淡路島発「たまねぎキャッチャー」!?
「地方共創」をデジタルとリアルで実現!

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執筆者: 松岡 佑季  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

「地域共創」と「ファミリー」を軸に
大人気コンテンツを量産するベンチャー
展開している事業の内容・特徴

たまねぎキャッチャーの紹介PV(youtube)

現在、我が国が重要施策として力を入れている「地方創生」。さまざまな地域でプロジェクトが立ち上がっているようだが、地方自治体単独だったり、デジタル発信だけだったりと、「これぞ!」といった成功事例は少ないのが実情だ。そんななか、ユニークな「地方共創」ビジネスを推進しているのが今回紹介するネイティブ株式会社である。

同社が展開している主な「地方共創」コンテンツは、沖縄の観光振興が目的の「沖縄CLIP」、日本最大のDMOプラットフォーム「瀬戸内Finder」などのWebメディアと、淡路島のブランド発信企画「おっタマげ!淡路島」だ。そしてもう一つの事業の柱は、ファミリーメディアである。NHKの人気番組『きょうの料理』で放送された料理レシピ、献立が探せるサイト「みんなのきょうの料理」や、子育て情報サイト「すくコム」などの事業開発なども手がけている。

「いいものはたくさんあるのに、なかなか全国に広がっていかない」という課題を抱えた地方は多い。例えば、淡路島の特産に、玉ねぎがあるが、関西近隣以外にその魅力はうまく伝わっていない。そんな課題を解決するために立ち上げたのが、淡路島全体のブランディング・プロジェクト「おっタマげ!淡路島」だった。

そのユニークな企画の一つが、この「玉ねぎキャッチャー」。玉ねぎのキャッチに成功すると、淡路島産玉ねぎ1.5㎏と交換してもらえる。なんと開始から1年で7万プレイを超えているそうだ。この人気ゲームは新聞、テレビ、Webなどで多数紹介され、広告試算価値に換算すると約1億5000万円以上のPR効果を生んでいる。

また、月間最大約120万PVを誇る「沖縄CLIP」は、沖縄観光関連サイトのなかでもトップクラスのメディアに成長。「瀬戸内Finder」も、立ち上げからわずか2年でFacebookのファン数が50万人を超え、月間PV最大約20万以上と、人気の瀬戸内関連観光メディアとして急成長を続けている。

両メディア成功の理由は、各地域在住のライター、カメラマンが独自に取材した記事を掲載し、地元の魅力を再発見し、世界中に発信している点にある。沖縄CLIPは日本語版だけでなく、英語、中国語、韓国語などの多国語展開もしており、インバウンド観光客へのPRも狙っている。

これらは、他の地域PRサイトに比べても、ライターのみならず自治体や企業との連携も数多く見られ、情報の更新頻度や発信の数も非常に多く活気に満ちている。これほど地方との連携が強く、数字面でも結果が出ている「地方創生」プロジェクトはほかには見当たらない。

2012年に地方創生の可能性と課題を感じ、
仲間たちと“思い”を実現するために独立
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20160621-2ネイティブ代表の倉重宜弘氏は、愛知県犬山出身の48歳(1967年生まれ)。早稲田大学を卒業後、富士総合研究所(みずほ情報総研)に入社する。その後、2000年に創業間もないネットイヤーグループに転職し、大手企業のデジタルマーケティングやブランディング戦略など多数のコンテンツをプロデュースした。関連会社の役員や事業部長も歴任し、2012年からは同社で地域共創事業を担当するように。

現在のビジネスに携わるきっかけを得たのは、その当時に北海道を盛り上げるメディアのプロデュースを担当した時のこと。自身も地方出身で、旅行が趣味だった。何より手がけた北海道観光メディアの反響が大きく、評価も高かったことが、倉重氏に地方創生ビジネスの可能性の大きさを気づかせた。そして氏の企画力と行動は他の地域からの注目を集め、「沖縄CLIP」や「瀬戸内Finder」の立ち上げにつながっていく。

