自然が豊かな湘南エリアで研究・開発!
業務用電気バイク「BATORA」で世界を目指す

モビリティー

執筆者: 佐々木 正孝  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

オール日本製の電気バイクを、
今年度中に量産化、本格販売予定 展開している事業の内容・特徴

20170314-1家庭用として普及が進むEV(Electric Vehicle)。走行距離やパワーではガソリン車に優位性があることから、業務用途の小型電気バイクに注目が集まっている。神奈川県藤沢市で起業した株式会社E・ミニモは、小型電気バイク「BATORA」を開発。実用レベルを目指してブラッシュアップを続けてきた。現在のモデルは、30kgの荷物を積載した状態で、1充電約70kmの走行を可能にしている。

大きな特徴は、ゼロベースから開発したモーターやリチウムイオン電池パックをはじめ、動力部品、電子部品もすべて日本製で構成していることだ。メイド・イン・ジャパンの追求について、E・ミニモの代表を務める西尾達二氏の考えは明快だ。

「小型バイクの性能、耐久性を考えると、部品は必然的に日本製に行き着きます。海外のオートバイは、エンジンも部品も走行距離2万km以上は保ちません。業務用であれば5万km台の走行距離がクリアできなければ」

想定される業務は、デリバリー、パトロールなど。BATORAは神奈川県藤沢市、横浜市と相鉄ホールディングスなど、すでにいくつかの実証実験をクリアし、特に自治体からの関心が高まっている。また、海外ではスリランカ郵政省が導入を検討。E・ミニモは幹部をスリランカに常駐させ、納入に向けた最終調整を続けている。

「電気バイクを事業化するうえで、私は『リチウムイオン電池』『モーター』『海外展開』を要件にしました。大手にベンチャーが伍していくなら、この3つは最低限の課題です。電池やモーターといったコアを独自開発するのはもちろん、国内市場だけでなく伸びしろのあるアジア市場を狙うことも必須条件でした」

日本のオートバイ市場は1982年の約329万台をピークに減少し、2016年は40万台を割って約39万台と約8分の1にまで縮小している。東南アジアを中心に伸び続ける海外マーケットを視野に入れなければ伸長できないのは確かだろう。

試行錯誤を繰り返すなか、リチウムイオン電池パックとモーターを共同開発してくれる企業、スリランカにパイプを持つキーパーソンとパートナーシップを結んだE・ミニモ。満を持して世に送り出す「BATORA」の2017年度中の量産化、本格販売を見込んでいる。

環境負荷の少ない電気バイクを作りたい!
ビジネスコンテストでも高評価を獲得 ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170314-2西尾氏は、広告プロダクション勤務後に、ユニフォームなどを手がける服飾デザイナーとしてバイク業界に入った。その後、勤務先していたバイク販売会社が倒産したことを機に、バイクメーカーの立ち上げを模索。バイク修理業を経て、電気バイクの開発を志した。

「そもそも僕自身はバイク好きというわけじゃないんですよ。バリバリうるさく走る暴走族のイメージがあるじゃないですか。EVは環境への負荷が低いし、デリバリーなどの業務用なら世の中の役に立ちます。自然にやさしく、公共性が高い乗り物を、自分が生まれ育った湘南、藤沢で開発したかったのです」

バイク修理を手がけていた頃から、西尾氏は大手メーカーと下請け中小企業の一方的な関係に疑問を抱いてきたという。現場に即した意見があっても、大手が吸い上げてくれることは皆無。本当にユーザーサイドのニーズに即した車両を作るためには、自らメーカーを興すしかなかった。

壁になったのは資金調達だ。EVバイク事業のアイデアがあり、モーターと電池パックの開発、海外販路の目算が立っても、資金がなければどうにも動けない。

「藤沢市の産業振興財団に相談したところ、補助金の活用をアドバイスしてもらいました。2010年には『湘南ビジネスコンテスト』で大賞をいただくなど、ビジネスアイディアを評価してもらえたのも大きかったですね。結果、神奈川県のグリーンIT活用補助金を活用することで、起業から開発へのメドが立ったのです」

2年間で5000万円の補助金を得て、メンバー一同は「BATORA」の研究開発に注力。起伏のある箱根~江ノ島間などでの走行テスト、業務用を見据えた実証実験を繰り返し、性能を向上させてきた。

「登坂力、スピード、充電時間、空冷性能など、技術的な課題は山積していましたが、一つひとつクリアし、走行性や耐久性では実用に足るレベルに達しました。ただ、これはあくまで試作です。これからは量産に向けた課題解決に取り組まなければなりません」

資金や人的リソースは大手にかなわずとも
中小ベンチャーには熱意と行動力がある 将来の展望

20170314-3本格的な販売開始をにらむ「BATORA」の売価は、2輪タイプが75万円、3輪タイプが88万円。価格設定について尋ねると、「現状はあくまで小ロットでの設定。スケールメリットを生かした量産を目指さなければ」と西尾社長は厳しい表情をのぞかせた。

「この価格は年間300台規模で生産した場合の設定です。工場を作って採算ラインに乗せるのであれば、1000台、1万台は生産せねばなりません……機械部品なら1000台、電子部品なら1万台の生産でようやく安価になるからです。価格を抑えて、より販売しやすくするためには、現状の設定ではまだまだ」

先述のとおり、海外ではスリランカ郵政省一本に絞り、国内では自治体に販路を探っている。展示会などでは積極的に情報を発信しつつも、営業にはリソースを割かないのが西尾社長の信条だ。

「なぜ営業しないのか? 電気バイクはまだ新しいもの。『○万円になったら買いましょう』といった、価格勝負の消耗戦に身を投じるつもりはないからです。環境負荷の低さ、公共性の高さ、ビジネスとしての先見性に着眼していただけるところとお話をしていきたい。『高いかもしれないけど試してみたい、使っていきたい』と、気持ちを一致させてくれる企業、自治体に使っていただきたいと考えています」

神奈川県のグリーンIT活用補助金を獲得して以降、ものづくり補助金や借り入れで資金を確保し、地道に研究開発に邁進してきた。西尾氏を先頭にE・ミニモのメンバーは前を向く。

「5年経って芽が出ないベンチャーは可能性がない。そんなことも言われますよ(笑)。だけど、辞めるのも続けるのも自分たちが決めること。大手に比べたら資金も研究リソースもない。だけど、私たちにはベンチャーならではの熱意と行動力がある。あきらめることなく、愚直に続けていきますよ」

株式会社E・ミニモ
代表者:西尾 達二氏 設立:2011年2月
URL:http://www.e-minimo.com スタッフ数:4名
事業内容:商業用電気車両の開発、完成車両の販売。

当記事の内容は 2017/03/14 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。