海外移住の夢を叶えるために週末起業。
簡単おいしい外国人向け料理教室が話題!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 本多 小百合  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

外国人に日本の家庭料理を教える
人、チーム、組織、場を育てていく
展開している事業の内容・特徴

20161222-1日本食レストランが世界各地で急増し、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本食が健康的で理想的な食生活スタイルとして注目を集めている。しかし、多くの外国人には日本料理をつくるのは難しいという先入観があるようだ。そのイメージを覆すのが、“一皿20分で完成”が売りの外国人向け料理教室「わしょクック」だ。

教えるのは日本の家庭料理、レシピは英語と平仮名のバイリンガル表記で、塩少々といった曖昧な表現はなく、すべて数値化されている。生徒は原則5人までの少人数制。出汁のとり方から丁寧に教える。これまでに受講した外国人生徒の数は述べ500人。日本人の夫を持つ女性やヘルシーな和食に関心をもつ英語教師など、日常生活に和食をとりいれたい外国人が熱心に通う。

おにぎりやたまご焼き、みそ汁など、日本人には身近すぎるメニューも、来日して間もない外国人にとっては未知の料理。2時間半で昼一食分の献立を覚えられるなら、1レッスン6000円でも安いぐらいだろう。カリキュラムや講師の指導方法にも、場を盛り上げる工夫や生徒のスキルに合わせた対応など、日本人向けの料理教室とは違った工夫がされており、受講した外国人が友人知人を連れて再訪するケースも多いという。

20161222-2「出汁をとるのもパフォーマンスなんです。熱湯にかつお節を落とすと、ゆらゆら動いてフワッと香りが広がるでしょう。すると、生徒さんが『おお!』とどよめくんですね。それを飲んでみると、ほんのり優しい味。視覚、嗅覚、味覚で出汁を体験してもらったところで『これをベースに砂糖や醤油で味付けしていくと、和食らしい深みのある味になります』と解説すると、印象に残るんです」と、代表の富永紀子さん。

長時間のレッスンでも飽きさせず、調理をとおして日本の食文化にも触れてもらうコツは、富永さんを筆頭に、3カ所に設けられた教室で教える講師全員が身につけている。

「わしょクック」の事業のもう一つの柱は認定講師の育成。目指すのは「わしょクック」のフランチャイズ化だ。養成講座では、外国人向けの料理の教え方、教室運営や集客の方法などを4日間かけて指導。試験を受けて講師として認定された人は「わしょクック」直営教室でレッスンを受け持つほか、自宅などを使って教室を開校することもできる。すでに28人が養成講座を卒業、うち16人と業務提携を交わしている。

卒業した彼女たちの活躍の場にしてもらえればと、外国人向け料理教室もレッスン枠を拡大、さまざまな切り口の講座を揃えている。今年から新たに始まった講座は、日本人も一緒に学ぶ「英語でクッキング」。来年からは「キャラ弁」をつくる“アニメ×和食”の講座も計画している。

夢は家族でニュージーランド永住。
大好きな料理で楽しく週末起業
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20161222-3化粧品業界で長くマーケターとして活躍していた富永さん。以前は“食”を仕事にすることは考えていなかったという。きっかけは8年前に旅行で訪れたニュージーランドでの経験だった。

「テレビで見て以来、ずっと行きたいと思っていた一日一組限定のロッジに夫婦で泊まりました。そこでは朝、ロッジのご主人が釣った魚を奥さまが料理して出してくれます。シンプルな家庭料理でしたが、今まで海外旅行で食べたどの食事よりもあたたかで印象に残りました」

ロッジを訪れたのは大晦日。オーナー夫妻は新年のホームパーティにも富永さん一家を誘い、手料理でもてなしてくれたという。地元の人たちと触れ合えた喜びから、いつか自分も日本の家庭料理を伝えたいという気持ちが芽生えた。

「いずれは海外で暮らしたいと思っていたんです。そしてその時、10年後に、ニュージーランドに移住しようと決めました」

帰国後、外資系企業に勤めていた富永さんは早速、外国人の友人たちに日本の家庭料理を振る舞ってみた。すると反応は上々。これをビジネスにしようと志し、会社員を続けながら、食育指導士の資格取得や料理教室のリサーチなど、食についての勉強を始めた。

