170万人が利用。謎のWebサービス「忍者ツールズ」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 谷垣 俊介

登録数約170万件の各種Web用パーツ提供サービス
展開している事業内容・特徴

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「忍者ツールズ」というサービスをご存じだろうか。Webサイトを自分で運営していたり、インターネット関連ビジネスを行っている方ならその名を耳にしたこともあるかもしれない。しかし、一般人にはあまり知られていない、知る人ぞ知るWebサービスだ。

「忍者ツールズ」は、国内コンシューマー向けのアクセスログ解析、ホームページスペース、アクセスカウンター、ブログサービスのほか、無料Webパーツを幅広く展開し、Webの運営に必要なリソースをラインナップした17のコンテンツ、サービス群を総称したブランド名である。

数あるサービスのなかで中核をなすのは、アクセス解析ツール。ID登録数は約170万件!BtoCのWebサービスの中では、実は世界でも有数のユーザー数を誇っている。

複雑な解析機能というよりは、ホームページ訪問者やPVなどのアクセス解析を簡単に分析できるような初心者向けの仕様で、そのユーザービリティの高さが人気の秘密だ。

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さらに、注目すべきは「忍者サンドボックス」(月額525円、40日間無料)。コミュニティ内で、画像や小説などの作品を、共有範囲を限定して公開することができるサービスだ。会員には、鉄道オタク・秋葉オタクなど、マニアックな趣向をもつユーザーも多く、このようなユーザーはweb上で、同じ感性を持つ者以外の人との交流を望まない。

そのため、外部の人が作品の閲覧を希望しても、無料で閲覧することはできない仕組みになっている。中にはこのツールを使って、教育機関の講師が受講生に限定してレポートを公開するという使用方法もあるようだ。このサービスを支持する層としては、高校生、大学生、クリエイターなどが多い。

現在、実名性で幅広い層との交流を目的としたフェイスブックなどのソーシャルメディアが普及するなか、あえてクローズドなコミュニティの構築・運営を支えているといえよう。

ほかにも、「忍者アドマックス」(無料)は、クリック単価が高い広告で、なおかつWEB訪問者がもっともクリックする可能性が高い広告を選択し、表示する仕組みを提供している。

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一方、BtoBの主力サービスはSEO対策だ。
SEO業者は顧客のWebサイトやサテライトサイト製作にあたって、質の高いライティングをすることが求められるが、当然ながら多くの労力とコストがかかる。そこで、約270万人いる忍者ツールズ会員に対して記事制作代行者を募集したところ、予想以上の希望者が現れ、現在では10,000人を超える会員が記事制作に協力している。協力者には記事制作の報酬として、忍者ポイントが還元される仕組みになっている。  

このクラウドソーシングを始めたことで、1,000件もの記事をわずか2、3日で作成することができるようになり、SEO対策の低コスト、短納期化が実現した。このサービスは現在、ほかのSEO業者から依頼がくるまでに成長している。

 

世界中に自分を表現することができるインターネットに魅せられた
ビジネスアイデア発想のきっかけ

ninja4「忍者ツールズ」を運営する株式会社サムライファクトリーが設立された2004年当時は、インターネットが急成長し始めた時期である。インターネットさえあれば、いつでも、誰とでもつながることができ、さらに自分を表現することができる点に魅力を感じた創業者は、インターネットを通じて世の中に感動を与えたいと思うようになった。

創業メンバーである仲間は、バンドをやっていたミュージシャンたち。音楽で自分を表現するように、多くの人に自分を表現できる場を提供したいと考えていたという。最初に取り組んだのは、今でも主力であるアクセス解析サービス。Webサイトを立ち上げて広告収入を得るには、多くのユーザーをサイトに集めなければならない。そのためには、自分のサイトの現状を知らねばならない。当時はアクセス解析サービスがほとんど存在していなかったため、まずは自分たちでそれをつくろうと考えたのだ。

同社が開発したアクセス解析サービスは、幸運にも短期間のうちに広まり、急激に大量のユーザーを獲得することに成功した。とにかく人を集めたいという思いで行動していたので、こんな短期間で広まるという予測はまったくしていなかったそうだが、サーバー費用や人件費などは、アクセス解析サービスに付随した広告収入でまかなえたそうだ。

しかし、広告収入が中心の場合、広告主の業況などの外部環境変化の影響が大きくなる。そのため、業績を安定化させるためにクラウドソーシングやそのほかの有料サービスを導入し、売り上げ構成の偏りを改善してきたことが、同社の経営を順調に成長させた要因だ。

ビジネスである以上、自分たちがやりたいことより、儲かることを優先して考えるのが一般的かもしれない。しかし、サムライファクトリーでは必ずしも儲けを最優先に考えてはいないのだという。

社員の意見も尊重した結果、現場発で生まれた商品企画も多数ある。決してトップダウンの指示で開発をスタートしない。こうした自由な開発スタイルが、サービスの柔軟性と多様性を生み、同社の強い競争力ともなっている。

文化に昇華させるほどのサービスをつくりたい

将来への展望

Web業界の流れは速く、半年間も経てば環境はガラリと変わってしまう。思ったことはすぐにやり始めることが大事で、ユーザーの行動を日常的にモニタリングし、機能、デザイン、オプションなどのマイナーチェンジを継続する必要がある。

スマホが急激に普及したことで、パソコンとスマホの用途が急速に分化していき、パソコンはパソコンでしかできない作業に用途が限られていく――。世の中のニーズをくみ取り、これからはパソコン、タブレット、スマホというように、すべてのサービスを各デバイスごとに最適化していく必要性があるだろう。

会員数170万人といえども、ネットの世界ではまだまだ「中堅」規模。これからはfacebookやtwitterのような、ブランド名称がサービスドメインとなるようなもの、「○○といえばサムライファクトリー」となることを目指し、会員規模も一気に数千万人以上を獲得したいと考えている。そして、文化にまで昇華されるようなサービスをつくり、海外にも日本のクリエイティビティを発信していくのが夢だと語ってくれた。


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株式会社サムライファクトリー
代表者:柏木 謙一 スタッフ数:59名(2011年4月現在)
設立:2004年5月21日 URL:http://www.ninja.co.jp/
事業内容:
アクセスログ解析(国内コンシューマー向けアクセス解析シェアNo.1)、ホームページスペース、アクセスカウンター、ブログサービス他、無料Webパーツを幅広く展開
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当記事の内容は 2012/6/7 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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