開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
牧:まず、経営しておられる会社の概要を。
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住谷:「キッザニア東京」は、スポンサー50社がブースを設けて、そこで子どもが職業体験できるという施設。今後、政令都市への展開や、地方都市へのライセンス提供などをしていきたい。
藤本:デジタルハリウッド大学院、デジタルハリウッド大学では、起業家や、ITおよびコンテンツビジネスを目指す人材を育成しています。ITとコンテンツ
の知識で、例えば「着メロ」などのサービスができる。今後、こういった分野で活躍する人を育てていきたい。インキュベーションも10社ほど手がけていま
す。起業家と学生をコラボレーションさせて、起業支援をしていきたい。
舩川:デジットは、日本最大のインターンシップ支援企業。毎年、3万3000人の学生に対して支援を行っています。そのサービスは4段階あって、最初の
「とびらを開く」は、社会に出る前に仕事の喜びなどを知ってもらうガイダンスのこと。次の「鍛える」はインターンシップの提供、次の「送り出す」は就職支
援、最後の「背中を押す」は、社会人になってからもキャリア形成の機会の提供です。
近藤:ネクシィーズは、一言でいえばプロモーションマーケティングを手がけている会社。スカパーやWOWWOW、ヤフーBBなどを日本で一番普及させてきた会社で、ものによっては80%のシェアがあります。グループ会社が10社あります。
牧:慶應のSIVアントレプレナー・ラボラトリーは、大学発ベンチャーのプラットフォームづくりを行っています。インキュベーション、ネットワーキング、
アントレプレナー育成、研究の4つの柱で活動しています。大学の予算はゼロで、すべてスポンサーシップでまかなうという「教育のビジネスモデル化」を実践
しています。
牧:次に、アントレプレナーシップと人間力をどう育てるかということについて。近藤さんは、社内に対してやる気をどうマネジメントしておられるのでしょうか。
近藤:結論から言えば、人は説得しても動かない。納得したら動く。今でもよく社員と食事に行くし、誕生日には必ずメールを送ります。心と心のつながりを大
事にしているから。そしてステージとチャンスを積極的に与え、徹底的に期待します。具体的には非常に早く役職者にして背伸びをさせる。あらゆる事業部は
チーム制にして、自分たちで成功体験をつくらせます。教育で人は変えられない。教育とはきっかけを与え続けることだと。それがリーダーの役目だと思いま
す。
牧:学生を見ていると、インターンシップで本当に育っているのか疑問に思うこともあります。どういったインターンシップが役立っているんでしょうか。
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舩川:インターンシップには、アルバイトと同様、一定期間働いて働きぶりの評価も得る「実践型」と、夏休みの数日、グループワークなどを中心に参加
する「体験型」がある。体験型だと、ちょっとかじっただけでわかったつもりになるので、実践型を重視しています。一定期間、未体験の世界で揉まれることに
より、想像とは違うことに触れて気づきや好奇心が生まれる。受け入れ側の企業が、インターンがステップアップしていく階段を用意していると、「やればでき
る」という自信や意欲につながります。
牧:学生がこんなに変わったというエピソードは。
舩川:いわゆる「オタク」だった筑波大学の院生が、自分の技術をインターンシップ先の会社から驚かれたことを機に自信を持ち、プレゼンができるようになっ
て、リアルのコミュニケーションの重要さに気づいたというケースがある。技術だけじゃなく社会性も身につける必要があると。
牧:デジハリ大学院では、アントレプレナーをどう育成しようとしているんでしょうか。
藤本:起業については、身近な事例で学ぶことが重要。本より生。自分自身が「くやしい」と痛感することが大事。自分より下にいると思っていたヤツにあっと
