「音楽系は儲からない」なんて言わせない!
作曲家、編曲家、歌手らに新たな活躍の場を

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 馬島 利花  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

5万3000点を超える音素材の中から
“BGM”や“効果音”が購入できる
展開している事業の内容・特徴

20161220-1インターネットやスマホの普及によりCDが売れなくなるなど、音楽関連ビジネスを取り巻く環境は大きく変わり続けている。そんななか、新たなビジネスモデルで音楽業界を盛り上げようとしているのが株式会社クレオフーガだ。同社は、音楽共有サービス「クレオフーガ」と、音素材販売サービス「オーディオストック」という音楽に関係する2つのWebサイトを運営している。

2007年の同社創業当初にスタートした「クレオフーガ」は、作曲家、編曲家、声優、歌手などの音楽クリエイター・アーティストらが自分の作品を発表し、交流する場としてつくられたサービスだ。ユーザー登録をすると、自分の作品を自由に投稿できるほか、映像やゲームとタイアップした音楽コンテストにも参加できる。これまで、バンダイナムコゲームス社の「太鼓の達人」の楽曲コンテストや、愛媛県西予市の観光地を盛り上げる音楽コンテストなど、100件以上のコンテストが開催された。多いときには、2000曲ほどの作品が集まるという。

一方、同サービスから派生し、2013年に新設されたのが「オーディオストック」だ。こちらは楽曲、効果音などの音素材を販売するサービス。全国の音楽クリエイター・アーティストらにより制作・投稿された音素材を、主に企業の映像制作者、ゲーム開発者などが購入し、社内向け動画マニュアルやCM、イベントBGMなどさまざまなシーンに活用している。現在販売されている音素材は約5万3000点。取引企業数はここ数年倍増を繰り返しており、2016年に2000社を超えた。

こうした成果について、代表の西尾周一郎氏は、「サービスを展開した時期がよかった。今、動画の利用が増えてきていますよね。動画には音が必要不可欠だけど、そこにあまりコストがかけられない、という企業が多いんです。24時間、いつでも瞬時に、低価格で“音”が手に入る。そんな気軽さが世の中のニーズにフィットしたのだと思います」

“流行りのもの”より“好きなもの”を
事業領域に選び、こだわり続けた
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20161220-2西尾氏は、4歳からエレクトーンを習い、高校ではバンド活動に精を出すなど、自身も大の音楽好き。作曲家を目指したこともあるそうだ。そんな西尾氏が常に感じていたのは、「音楽をつくっても、発表する場が少ない」ということ。

一方で、SEだった父親の影響でITにも関心があった。音楽とITをかけ合わせ、音楽領域で新しいサービスを生み出したい、と模索を続けた。「インターネット上に音楽の作品を発表できる場をつくろう」という考えに辿り着いたのは、大学在学中のころ。キャンパスベンチャーグランプリ中国大会で優勝し、そこで得た100万円を資本に地元岡山県で起業した。

とはいえ、音楽業界の逆風は強い。「ベンチャーキャピタルに出資をお願いしに行けば、『音楽系は儲からない。難しいよ』と必ず言われました」と西尾氏。しかし、その逆風こそが、背中を押した。「起業家には2つのタイプがあります。事業領域に“好きなもの”を選ぶタイプと、“流行りのもの”を選ぶタイプ。私は前者で、どんなに難しいといわれても、だからこそ夢があるし、ちゃんとやれば儲かると信じていました」

創業当初、同社は、「クレオフーガ」のコンテスト運用で収益を得ていたが、それだけでは黒字化できず、ホームページ制作などの受託サービスで会社の運転資金を補っていた。本来の目的から逸れていく自分に気づいた西尾氏は、2012年、音楽領域での自社サービスに集中特化するため、音楽にかかわる企業の多くが集まる東京への進出を決意する。

その後、西尾氏は、東京で多様な企業に営業活動をするなかで、前述したような気軽に手に入れられる“音”へのニーズを肌で感じた。そこで、「クレオフーガ」のコンテストで落選した作品たちに目をつけ、「これらの音素材を販売してみてはどうだろうか」という気づきから、「オーディオストック」を開設。2つの自社サービスは、シナジーを与え合いながら徐々に軌道に乗り始めた。

ピクスタとの提携により販路を拡大。
クリエイター・アーティストに夢を与える
将来の展望

20161220-32016年11月、同社は写真・イラスト・動画素材のマーケットプレイス「PIXTA」を運営するピクスタ株式会社との資本および業務提携契約締結を発表した。これにより、2社は2017年内に音素材販売における協業を開始し、「オーディオストック」の音素材は「PIXTA」でも販売されるようになる。

西尾氏は、「この提携にかける最大の期待は販路の拡大。ピクスタ株式会社は2015年に上場した有名企業で、開設から10周年を迎えた『PIXTA』は多くのユーザーを抱えています。私たちがこれまでリーチできなかったユーザーにリーチできるはず」と狙いを語る。

また、「将来的には、音素材を世界最大級の100万点に増やしたいが、量だけではなく質も大切。今、品質審査の基準を少しずつ上げているところです。また、音は目に見えない分、主観で判断する部分が多く、イメージを共有するのが難しい。ユーザーがイメージしている音にきちんと辿り着けるよう、検索機能や仕組みも向上していかなくてはなりません」と、課題についても語ってくれた。

なお、「PIXTA」には、年収1000万円以上を稼ぐフォトグラファーやクリエイターが存在する。西尾氏は、「オーディオストック」に明るい未来を思い描く。「現在、『オーディオストック』で稼げるのは、せいぜい月10万円くらい。でも、今後、“1000万円プレーヤー”が出てきたらと考えると夢が膨らみます」

最後に、西尾氏がなぜこれほど音楽業界にこだわるのか聞いてみた。「あるとき、音楽好きな若い子から言われたんです。『メジャーデビューしても大変なだけですよね』と。そんな現実的なことを大人ならまだしも、若者から言われて悲しくなりました。だから、私が頑張って音楽領域で儲けるなり、なんらかの成功を収めなければ、と思ったんです。音楽業界全体を盛り上げ、音楽好きな若者たちに夢を取り戻したい、と」。

株式会社クレオフーガ
代表者:西尾 周一郎氏 設立:2007年10月
URL:http://creofuga.jp スタッフ数:10名
事業内容:音楽共有サービス「クレオフーガ」・音素材販売サービス「オーディオストック」の運営、システム開発

当記事の内容は 2016/12/13 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める