開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
凄まじいスピードで進化を続けるエンターテインメント業界。まさに、その業界を牽引すると言っても過言ではない4人の男たちが、日本という枠にとらわれず、世界を見据えたグローバルなビジネス展開について議論を交えた。
テーマは「多様化するエンターテインメントの可能性」。その熱いカンファレンスの様子をレポートしよう。
日本独自のエンタメをつくり、世界に売り込もう。
野津:ゲーム業界は、海外で販売するのは当たり前のこと。輸出額にしてみても2300億円ぐらいありますね。日本から出ているニンテンドーが開拓し てくれたんですが、ソニーコンピュータエンタテインメントもワールドワイドに組み立ててくれたというのもありますね。アメリカ、ヨーロッパで売ろうという のは組み入れられるのはゲーム業界で普通のことですよね。 浜田:いわゆる国内での消費量よりも圧倒的に多い。 野津:日本が1とするとヨーロッパが2、アメリカ3~3.5ぐらい。今まで日本のゲームがあんまり受け入れられていなかったのですが、脳トレがミリ オンセラーになりました。日本人らしいゲームがアメリカで売れている。ただし、逆は難しいです。たとえば、X-BOXとかはかなり苦戦しています し・・・。 浜田:海外のゲームが売れにくいことは何か訳があるのですか? 野津:文化感が非常に左右すると思います。アメリカの会社も日本のゲームのいいところを取って、ローカライズしていく。親和性は高まっている、という意味でも、日本の作品は十分に戦っていけると思います。
浜田:国内マーケットで売れて、世界で何十倍にもなって売れるというのは、非常に珍しいです。 野津:日本人らしくアプローチしていけば、雪が解けるように、確かに少しずつ刺さる。 浜田:逆に、海外市場とまったくコミュニケーションしていない感がある音楽業界はどうですか? 左舘:音楽業界が圧倒的に不利なのは、言語が違うというところです。音楽や映画はビジュアルなのでどこかで吹き替えや字幕っていう手段があるんです よね。でも音楽は、訳して他の言語で歌うことで、アーティスト性が崩れてしまうのです。日本の音楽が誰かを積極的に輸出していけるかというと難しい。不可 能に近い。音楽は絶対的ヒットの基準が英語ですね。ただ、音楽は日本が大きな消費国なので、音楽も2,3位を争うという感じでしょうか。日本から発信する 音楽に関するビジネスというのは、十分チャンスがあると思います。 浜田:アジアマーケットはどうですか? 左舘:アジアはドメスティック性が強いので、中国は中国、韓国は韓国のKポップがはやっています。各々の言語のものがはやっていますから。今のところはパフィーみたいにアニメを引っ掛けて作るのはいいでしょうね。そうでもしないと僕は難しいと思います。 浜田:思うんですけど、サブカルは民族性とか国民性とか重視されないけど、宇多田ヒカルなんかが出ても日本人が何で英語で歌っているの?というのが あるよね。日本人がいくら英語で歌っても訛っているし、外国人がいくら日本語で歌っても訛りがありますよね。やはり、いかにローカライズで成功させるかっ ていうこともありますよね。
石川:ひとつ思うのは、うちが今「アフロサムライ」というのをやっているんですね。アフロの黒人がサムライになって、バックは日本の景色だけど、登
場するのは全部外国人で、キルビルみたいに復讐をしていくっていうストーリー。で、それは基本的にハリウッドで最初に売り込んで、初めスパイクTV、バイ
アコムっていうのがアメリカにあるんだけど、アメリカの9000万世帯くらいで放送されて視聴率もとてもよかったんです。次のシリーズつくろうかとか実写
版も進んでいるんですが、まさに言葉の問題を払拭するためにどうするかというと、黒人のヒーロー的な役者さんがいるんですが、彼が黒人でアフロサムライを
やるのは俺しかいないっていってくれて一緒につくろうってことに。日本発のものなんだけど、ハリウッドに持っていけるっていうことで売れた。思ったのは、
やっぱりエンタメはローカライズなんです。文化性が非常に強くて、すごく重要。で、海外で受けたので、日本では5月からWOWWOWで放送予定です。ご期