料理教室としての出発点は、地元の国際交流施設で開いた講座。ここなら家庭料理を学びたい外国人にコンタクトできそうだと目をつけ、企画を持ち込んだのだった。予想は当たり、日本のメディアではなかなかリーチできない外国人の間にも口コミで広がった。

10年計画の週末起業。料理教室を開くようになってからも、仕事に支障が出ないよう、起業準備にあてる時間は往復の通勤時間と昼休み、帰宅後の1時間と決めた。「平日5時間と土日に集中してやれば結構できる」と富永さんは言う。また、本業で培ったPRや広報のスキルも大いに発揮。ポイントを押さえた情報発信でメディアにも多数とりあげられた。

この間に子どもにも恵まれ、会社の仕事と週末起業に育児も加わった。このハードワークにも前向きに取り組んでこられたのは、やはり料理が好きだったから、そして、家族のサポートがあったからだという。5年前から同居してくれている義母の存在も大きいそうだ。

「義母は徳島県出身で、料理がとても上手なんです。教わってつくってみたら評判がよくて、さっそく『わしょクック』にもとり入れました。ロゴマークのモデルにもなってもらったんですよ」

会社員、週末起業、母という三足の草鞋でひた走ってきたが、今秋、週末起業を卒業した。子どもが小学校に上がり、「わしょクック」も法人化。そろそろ一本に集中するべき時がきたと感じたのだという。平日の日中も「わしょクック」の時間にあてられるようになると、訪日外国人をターゲットとする企業との提携や大学での講師の仕事など、料理を軸に新たな仕事が舞い込むようになった。残り2年となった日本での生活に悔いを残さぬよう、仕事にも育児にも全力投球している富永さんだ。

家庭料理を通じて世界をつなぐ。
「わしょクック」の伝道師を全国に、世界に
将来の展望

20161222-4「わしょクック」では現在、独立した認定講師が、次の認定講師を育成するプログラムを構築中だ。現時点では、外国人にもわかりやすく親しみやすい料理教室の運営方法を体系化、富永さんが認定講師を育成しているが、この仕組みが完成すれば、富永さんが不在でも、「わしょクック」のDNAを受け継いだ料理教室が広がっていく。

「今後、日本全国、全世界に『わしょクック』をフランチャイズ展開していきたい」と富永さんは語る。現在、認定講師養成講座を地元で広めたいと、大阪や北九州から通う人たちもいるという。確かに、日本全国で暮らす外国人は増えている。地方でも、日本の味を学びたい外国人はたくさんいるはずだ。

「料理教室はコミュニティにもなります。2校目の教室は語学学校のキッチンを借りて運営しているのですが、もともとオーナーさんが交流を促すためにつくったサロンスペースなんです。一緒に料理をして、一緒に食事をすることで、交流も深まります」

食は人間の生活の基本。お互いの国を知りたい、相手ともっと仲良くなりたいという気持ちを、「わしょクック」が上手に橋渡ししてくれる。富永さんは最近、外国人を認定講師として養成することも考えるようになったという。「やはり、自分の国の言葉で教えれば、その国の人にはよりわかりやすく伝わりますから」。

講師になるという目標ができれば、外国人の生徒のモチベーションも上がるだろう。そして、彼女たちが講師になってくれれば、日本食の素晴らしさが世界にもっと広がっていく。原点はあのロッジ。食事を通じて異文化に触れ、現地の人と親しく過ごした経験だ。日本の家庭料理を誰かに伝え、その誰かと一緒に豊かな経験をしてほしい――。そんな富永さんの思いが「わしょクック」の成長を支えている。

わしょクック株式会社
代表者:富永 紀子氏 設立:2016年1月
URL:http://washocook.com/ スタッフ数:3名(ほか契約認定講師16名)
事業内容:・外国人向け料理教室、認定講師育成、企業向けコンサルティング等

当記事の内容は 2017/1/5 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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