いう間に抜かれるというのも現実にはあるわけです。優秀な人でも、性格が悪いと相手にされないことがわかる。実際に出資話も飛び交う中で、えげつないこと
もあるわけです。そういう環境をつくることが大事。
牧:キッザニアで提供されているプログラムの特徴とは。
住谷:「三つ子の魂百まで」といいますが、幼少時の体験が人格形成の基礎になる。本で得る知識よりも体験。そして、学校や家庭における教育の問題より、地
域社会の力の希薄化を問題に感じてキッザニアを立ち上げたわけです。昔は地域の知らないおじさん、おばさんにほめられたり怒られたりして育てられた。今は
幼少時の他人との接点が限られています。キッザニアでは、知らない子同士が職業体験をしながらコミュニケーションをし、マナーも学ぶ。まさにリアルな社会
の縮小版です。
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藤本:高校の時、学園祭で模擬店を出して盛り上がりましたが、それが最初の実体験のように思います。ぼくはわんこそばを1日で100万円売ったことがある(笑)。その経験は生きています。
舩川:お金が得られるんですよね。
住谷:働くと「キッゾ」という紙幣がもらえ、使うこともできます。施設内で遊ぶ時はキッゾで払う必要があります。お金の価値、お金がどう動くかを体験できる。
舩川:大学生版をやりたいですね。
住谷:キッザニアで、いずれ高校生、大学生と形を変えて職業体験や会社をつくるという体験ができるものも考えていきたいですね。
牧:ここで整理のため、皆さんの中で「アントレプレナーシップ」とは何なのかという定義と、それをどう育てるかについて聞かせてください。
近藤:今は情報が多すぎて、考えすぎて動けない人が多い。動きながら考える、勇気を持って挑戦する。それがアントレプレナーシップの基本では。また、アン
トレプレナーは社長のことと思われているが、専務も部長もアントレプレナーであるべき。10人の部下がいる社長と、1000人の部下がいる部長とではどっ
ちが偉いかと考えればわかると思います。
藤本:起業する人は増えましたよね。僕のように学生で起業するなんて人はゼロ。変なヤツだと思われていた(笑)。今ではスター経営者も出てきたし、そういう環境が大事だと思います。
舩川:定義は「チャレンジして新しい価値を見出している人」でいいのでは。どんな分野でもいい。スポーツ選手もそう。教育でその背中は押せると思います。
近藤:大人がどう基本を教えるかが大事。起業は人生賭ける苦しいものだけど、生きがいになるよと。
住谷:何かやろうという気持ちが大切で、その「何か」は「もうかりそう」なことではなく、「好きなこと」が大事だと。やりたいことをやることが第一。起業は楽ではないが、乗り越えられるのは好きなことだから。
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近藤:よく学生から「何を選んだらいいかわからない」と相談されます。好きなことを選ぶのは大事だけど、まずは目の前のことに本気になって取り組んで活躍できないと、何やってもダメだと思うんです。
牧:ありがとうございました。ではQ&Aに移ります。
Q:切磋琢磨が重要なのに、平等教育になっていて抜けてしまっていると思います。それで就職の時、やりたいことが見えてこないことに結びついているのでは。
住谷:世の中にはいろいろな仕事があっても、学校を卒業するまで実感することはないでしょう。大人だって1つの会社で1つの仕事しか経験しない人もたくさんいる。いろいろな仕事があることを子どもが肌で感じることが大切なのでは。
藤本:大学経営は法律の縛りが多いが、小・中学校はなおさら。学芸会の主人公にみんななれる学校もあってもいいけど、厳しい学校があってもいい。選べればいいと思います。
近藤:青春先生がいなくなった(笑)。人は力のある人についていく。“上から目線”で教える大人がいてもいい。
舩川:競争は手段。ずっと同じレベルにいていいわけではないので、競争は大切だと思います。
Q:住谷さんにお聞きします。企業人なので社会に近い大学生を対象に考えるのかと思いましたが、社会に遠い子どもに目を向けたのはなぜですか?
