開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
朝から降っていた雨が急に止み、突然空が明るくなるという不思議な天候だった当日。
トーク・セッションは、コーディネーターの岸原氏の「今日の天気はいろんなことが同時に起こる今のモバイル業界を表しているようです」と言う挨拶から始まった。
モバイルのビジネスモデルが成立するようになったのはこの10年ほどである。日進月歩の技術革新とキャリアの戦略の中、試行錯誤を重ねて業界で勝ち残ってきたパネラーたちの本音が見え隠れするセッションとなった。
モバイル業界のこれまでと、モバイル業界の現在
川上:今、モバイル業界っていうのは過渡期にあると思うんですよね。いわゆる公式サイトの仕組みが崩れてきて、インターネットとモバイルの融合が始まっている。 一方ではモバイルだけで成熟したり確立したりするジャンルっていうのもあるんですけども、おそらくPCとケータイが融合することはあるだろうと。 真田:これからのモバイルビジネスの戦法と方向性について、総論的なところで復習しますと、携帯電話のビジネスモデルというのは日本独自の特殊なビ ジネスモデルが優れていたから発展してきたんだと認識しています。どこが優れていたかというと3点あって、1点目は公式サイトというのが当初ほとんどのト ラフィックをしめていて、公式サイトになるには審査を通らないとなれない。したがって審査を通ったらある種独占的に特殊な地位を得ることができた。おかげ で審査に通りさえすれば競合が少ない、ベンチャーにとって一番重要である参入障壁がしっかりしていた。2点目はケータイの場合はサイトを作りさえすれば初 期においては通信キャリアのメニューから送客をしてもらえて、集客・広告に困らなかった。3点目が課金の問題です。別にPCでも課金はあったわけで、唯一 違いは参入障壁があるかないかだけの違いです。キャリアが必死になって参入障壁を守ってくれたおかげでぬくぬくと成長することができたというのが携帯コン テンツの業界でした。着メロがなぜ儲かったかっていうと月額課金制だったからで、パーダウンロード課金をやっている国では全く儲からなかったわけです。こ れからは今までのような特殊環境の中でぬくぬくと育っていくということはできなくなってきたというのが、現時点のモバイル業界の立ち位置だと思いますね。 公式サイトモデルは終わるのか?
岸原:これまでモバイルは、クローズドモデルで成長してきましたが、世の中の流れでオープン化の方向に動いていると。カレシーさんは、公式サイトの モデルではなくて、すでにモバイル2.0というかオープンの形なところから参入されてきたと思うんですが、そういった部分で携帯電話のこれからの方向性と いうか現在サービスの中でいかがお考えでしょうか? カレシー:もう公式サイトモデルは終わりですね(笑)。これからはQRコードで自分のユーザーを誘導して、モバイルコマースを行っていくということ だと思うんです。公式サイトは今までのクローズモデルではうまくいったんですけど、参入障壁があると小さな会社はどうしようもないんですよ。 川上:今のキャリアさんっていうのは新しい携帯電話機を開発してそれを新しい携帯電話機の魅力で契約者数を増やそうという戦略をとっているんです
ね。新しい携帯電話に着うたフルをサポートしました、FLASHをサポートしましたって機能で勝負するんですよ。携帯電話の進化はゲーム機によく似てい
て、ユーザーの密度は下がっているにも関わらず年齢層は拡大して、売り上げは増えている。なぜかというと1年ごとにユーザーが1歳年をとっていて、昔は
30歳の人はゲームやらなかったんですけど、今の30歳はゲームをやるんですよね。そしてコンテンツの製作コストが上がってきて、なおかつマーケットが細
分化されるというゲーム業界と同様のことが起こっている。だからといって公式サイトのモデルそのものが間違っていたとは僕は全然思っていませんし、実際年
齢層の拡大もありますからマーケットは増えているんですよ。 真田:公式サイトが実際に終わるかっていうとそんなことはなくて、例えばテレビの多チャンネル化で衛星放送、CSだBSだっていっぱい出てきても地 上波見る人が大半なわけですよ。探すのが面倒な人、探し方が分からないエンドユーザーというのは常にどの業界にもいてその人たちはわかりやすく公式サイト にいくわけですから。 カレシー:モバイルもWEBの変化と同様、ブランドやサービスを探すためにキーワードを入れて検索する方向になっていて、出されてるコンテンツを見 るだけっていうのはどんどん消えていくんじゃないかと思うんですね。公式サイトがあってもユーザーを囲い込むことが難しくなってきたってことなんです。ど うやってユーザーを囲い込めばいいのかっていう問題なんですね。 「能動」のPC文化、「受動」のケータイ文化そして話はドワンゴの新規事業であるニコニコ動画の話に。 川上:動画って見るだけなんですよ。だからマーケットはめちゃめちゃ大きくなるだろうと思っていて、そこのマーケットをまずとりにいくっていうのが目的なんです。
