、自社が他者の権利侵害をしないための取り組みを明示する

 ・自社のホームページ等で、顧問先や提携先の法律事務所や特許事務所の名称を明示する
 

侵害された場合の対処法

 まず、侵害されているという情報を正確に把握することが大切です。いつ、誰が、どのような商品を販売しているか、証拠をしっかり掴む必要があります。そのためにも、バイヤーさんとは日頃から緊密な情報交換ができる関係になっておく必要があります。

 そして、侵害が明らかになったら、弁護士や弁理士の専門家に相談してください。不用意な警告で、逆に営業妨害でこちらが訴えられるケースもあったりもします。産業財産権、不正競争防止法、著作権法、民法(例えば709条)等を駆使して、対処することになります。
 

侵害しないために

 逆に、自分では意識はしていない中で、他人の権利を侵害しているケースも多々あります。少なくとも、商品を世に出す前に、他人の特許権等を調べておくことをお勧めします。特許庁の特許電子図書館で検索ができますが、検索自体がかつ複雑ですので、こちらも公的な機関のアドバイザーに相談することをお勧めします。そして、争いになった場合のリスクもしっかり把握しておくことが重要だと思います。
 他人の権利を侵害した場合、以下のようなリスクを追いかねません。

 ・訴訟に至らなくとも警告を受けただけでも、精神的な苦悩を伴い、少なからず業務に影響が及ぶ
 ・警告だけでも、商品の出荷を控えたり、経済的な影響を受ける
 ・他人の産業財産権(特許権、商標権等)を侵害した場合、差止や損害賠償が請求される
  (たとえ他人の権利を真似たものではなく、故意がなくても排除されます)
 ・謝罪広告を行う必要が生じた場合、社会的信用を失墜する
 ・他人の権利を侵害しないことを条件に取引契約を締結しているケースの場合、債務不履行として契約を打ち切られたり、原権利者からだけではなく取引相手から損害賠償を請求される場合もある
 ・侵害に故意や過失がある場合、刑事罰が科される(会社側にも罰金刑が科される場合あり)
 

性善説は通用しない?

 現代は、人はコピー商品なんか出さない、という甘い考えは通用しない時代です。また、自分自身もいつ被告になるかわからない時代とも言えます。そのことは、意外に事件に巻き込まれてみないとわからない話で、自分がまさか事件に巻き込まれるわけがないと決め付けている方が多いようです。しかし、ビジネスとして、しっかり向き合う姿勢を持っていただきたいと思います。

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