待ください。 浜田:日本のクオリティをもっていって勝負する。そこが大きなところと思います。たとえばアメリもそう。『アメリ』は日本でヒットして、アメリカに 渡ってまたヒットしてといった感じ。これ国内でつくってなくても、日本人が見て日本人にヒットしたものっていうのは強い。そういう意味では映画界ではどう ですか?インディペンデントな作品を先に買い付けてっていうのは。 叶井:ごくまれですよね(笑)。僕も13年前に会社員として映画会社にいたんですが、その中でヒットしたのは『アメリ』ぐらい。ずーと年間15本く らいあたっていましたが、12年目にしてやっと『アメリ』と出合えたわけですから。他のインディペンデント映画会社の人たちに聞いても、インディー系でい うとあたるのは10年に1本。 浜田:逆に海外で作って日本に持ち込むよりも、国内でつくって持って行ったほうがもうかる? 叶井:いや、それもまだ熟していないんですよ。洋画と邦画は、去年から邦画の方が20数年ぶりに上回ったといいます。海外に対して日本映画を売り込 むというのもありますが、積極的に海外が日本映画を買うということはありませんね。あってもホラーぐらいですかね。買ったとしても向こうのケーブルテレビ とか規模が小さい。僕も尊敬しているプロデューサーのイッセイさんという人がいるんですけど、日本のプロデューサーで一番すごいと思うのは、彼ですね。彼 は『呪怨』という映画をハリウッドに持ち込んで、それをリメイクして日本人初の全米1位になったりね。でも、日本でそれをやってもあたらない。ローカライ ズすぎてしまったのかもしれません。今までない可能性を広げたのは確かですけどね。日本のホラーが怖いっていうのを、アメリカや各国に浸透させたのがすご いと思いますよ。 浜田:みんなはエンタメをしようと考えると、自分が何をしようか考える。そうすると、自分でつくるとヒットは少ない。海外のもの買うとき、かっこい い日本人をどうつくりたいか。言い値でそのまま買ってきちゃう。ルクセンブルグと日本人とユダヤの血が流れている左舘さんに聞くんですけど。ルクセンブル グ人は商売がうまい。パブリックエナミーを買ってきて、なんでそれなんですかと聞いたら、 左舘:僕らは日本人だけをターゲットにしていない。島国でしょ。イギリスと共通。イギリスはマーケットの規模が小さすぎる。日本は完結している。成功にたどりつけるのが悪いほうに出ている。もっと島から出ていかないと。 浜田:今後国内のマーケットが延びていくわけじゃない。いいものもつくれない。 叶井:日本の限界は2000億円って決まってますからね。興行収入含めて。 石川:それと、究極のビジネスは人脈が大切ですよね。 野津:アメリカ・サンフランシスコでパブリッシャーやっている人が50人近くいて、コミュニティできている。ただ、もちろん会社の看板はあるけど、 個人が責任を持って仕事をしている。これからのグローバル化を見るとマインド持ってやらないと厳しい。アメリカの某大手パブリッシャーがサイドビジネスで ゲームのブローカーをやっていて、日本の競合会社に売っている。自分のビジネスのためには、日本のいいコンテンツを流したい。個人のバイタリティーもって いて、個人で勝負している。 石川:メディアコンテンツビジネスって、固有名詞が大事。自分の名前をブランド化することが大切ですね。 叶井:人が移るでしょ。個人でそれぞれ仕事する人多いです。
左舘:彼らは売り込むのがうまい。教育の問題もあるでしょう。 石川:海外はベンチャーキャピタルが出資。そしてベンチャーキャピタルは、投資の後に経営陣を引っ張って来る。外から引っ張るのをやる人はいない。コンテンツは監督、会社。 浜田氏がまとめたのは、仲良しクラブではだめで、重要なのは人脈。人脈を間違うと、権利が取れないし、売れないということ。それに加えて重要なの が、世界中どこでも契約書が必要になり、これをおろそかにすると、最後に足引っ張られるので、慎重におこなってほしいというアドバイスがあった。 デジタル化の促進によって生まれる流通拡大とビジネスチャンスの可能性浜田:これから参入する上でチャンスがあるのはデジタル化。デジタル化って私が映画業界に入ったのもそう。HPをタイトルベースでつくりませんか? でも、最初はつぶされましたね。けれど、だんだん認知されていく。ユーチューブって技術売っている会社。あれはエンタメ。ここのデジタル化がもたらすビジ ネスチャンスの可能性を教えてください。 左舘:今は、CDを店頭で売ることから、ダウンロードに置き換えられました。音楽は頭打ちです。ウェブ=タダ。半分悪い。いいのはエンタメに戻る。消費が下がるけれど、ライブに行く人増えているので、エンタメは以前の形に戻るのではと思っています。 