真田:それは非常に正しいと思います。能動的じゃなくて受動的な人が多いっていう話なんですよ。書き込む人と読む人とどっちが多いっていったら、常 に読む人の方が多いわけですよ。やはりネットの文化っていうのは自ら検索して能動的に見にいく文化なんです。ケータイは、能動的に動かなければ楽しめない というコンテンツではなくて、勝手に週1でメールが送られてくるからなんとなくメールを見るというような、受動的な使い方をしているユーザーが非常に多 い。PCの文化に慣れた人がケータイ向けのサービスを作るとどうしても能動的にアクションを起さないと何も発生しないというサービスモデルを作りがちなん ですよ。 川上:転送の文化ですよね。 真田:そう。自分から能動的にとりにいく文化じゃなくて、転送されてきたものを見て、面白かったらそれを転送するっていうのが今までのケータイの文化の流れ。 岸原:PCはWEB2.0ってことでユーザー参加型が次にくるだろうっていわれてるんですけど、モバイルの場合は、携帯電話であげて携帯電話で見るっていうモデルとは違う方向にいくんでしょうか? 真田:まず、携帯だけで簡潔する2.0型っていうのはありえないだろうと。なぜかというとケータイって見る側オンリーの人が多くて、入力側の人が PCに比べて非常に少ない。だからニコニコ動画みたいにまず入口をPCに持っていって、次にそれが携帯から見れるっていう出口を携帯側に設けるとすればそ れは非常にヒットするんじゃないかなという気がしますね。 カレシー:モバイル2.0ってあまりにも狭くとらえることが間違いで、モバイルって結局「モバイル+WEB」じゃないですか。モバイルだけとか WEBだけっていう時代じゃないんですよ。だからモバイルの入力側のヘビーユーザーは20代、PCの入力側は30代っていう切り方をしても、結局今の20 代ってこれからの30代なわけで。だからそこはシームレスに、WEB2.0 のモデルをモバイルでも生かすっていうのがモバイル2.0だと思います。 川上:僕はモバイル2.0っていうのは全くわからない、実感として理解できない派なんです。僕はPC文化の人間なんですよね。モバイルだけでPCを必要としない人たち、そういう人たちの考えは正直わからないんですよ。 真田:これからケータイで起業しようと思っている人がこの中にいるのであれば、そこはビジネスチャンスなんですよ。所謂イノベーダーだったりアント レプレナーだったりというのはPCユーザーが多くて、ケータイユーザーの気持ちになって考えられる人が非常に少ない。だからもしそこがわかる人であれば先 んじれる可能性があるわけです。 岸原:携帯電話だけで起業しました!っていう人が出てきたらそれはすごいこと考えてくれる可能性があるかもしれないですね。 進化し続けるモバイルの可能性。
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カレシー:私もyoutubeとかflickrとかの動画や写真を見たりしますが、そういう意味のない、これはビジネスにならないだろうっていう参 加型の自発的な部分、膨らんでいるのはそこなんですよね。だからそれをどうやって活用すればいいのかっていうのをうまく考えるのが大切なのではないかと。
真田:携帯はPCと違ってアメリカの大手と対決しなくていいという点は優れていますし、ハードウエアデバイスとかおサイフケータイとか巻き込んでい ろんな変化が起こっています。それとネット上で3年後何が流行るのかは、なかなか予測がつきませんが、ケータイの場合、キャリアがこのシリーズからこれを 搭載って決めたらメーカーはいっせいにそれを搭載するので、3年後にどんなケータイが何台出荷されるかというのはだいたいわかるんですよ。その上で必勝モ デルが考えられれば勝者になれると思います。
モバイルのビジネスモデルは今まではある程度成功パターンの中での展開だった。しかし、今後は多様な形での展開が予想される。ビジネスモデルが大き く変わろうとしている中で、パネラー達が語ったように、全て携帯でコミュニケーションをとっている、というような新世代の起業家が出現することを期待した い。
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KLab株式会社 2000年、KLab(ケイ・ラボラトリー、当時)を設立、代表取締役社長&CEOに就任。 |
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株式会社ドワンゴ |
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株式会社NAVIBLOG |
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コーディネーター |
ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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