キャリアウーマンのニーズを満たしたワンピースブランド「kay me (ケイミー)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 李 顕史

自宅で洗えてシワにもならず、ネットで試着も。
開始2年で銀座をはじめ20店舗を展開!
展開している事業内容・特徴

kayme1働く女性向けのアパレルブランドとして急成長している「kay me (ケイミー)」をご存じだろうか。2011年7月よりスタートしたブランドで、オンラインショップのほか、東京・銀座をはじめすでに有名デパート期間限定ショップなど20店舗を展開している。

「一瞬で華やか、ずっとラク」をコンセプトに、働く女性を応援したいという思いから誕生した。ポイントは素材。ジャージー素材を使用したワンピースがメインの商品だ。ジャージー素材といえば、元々はスポーツウェアなどに使われていたものだが、のびやかで体を締め付けず、快適に過ごせるという特徴がある。この特徴に着目し、キャリア女性のための服として取り入れた。キャリア女性は、きちんとした見た目が求められる。にもかかわらず、シャージー素材を使用することで、きちんと見えるのに着ている本人は楽にすごせる。出張で新幹線移動中も着たまま楽に寝られるスーツなのである。

そのうえ、同ブランドのすべての商品は手洗いができ、シワにならない。つまりクリーニングに出す必要がない。クリーニング店の営業時間内に洗濯物を取りに行けない忙しいキャリア女性のニーズにも対応しているわけだ。

もちろん、デザインは仕事でもプライベートでも着こなせるもの。働く女性の中でも、弁護士や営業職など、人前で話し、プレゼンテーションをするなど、対外的な接点が多い女性を意識した商品設計をしている。

キャリア女性のスーツの定番といえば、リクルートスーツのようなきっちりとしたスーツ、もしくは欧米の高級ブランドのスーツ。意外なことに、金融機関やIT業界、コンサルタントなど女性も活躍することの多いビジネスシーンにおいて、手ごろでふさわしい女性用のスーツがこれまでなかったのだ。

同ブランドでは、3万から4万円台とリーズナブルな価格帯を意識。着崩れしづらく、プレゼンテーションや商談、会食などの場でも、一着で楽に一日すごせるというメリットが受けてヒットしている。

さらに、忙しい女性のためにネットから申し込める試着便のサービスもある。試着便とは、事前の料金支払い不要かつ送料無料で、自宅での試着ができるサービスだ。試着だけなら他のECサイトでも行っているが、事前決済不要なのがポイント。自宅で試着できるという手軽さで、オンライン購入に抵抗のある層の取り込みに成功している。

一般的に、アパレルブランドを設立し、認知・購入してもらうのは大変なことである。この点はフェイスブックなどのソーシャルネットを利用することで見込み客を増やしながら、ブランド立ち上げから2年で、デパートへの出店を果たした。今では期間限定店舗を含めると延べ20店舗を出店している。

自分自身が着たいものがない・・・それなら自分でつくってしまおう
ビジネスアイデア発想のきっかけ

kayme2kay me」を運営しているのは、maojian works(マオジェンワークス) 株式会社の代表である毛見純子氏。早稲田大学卒業後、ベネッセに入社。社内の新規事業コンテストで入賞するなど幹部候補として活躍していたが、そのポジションを投げ打って、プライスウォーターハウスクーパースに転職し、コンサルタントしてのキャリアをスタート。その後、ボストンコンサルティンググループで経営コンサルタントとして活躍したが、2007年12月に会社を設立し起業。主にIT情報通信、金融、エネルギーなどの業界を対象業界とし、法人営業組織と新規事業、開発支援のコンサルティング事業を開始した。

キャリア女性なら誰もが憧れる華々しい経歴を歩んできた毛見氏が、「kay me」を立ち上げることになったきっかけは、「仕事でもプライベートで着たいものがない、女性がずっと楽にすごせ、かつ着こなせる服があればいいのに……」という自分自身の不満だった。

毛見氏自身は、アパレル業界で働いた経験のないど素人。服をつくるのも、服ができ上がってから、安定して販売できる仕組みづくりも知らない。生地の調達、デザイン、裁縫などすべて手探り、未経験からのスタートだった。

 そんな毛見氏が、「kay me」の企画書を書き上げ、最初にとった行動は、唯一知っている大阪のオーダーメードのスーツ屋さんを訪ねたこと。その後、洋服をつくるにはパタンナーが重要と聞き、mixiでパタンナーを探した。また、生地の代理店から購入した生地は、取引の実績がないため、1mで1万円くらいの高価格に。そして、試作品を依頼した海外の縫製工場から上がってきたものは想定外の粗悪品だったという。

