Vol.23「特許権侵害の警告書がきた!さて、どうしますか?」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

○警告書はある日突然やってくる。

製品を販売している事業者であれば、ある日突然、内容証明郵便という形で警告書が送られてくる可能性があります。

警告書には、こちらの製品販売が相手方の会社の特許権や商標権を侵害しているから、製品の販売をやめてくれ、といったことや、場合によっては製品回収や廃棄せよ、といった内容が、特許権や商標権の番号とともに記載されています。
そして、最後に今後の対応について回答するように求められます。

差出人は会社の場合もあれば、代理人である弁護士や弁理士からの場合もあります。

このような書面が送られて来たらどうすればいいのでしょうか?

○最初にすべきことは時間稼ぎ

最初にこちら側の権利侵害の事実の有無を確認する必要があるのですが、そのためには時間が必要です。

期限を切って回答を求められますが、相手も素人でなければ、調査・検討にそれなりの時間がかかることはわかってくれるので、時間がかかる旨をとりあえず回答します。特許権なら1ヶ月くらい、商標権でも2~3週間くらいの時間を確保します。

そして、相手が主張する特許権や商標権が本当に存在するのかを確認します。

出願だけして権利にはなっていなかったり、すでに消滅してしまっていたりする場合があるからです。

権利が存在しない場合には、そもそも権利侵害は成立しません。

では、相手に権利があった場合はどうすれば良いでしょうか?

○権利があっても慌てないこと。権利の内容しだいで対応策はある。

一方、権利が存在している場合には、権利を無視するわけにもいきませんので、次にその権利内容を精査します。

特許権の権利の内容は、「特許請求の範囲」の請求項に記載されています。権利侵害かどうかは、請求項に記載されている内容にすべて当てはまるかどうかで判断します。

もし、自社の製品がすべて当てはまる場合、例えば、自社の製品のほうが相手の特許出願日よりも前から販売していたような事実等がなければ、争っても権利侵害となる可能性が高くなります。

また、すべてが当てはまるのではなくても、製品との相違部分が、特許発明の本質部分でなかったり、相違部分を対象製品のものと置き換えても同じ機能を発揮できたり、といった条件を満たす場合にも権利侵害とされる場合があります。

商標権の場合には、登録商標との類否や指定商品・役務の類否を検討します。
そして、どちらも同一又は類似となれば、権利侵害の可能性が高くなります。

このような場合には、相手方と何等かの交渉をする必要が生じます。警告書を無視すると、いきなり法的手段に訴えてくるかもしれないからです。

一方、請求項の記載内容に当てはまらない場合には、権利侵害の可能性は低くなります。 商標権の場合には、非類似と判断できるような場合です。

この場合には、侵害していない、と回答することになります。あまり余計なことは言わずに、相手方にボールを返すことになります。

○権利者側の本気度がポイント。訴訟事はお互いに大変。

さて、侵害の可能性が高い場合には、どのような交渉が必要でしょうか。

特許権や商標権の侵害では、「知らなかった」は通用しません。過失でも差止請求されてしまうことがあります。

そうはいっても最初から侵害しています、と権利者側の主張を認めてしまっては、相手の言いなりになってしまいます。

そこで、まずは権利者側がなぜ権利侵害と判断したのか、その根拠を知る必要があります。
その根拠を聞き出すために、権利者側と話し合うことを回答します。
場合によっては、非侵害とするための種が見つかるかもしれません。

また、権利者側の本気度を確認することも大切です。

訴訟ともなると時間もお金もかかるのは相手も同じです。できることなら避けたいという思いもあるかもしれませんし、やはり訴訟も辞さないかもしれません。
交渉で何とか済ませたいのか、訴訟までいくつもりなのか、相手の本気度によって交渉戦術を変える必要があります。

訴訟も辞さないような相手であれば、交渉も厳しくなりますが、そうでなければ、その他の選択肢も出てきます。

ここで、自社に手持ちの特許権がある場合には、相手方の会社の製品が特許権侵害していないかどうか調査することも大切です。

もし相手に権利侵害の事実があれば、交渉の際に相手方に逆にぶつけることができます。そうなれば、お互いの現状を認め合う形で納まるかもしれません。

○急がず慌てず

突然、特許侵害と言われても、慌てないことです

対象となる製品が苦労して開発したもの、或いは調達した製品だった場合、急に「やめてくれ」と言われても困りますよね。やっと販売が軌道に乗ったところでこのような警告書がやってきたら迷惑そのものと思うかもしれません。しかし感情的にならないことが第一です。

仮に本当に相手方の特許権や商標権を権利侵害していた場合には、権利者側から差止請求や損害賠償請求されるかもしれません。

自社の製品が市場に認知されたからこそ、相手方の目に留まって警告されたともいえます。まずは慌てないことが大切です。

製品販売前に事前に権利関係の調査をしていれば、権利回避できるかもしれず、警告書が送られる可能性を低くすることができます。

そうはいっても警告書が来てしまった場合には、急がず慌てないことです。

警告書には決まった形式がないので、同じような内容でも書き方はさまざまです。
そのため、書き方によって、相手の知的財産に対する交渉能力や対応力をある程度推測することができる場合があります。

交渉を進めているうちに権利の存続期間が終了してしまいうやむやになってしまうこともあれば、交渉がこじれて訴訟にまで発展してしまう場合もあります。

何れの場合であっても、訴訟に進む覚悟は必要になります。

今後の交渉の進め方について早めに専門家に相談してみることがよろしいかと思います。

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