「あなただけの縫製工場」がネット上に誕生?
縫製のクラウドソーシング「nutte」の快進撃

IT・インターネット

執筆者: 森 晶  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

「縫えるもの」ならなんでもOK!
質の高い職人と今すぐ出会えるサイト 展開している事業の内容・特徴

20170112-1株式会社ステイト・オブ・マインドが運営する「nutte(ヌッテ)」は、洋服、雑貨類、リメイクなど、発注者が約1000人の登録縫製職人に向けて、ものづくりをオーダーできるマッチングプラットフォームサービスである。もちろん、1点からのオーダーでもOKだ。

オーダーと製作の仕組み、お金の流れを簡単に説明しておこう。発注者がつくってほしいもののデザインや金額、納期などを指定してnutteのサイトに登録。サイトを閲覧して興味を持った縫製職人がユーザーに連絡し、双方の条件が折り合えば案件成立する。職人は期限内に縫製を終えてnutteへ納品し、nutte側での検品後、ユーザーに送付される。ユーザーはnutteに料金を振り込み、その後、手数料を差し引いた金額が縫製職人に支払われるという流れだ。

ちなみに現在、日本で活躍する縫製職人の多くは、主にサンプルソーナーと言われる展示会用のサンプルや海外工場へ大量生産する際の見本となる服をつくっている。nutteには、そういった腕利きの職人たちも登録している。なぜなら、nutteに登録することで、ネットを活用して商売をしている小ロットを望むアパレル系個人事業主、また、自分だけの一着を求める個人など、これまで開拓できていなかった新たな販路を提供してくれるからだ。

2015年2月にローンチし、2016年9月時点で発注者として登録している会員数は1万人だったが、その3カ月後の2016年12月にはなんと1万5000人を突破。そして、登録している縫製職人の数も1000人を超え、今も右肩上がりで増加中だ。何かを“つくってほしい人”と、何かを“つくれる人”のマッチングがnutteを介して毎日生まれている。

サイト上では、1日30件以上の発注依頼がアップをされ、縫製職人はそれらを見ながら見積もりやアピールポイントなどを記載してエントリーしていく。「縫製職人の所得を向上する」「安かろう悪かろうではなく、1点からでもオリジナリティのある質の良いものを届ける」。ステイト・オブ・マインドの代表を務める伊藤悠平氏が描きたい未来だ。

このポリシーが徹底されているためか、安すぎる価格の発注依頼に職人はエントリーしない。結果的に適正価格でものづくりを依頼するという発注者の意識が自然と醸成されており、クラウドソーシングの問題点といわれている「デフレスパイラル」を防いでいる。

利用者だけがただ増えてきているのではなく、客単価も徐々に上がってきており、売り上げは、昨期に対して今期の年商はなんと10倍。nutte は、“つくってほしい人”、“つくれる人”、そして、運営会社のステイト・オブ・マインドにWin-Win-Winの関係をもたらすビジネスモデルとして、好循環を産んでいる。

縫製職人を10年間続けて感じた、
不透明な業界構造と収入の低さ ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170112-2伊藤氏は、昔からアパレル事業を起こすことを夢見ていた。早稲田大学を卒業し、デザイン会社に勤めてはみたものの、夢を諦めきれず、アパレル専門学校に入学。その後、仲間たちとアパレルブランドを立ち上げたこともある。ステイト・オブ・マインドを起業する前は、一般企業に勤務しながら、知り合いから譲渡された縫製事業の運営も手がけ、自身も10年ほど、縫製の仕事に従事していた。

自身が縫製事業を展開するなかで、急な発注が来た時にさばききれず困ったことが何度もあった。しかし、当時は職人ネットワークがなく、助けを求めることができなかったという。また、どんなにたくさん仕事をしても、一つひとつの工程それぞれに仲介業者が存在し、マージンが発生する業界構造のため、下請けである縫製職人が手にする工賃はわずかとなる。時給換算すると1000円にいかないこともザラで、なかなかモチベーションが上がらない。

実際に、縫製職人の平均年収は200万円に届かず、若い職人がどんどん減っている。結果、縫製業界に従事する職人の平均年齢も50歳代と高齢化してきているのが現状だ。「このままでは、国内に縫製職人がいなくなってしまう。この不透明かつ不健全な業界構造を何とか変えたい。労力に見合った報酬を得られるようになれば、若い人たちも縫製業界を目指すようになり、日本が世界に誇る縫製技術の継承にもつながる。だったら、自分がその仕組みをつくってみようじゃないか、と考えました。」と伊藤氏は言う。

伊藤氏は一念発起して、事業計画の作成に取り組んだ。そして、ビジネスプランコンテストに挑戦するなど、アイデアをブラッシュアップさせていった。2015年2月、仲介業者を挟まず、誰もが縫製職人に発注ができるサービスnutteをローンチ。その後の急成長は前項で述べたとおりだ。広告をかけることなく、瞬く間に発注者、縫製職人のアクセスが急増していった。

下請けが搾取されない業界再編への挑戦。
まずは年収1000万円代の職人を輩出したい 将来の展望

最近、伊藤氏が嬉しかったことは、nutteを活用して月収50万円を突破した縫製職人が誕生したことだという。nutteのアパレルマーケットへの浸透が今の勢いのまま続いていけば、伊藤氏が描いた夢は、近い将来本当にかたちになりそうだ。

また、2016年に入ってからは、新たな3つのサイトもローンチしている。「Inspire Box by nutte」は、nutteから生まれたアイテムを魅力たっぷりに紹介するインスピレーションサイト。「nutte meister media」は、登録職人たちの日常や思い、縫製業界の今を丁寧に発信するリポーティングサイトだ。

そして、「and Colors」は、製品染め職人に、服を好きな色に染めあげてもらうことができるサービス。ローンチ当初、染めることができる色は「黒」1色だったのにもかかわらず、発注件数は1カ月で約100件に。その人気ぶりから、現在は全部で6色展開と、染められる色を増やしている。

「今後も、アパレル業界にかかわるあらゆる職人さんたちに、直接、新たなビジネスの窓口や接点を提供し続けていきたいと思っています。」と伊藤氏。

ビジネスとしての計画は、2019年度の上場、そして2020年の海外展開も視野に入れている。伊藤氏の挑戦は、どこまで多くの職人を助けることができるのか――ステイト・オブ・マインドのこれからの挑戦に期待したい。

株式会社ステイト・オブ・マインド(State of Mind, Inc.)
代表者:伊藤 悠平氏 設立:2015年2月
URL:https://nutte.jp/ スタッフ数:15名
事業内容:縫製職人とのマッチングプラットフォーム、「nutte」などの運営

当記事の内容は 2017/1/12 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。