浜田:デジタル化して売れるアーティストは、ライブがうまくないと売れない。好きなアーティストは身近に接していきたい。ライブなら、定期的にユーザーとの距離感が近いですから。 左舘:もうひとつよくないのは、映画が制作費違うけど、すべてがインスタントになりすぎた。ステージ上でやっていることと、映画は映画館。リアルに行われているのと、パッケージとは差がある。加工されているものが世に溢れている。 浜田:ゲームってライブ感出しにくいですよね。オンラインゲームはあるけど…… 野津:面と向かってのライブ感は難しい。ゲームは2つ大きく変わりました。製作コストが、パッケージ製造費20%、流通費が25%だから半分で出せ る。制作にもっとかけられる。お金の流れが依然とは変わったんです。アドバゲームを企業に商品のブランディングとかに使いましょうと持ちかけていて、ユー ザーは今までお金を払って遊んでいたけど、それを利用すれば無料。そのコストは企業が出しているんです。われわれは技術を提供している。アメリカのナビス コや、クラフトなど大手企業は、CMを35%減らしてネットのコンテンツを300本ほど用意しました。キッズに数百万ダウンロードされているんです。コス トパフォーマンスは50~,60倍違った。日本のコカコーラはやっている。企業のPR戦略。CMはやらず、ブランディングのためにコンテンツを使ってい る。音楽化しだしてブランディング。 左舘:コンテンツを使うと企業イメージがつきやすい。企業が思うイメージをクリエイトするのが現在のスタイルです。これからは自分たちのイメージを 広めてくれるコンテンツにお金をだす。コンテンツはあたればお金を生む。TVCMはお金を生まないんです。ブランディングをしつつ、下手すれば投資して儲 かるかもしれない。コンテンツの力を企業は利用していくでしょう。そして僕らはそこに乗っかるのが未来の形かもしれない。 石川:7~8年前に流行り始めたコンセプトで、モノを売るのでなく、消費者はモノ買うのでなく、エクスピリエンス。コモディティ(日用品)ほど、 買っていくための自分の生活の仲での買う経験が、自分が楽しんでいるか、エンタメかどうかが購買行動の重要なものと言われ始めました。
叶井:そして、エンタメの仕事をしている人はエンターテイナーでないとだめだよね。映画館があて、そこに人を呼ぶ仕事。予告編をつくったり、イベントやったり、そうしてお客さんに映画を見に行くまでの道筋を楽しませる。いわゆる自分が楽しめなきゃだめなんです。 石川:デジタル化でいうと、オンラインゲームがおもしろい。ゲームは売るもの。月額課金かパッケージを買う。いまはただ。ただで20万人入ってアイ テムを買う人が5%いる。その人たちの中でも一番使っている人は、月額30万円使っている人も。これがデジタルなんだなと思いました。95%はただで利用 している。でも、5%の人は時間を買っている。それで強くなれる、差別化できる。30万円はどんどん強くなっていきますから。RMTでヤフオクに売ってい る日ともいるらしいですよ。 デジタル化によって生まれるメリットは、業界に参入しやすくなったということ。そして、ユーザーの時間を占拠するか、いいコンテンツを作り続けるこ とが大切。量産化、ユーザー同士でコンテンツをつくらせる、最高におもしろいものを高額でもいいからつくって、世界をマーケットにするなど、可能性は次々 と膨らむ。もう既にエンタメに入っている人も、デジタル化を使わない手はないと、浜田氏はまとめていた。 |
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株式会社インディソフトウェア |
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株式会社エンタク |
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株式会社GDH 91年、東京大学理学系大学院物理学専攻修士課程修了。95年、欧州経営大学院(INSEAD)MBA取得。 |
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株式会社トルネード・フィルム |
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コーディネーター |
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