2018年10月22~24日虎ノ門ヒルズで行われた第5回イノベーションリーダーズサミット(ILS2018)のメインイベント、大企業とスタートアップのマッチングプログラム「パワーマッチング」において、大企業から人気の高いスタートアップを経営する30代までの経営者をご紹介します。

世界最高水準の高性能有機半導体を実現!
IoTの発展・加速を目指す東大発ベンチャー

起業家インタビュー

執筆者: 松元 順子 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

既存の10倍の高性能を実現!
高性能・低コストのフレキシブル有機半導体

事業や製品・サービスの紹介

近年、シリコンに代わる半導体材料として注目を集めている有機半導体。薄く柔らかく、低コスト化が可能という特徴を持つ半面、シリコン製の半導体に比べて性能が低いという課題があった。こうしたなか、電子移動度10平方cm/Vs以上という世界最高水準の高性能有機半導体の作製技術を持つのが、パイクリスタル株式会社だ。

同社は東京大学の竹谷純一教授(同社CTO)らの研究成果をもとに、有機半導体の材料と成膜プロセス双方において独自の技術を確立。同技術は、従来型の有機半導体多結晶ではなく、有機半導体単結晶を大面積に作製することが可能であり、従来の有機半導体に比べ10倍以上の高性能を実現したという。さらに、有機半導体CMOS回路を実現しており、超低消費電力で駆動するという特徴も持つ。

photo1.jpg
IoT時代において、低コストで生産できるセンサーデバイスのニーズが高まっている。しかしながら、シリコン製の半導体は巨大な設備投資が必要、かつ、少量多品種生産には不向きという課題があった。これに対し、同社の有機半導体はフィルムに材料を低温で塗布することで作製できるため、設備投資が少なくて済み、低コストおよび少量多品種対応を実現できる。さらに、生産リードタイムもシリコン製の3分の1以下にまで短縮可能だ。

この技術を用いて、同社はRFIDなどに用いるデジタル回路を開発している。これは、従来の有機半導体ではなく、同社の高性能有機半導体であるからこそ実現できることである。今後、高性能・低消費電力・低コストという市場ニーズに応える次世代の半導体として、広範な用途への活用が期待されている。

配線なしで温度や振動をセンシング。
製造業、物流、ヘルスケア領域にも展開可能

対象市場と優位性

なかでも同社が注力しているのが、製造機器の故障予知を目的としたセンサー付きRFIDタグの開発だ。これらは工場内の機器に取り付けるだけで、温度や振動、ひずみといった複数要素の測定を、配線なし・電池交換なしで行うことができるというもの。具体的には、有機半導体を活用して作製した回路に、有機半導体センサーを組み合わせ、低消費電力で動作するセンサー付きUHF帯RFIDタグを作製し、RFIDリーダまで2m程度の距離で無線通信・無線給電によって、センサーデータの連続読み出しを実現する。

photo2.jpg
このデバイスを用いることで、ロボットアームや工作機械の稼動部など、配線不可能な箇所のモニタリングを低コスト、省エネルギーで実現できるため、製造業の課題解決につながるというわけだ。現在、自動車メーカーや化学メーカーなどと利用用途の検討を進め、2018年末までには、実証実験の開始を計画している。

将来的には、量産技術を高めることで、食品や医薬品など温度管理が必要な物流、ビルや橋梁のような建造物の安全管理、製品設計時の応力測定試験、入院患者の体調管理など、さまざまな産業への展開を目指している。

2018年8月末には、NEDO(産業技術総合開発機構)主催の展示会「イノベーション・ジャパン」に出展。同社のブースへの来場者が1000人を突破するなど、大手企業からの注目の高さがうかがえる。

低コスト、低消費電力のデバイスを量産し、
IoT社会の発展に貢献したい

事業にかける思い

photo3.jpg
同社代表の伊藤陽介氏は、東京大学大学院工学系研究科修了後、外資系コンサルティング会社のローランド・ベルガーに入社。その後、液晶ディスプレイ製造会社のジャパンディスプレイに転職し、経営企画や株式上場に従事した経歴を持つ人物だ。前職時代から「大学で発明された基礎技術を世の中に広めたい」という思いがあったという。

同社は2013年2月、当時大阪大学に在籍していた竹谷純一教授が創業し、2017年7月に研究開発段階からスケールアップするタイミングで伊藤氏が代表に就任。商業化に向けて大きな一歩を踏み出した。

「現在は自社での量産検証段階。今後は量産化に向けて、さらに実証実験を積み重ね、製造技術を向上させていくことで安定供給体制を確立させたい。そのために2019年には量産投資に向けての資金調達を目指します」と伊藤氏。自社での量産体制を確立したうえで、将来的には、ジョイントベンチャーなどの形で他の企業との連携による拡大も視野に入れているという。

「今後、毎年1兆個のセンサーを消費する“トリリオン・センサー”の時代が到来すると言われています。そのすべてをシリコン製半導体だけで賄うのは困難です。当社の低コストかつ省エネルギーの有機半導体は、こうした時代のニーズにマッチしていると考えます。今後、当社のセンサーデバイスをさまざまな産業で広く活用していただくことで、人々の生産効率を高め、IoTのさらなる発展に貢献したいと考えています」

パイクリスタル株式会社
代表者:伊藤 陽介 氏 設立:2013年2月
URL:http://pi-crystal.com スタッフ数:30名
事業内容:
有機半導体デバイスの開発・製造・販売
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社、株式会社小森コーポレーション、株式会社ダイセル(資金調達額は非公開)
ILS2017 大手企業との商談数:
18社

当記事の内容は 2018/9/18 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める