それらのプロジェクトに携わっているうちに、デジタル面だけではなくリアル面にも注力していきたいという考が徐々に強くなっていった倉重氏。さらに、本質的にその地域の力になるには、単にプロモーションや企画アイデアだけを提供するにとどまらず、より深くかかわることで、その地域に根ざした仕組みになりきるべきだという思いも強くなってきた。そして、それをより具現化しやすい環境を志向するようになり、ついに会社の理解を得て2016年3月にスピンアウトし、起業の道を選ぶ。独立を決断した一番の理由は、沖縄や瀬戸内、そして淡路島で「自分たちが住む地域を本気でよくしよう」としている、志が高く行動力のある人々との出会いだった。

「地方在住の人々が地域のために動こうとする時に、地域内に閉じたこれまでの延長線ではないさまざまな可能性を、より多くの人とつながって実現しようという姿勢は急速に広まっている。今こそ大きく変わろうと意気込む、アツイ気持ちを持った皆さんと一緒に、地方の可能性を探求していきたいという思いが押さえきれなくなってしまった」と倉重氏は語る。

現在、同社の陣容は、前職時代から一緒にこれらの事業を創ってきたメンバー8名を含む10名のスタッフだけでなく、各メディアのコンテンツづくりを担当する地域在住のフォトライターがそれぞれ10~15名。ほか、各地で活動するキーマンとの連携も非常に強く、着実に地元との“共創”体制を築いている。そうしたネットワークのつくり方も、「沖縄CLIP」「瀬戸内Finder」「おっタマげ!淡路島」の人気を支える大きな要因となっている。

地方在住者とコミュニケーションを密に、
地域経済をまわす仕組みづくりを目指す
将来の展望

20160621-3倉重氏に今後の展望を伺ったところ、「地元経済に直接貢献できる仕組みづくり」と答えてくれた。これまで培ってきたデジタルマーケティングの経験、そして一緒に独立したメンバーや地方在住の同志を巻き込めば、これまでの単なるマーケティング、プロモーションの領域を超えて、直接的な経済効果を産み出し、地域の仕事を増やして活気を生む仕組みがつくれるチャンスがまだまだ広がっていくと考えている。

例えば新しい「お土産」づくり。デジタルメディアを運営してきた経験を数多く持つ同社であれば、ユーザーの意見を聞きながら一緒に商品をつくり上げ、それをネットでテストマーケティングをすることなども難しくない。どんな形であれ最終的には、「地域と家族というテーマ領域で、マーケティングや広告だけでないビジネスモデルをつくり、それを回る仕組みにしていくことが目標」と倉重氏。

これまで多数の実績や経験はあれど、まだビジネスとして継続していくために十分な収益モデルを完成させているとはいえない。これからも広告モデルだけではなく、コンテンツ課金や通販などさまざまなモデルにトライしていく予定だ。

同時に、そうしたモデルに理解のある新たなスポンサーやビジネスパートナーを集めることも、課題だと感じている。「やはり、そのための一番の武器となるのは、地方とのつながりや、ネットワークの多彩さかな、と。これまでに築いてきた人脈やパートナーシップをさらに拡大させて、地域やファミリー(家族)の可能性を広げていきたい」(倉重氏)。

そんな倉重氏の挑戦により、国内旅行者やインバウンド観光客が増加するなど、地域に新たな収益獲得のパターンが増えていけば、地方創生のうねりの一翼を担う可能性も期待される。地方に住み、生まれ故郷を盛り上げていきたいと本気で考えている読者の方は、ネイティブと倉重氏にぜひ、そのアツイ思いをぶつけてみはどうだろう。

ネイティブ株式会社
代表者:倉重 宜弘氏 設立:2016年3月1日
URL:http://www.nativ.co.jp スタッフ数:10名
事業内容:・インターネットを活用したメディア・サービス、商品などの企画
・地域資源を活用した各種観光関連事業

当記事の内容は 2016/06/21 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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