住谷:学校教育だけでなく、小さいときからの育ち方が大事だと。日本人とアメリカ人の違いは「生きる力」への向き合い方。何でも自分でやるという生
きる力を育むのが教育の原点だと思います。システム化された社会は役割分担ができあがっていて、釘1本打つチャンスもない。アメリカでは社長が客にコー
ヒーを入れますが、日本では秘書が入れる。
舩川:大学生から始めていては遅い。学校から社会にはレールがつながっていないことを早くから教えないと。アメリカでは一番優秀な学生が起業家を目指し、一番下の学生が大企業や公務員になるが、日本は逆。学生は知らないんです。
Q:シニアへの起業教育についてはどう考えていますか。今は人材不足だし、技術や経験のあるシニアが輝く姿を見せればいい影響があると思います。
住谷:同感。いいモノを持っているシニアが活躍できる場所を用意することが大事。活躍
したくても受け皿がない。一方で、日本ではボランティアが浸透していません。ボランティアへの参加も考えてほしいですね。
Q:人は白紙。教育でどうにでも変わる。教育を通じてどんな世界をつくりたいと思っていますか。
舩川:世界平和のために起業しました。世界中の人たちがお互いに高めあう世界が自分のゴールです。
近藤:誰しもが、がんばっている人、立派な人になりたいと思うでしょう。人の尊さとは、自分で考えて自分を改められるところ。そこを追求していくのが人間だと思います。
牧:夢を持っている人をどれだけ増やせるか。いい世界とは、いろいろな世代の人が夢を語っているところだと思います。思い出話ではなく。
Q:大学とは知を探求するところ。社会とのパイプが必要なら、株式会社大学のほうがいいように思いますが。
藤本:学問別にいろいろあっていい。歴史や文学など変わらない分野は研究者が教えるべきでしょうが、ITやコンテンツのように1年で変わる分野は実
務家のほうが正しい情報を与えられる。でもそれは法律ではNG。小・中・高校もがんじがらめ。消費者がもっと選べるように、そこにメスを入れるべき。
牧:いい知、いい研究とは、実践に役立つもの。アメリカでは学んだことをすぐ実践に生かしている。両立できることが大切。学生の気の持ちようでも変わると思いますが。
Q:インターンシップ中ですが、本気でやらないと意味がないと思っています。しかし、インターンは報酬に差がつきません。評価が大切なのでは。
近藤:その通り。努力した分は還元されないと。当たり前のことですが、それがなさすぎる。
舩川:がんばって上っていける階段が必要です。
Q:どんなに厳しい境遇でもモチベーションが高い人もいれば、恵まれている環境でも低い人がいます。社長よりもモチベーションがある社員もいますが。
近藤:モチベーションが低い人をどれだけ乗せてあげるかは大切。ただし、きっかけは与えても変わるのは本人。くやしい、苦しいことを乗り越えて強くなるのは自分次第。ただ、上司がそういう環境を与えるのは大事なことだと思います。
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牧:最後に、未来の新しい学校をつくるとしたらどんな学校か。未来型教育ビジネスの形について一言お願いします。
住谷:「体験のススメ」。学問と体験のバランス教育が必要だと思います。
藤本:生涯教育。農業や漁業などリアルな分野がチャンスあるのでは。
舩川:すべての分野におけるヒーローづくり。そして、社会システムとして「感謝のバウチャー」を制度化したい。
近藤:「育てる」より「鍛える」だと思います。
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株式会社キッズシティージャパン |
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デジタルハリウッド株式会社 |
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デジット株式会社 著書「今どきの若者は使える」(明日香出版)。YEO(世界若手創業社長会)第10期会長。 TV・ラジオ等各種メディア登場、講演・講義(東大早慶他各大学、経営者会)多数。 |
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株式会社ネクシィーズ さらに2年8ヶ月後の2004年11月11日、東証一部にも上場し、偉業の快挙を果たした。 テレコミュニケーションを駆使したマーケティング手法が注目を浴びており、時代のニーズを追求。 早稲田大学や東京大学・一橋大学などで講演活動も積極的に行い、若者の心を持ち前の情熱でリードし続けている。 JAPAN VENTURE AWARD 2006 において最高位の賞である経済産業大臣賞(ジャパンベンチャーアワード)を受賞 |
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コーディネーター SIVアントレプレナー・ラボラトリー(http://www.siv.ne.jp/)事務局長 2000年3月慶應義塾大学環境情報学部卒業。2002年3月大学院政策・メディア研究科修士課程修了、同年4月より大学院政策・メディア研究科助手(途中一部環境情報学部助手を含む)。 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)をベースにしたベンチャーインキュベーションプロジェクト「SFCIncubationVillage」を創設。以来、事務局長として、全体の企画・運営のコーディネータとして活動中。 三菱地所株式会社ビル事業本部 街ブランド企画部 ビジネスインキュベーションユニットパートナーを兼務。 |
ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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