そうした苦労を重ねつつも、国内大手商社の支援を得ることに成功し、すべて日本国内で縫製を行い商品ができ上った。発案からわずか3か月で2011年5月にはウェスティンホテルの1室を借り友人知人を集めた試着会を開催。この場で好感触を得た毛見氏は、2011年7月には銀座のマンションの1室を借り、予約制のサロンを開店した。

ソーシャルネットで地道にファンづくり。
アナウンサーや女優への衣装提供で積極的に露出してブランド化
成功のポイント

まず毛見氏が行ったことは、ソーシャルネットを利用したファン(見込客)づくりである。といっても特別なことはしていない。定期的に情報を発信し、季節ごとの商品を紹介し続けた。また、商品を紹介する際は、共感を得ることを意識。つまり、実際に働くシーンやデートのシーンを想定し、顧客が具体的に着た時をイメージしやすくことを心がけたという。

そうして徐々に「kay me」の認知度が高まり、やがてデパートから出店を依頼されるようになった。コンセプトに共感し、応援してくれる人も自然と増え始めた。

アパレル業界で働いた経験がないことから、業界独特の商慣行やビジネススピードを理解していなく苦労したそうだが、商慣行やスケジュール、段取りといったことは、取引先に教えてもらいながら克服していった。

また、テレビのアナウンサーや女優が着用する衣装提供も頻繁に行っている。こうした活動もメディアへの露出を増やしブランド化を進める重要な戦略だ。

なにより成功のポイントは、市場調査を徹底的に行ったことである。キャリア女性、特に営業など人との接点が多い女性にとって、高級ブランドの価格帯では高く、一般のOLが着るような価格では安すぎた。また、金融機関やIT企業との商談時に、場の雰囲気になじむ最適な服がないと毛見自身が感じていたこともある。アパレル業界プロパーのデザイナーでは、金融機関やIT企業で働くキャリア女性の気持ちをくんだ商品設計が実現できていなかったのだ。

例えば、商談の場では通常スーツを着用するだろう。商談の場で社長が普通のOLのスーツだと華やかな雰囲気が出ない。欧米ブランドは、華やかなスーツはあるが価格帯が高く、着こなしづづらい。そこで価格を抑え、かつ華やかさを取り入れ、キャリア女性のニーズを「kay me」に集結させたわけだ。華やかさは具体的には、デザイン・色みを意識した。市場調査の結果、キャリア女性にとって、あると便利な機能やデザインを組み合わせて商品ができ上がった。

働く女性の、働く女性による、働く女性のための商品づくりをすれば成功すると確信。つまり、市場に商品はないが、ニーズは必ずあるはずである。このような点に目をつけ、ブランドを立ち上げたのだ。実際、顧客アンケートの結果でもリーズナブルで商品と価格のバランスがよいという結果が出ており、顧客満足度が高いことがわかった。

また、人との縁に恵まれたという毛見氏。会いたいと思った人、望むような人との出会いが多かったそうで、例えば「kay me」を着てほしい芸能人やアナウンサーの名前を社内の会議で口にする。すると、翌日にはその芸能人の所属事務所から連絡が……。作為的ではないとのことだが、こうした不思議な縁のおかげで、今の成功につながっていると毛見氏は語ってくれた。

目標は10年後に年商30億円。ライフスタイルの多様化に対応したさまざまなビジネスを展開していきたい
将来への展望

毛見氏に今後の展望を伺ったところ、売上目標は10年後に30億円。将来的には80億円を目指している。しかし、ビジネスとしての利益を追求するだけではなく、「kay me」をとおして仕事の楽しさを伝えていきたいというのが毛見の思いだ。つまり、「kay me」があるからこそ、安心して仕事をし、充実したプライベートを送る女性を一人でも多くつくることだという。

また、アパレルだけではなく、癒やしや遊びを取り入れたライフスタイルの多様な変化に対応していく計画だ。スクール事業も展開や不動産事業も将来的には進出したいと語ってくれた。

maojian works(マオジェンワークス)株式会社
代表者:毛見 純子氏 従業員数:20名(アルバイト含む)
設立:2007年12月 (kay meのスタートは2011年7月) 店舗数:20店舗(期間限定店舗を含む)
URL:http://www.kayme.jp/
事業内容:
ワンピースブランド「kay me(ケイミー)」の企画・生産・販売、経営コンサルティング事業

当記事の内容は 2013/10/08 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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