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進出の第1歩は目的・形態・持ち分の明確化から
まず、企業が海外投資をする目的は大きく分けて3つです。
(1) 日本で生産して、国外へ販売する(日本生産・海外輸出販売)
(2) 海外で生産して、その国で販売する(海外生産・海外国内販売)
(3) 海外で生産して、第3国へ販売する(海外生産・海外輸出販売)
次に、投資の形態を決めます。
(1) グリーンフィールド
新しく法人を設立し、ヒト・モノ・カネをゼロから調達する方法。何もないグリーンフィールド(野原)を取得して、自ら開 拓することに似ているのでこう呼ばれています。
(2) M&A
最近の経済ニュースで一躍有名になりました。Mは 英語の”Merger”の略で、2つ以上の企業が合併することです。Aは”Acquisition”の略で、企業が別の企業を子会社化する、もしくは企業 の一部分が営業譲渡されることを意味します。
3つ目に重要なのは、持分比率です。
(1) 100%所有:100%出資することにより完全子会社となります。
(2) 合作(合併):現地国に海外投資規制があるときは現地企業と共同出資します。
なぜ2国間投資協定を重要視するのか?
2004年9月現 在、日本は中国と香港を含む13カ国とBITを締結しています。BITとは、2国間の海外投資の安全性を確保し、かつ、投資を促進するために、投資規制を できる限りなくし、投資が自由にできる環境を整え、投資家および財産を保護するための約束です。最近ではFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定) の一部と重なるところもあります。この協定の最大の意義は、世界貿易機構(WTO)が貿易について定めているような国際ルールが、投資については存在しな いことです。包括的な国際ルールができあがるまで、2国間や複数国の間で協定を結び、投資がしやすいように配慮する試みなのです。
BIT協定の具体的な効力と問題点とは
BITによって開放さ れたビジネス環境は、協定がない国と比べ自由に事業を展開できるので、企業は安心して海外に投資できるようになります。それでは、BITの中身を具体的に 見てみましょう。
● 内国民待遇
相手国は、投資する外国企業を差別せず、自国企業と同等に扱う。
● 最恵国待遇
相手国は、外国に与えている待遇の中で常に良いものを締結国に与え、他国企業に比べて不利な待遇を受けること がないよう配慮する。
●パフォーマンス要求の禁止
相手国が、外国企業の経営にノルマや 条件を課すことを禁じる。例えば、役員の国籍要求、自国民の雇用要求、技術移転要求などです。
●収容の条件および補償
相 手国の事情で外国企業の財産を収容する(強制的に国営化する)場合に備えて、条件や補償方法を取り決めておく。
●送金の 自由
相手国は、外国企業が自由に海外へ送金できることを約束する。
●紛争に関す る取り決め
相手国と外国企業間に何らかのビジネストラブルが生じた時の解決に備えて、解決方法と仲裁ルールを取り決めて おく。
しかし、BITにも解決できない問題があります。特に中国への指摘で多いのが、(1)不透明な法律の運用、(2)知的財産権の保 護、(3)債権回収です。BITによって法制度は確立されても、それを運用する政府と企業との一貫性に、まだまだ課題が残っています。次回はより具体的な 中国投資の戦略をお話します。