開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
金融のフィールドでそれぞれに活躍する4人のプロフェッショナルが、「ファイナンス」の未来について語らったこのカンファレンスでは、日本における金融の現状などについて、アグレッシブなトークが展開された。
セッションのメインテーマは「金融大競争時代の金融イノベーションとは」。
厳しい現状が浮き彫りにされる一方で、大きなチャンスを感じさせた。
日本の金融業界は、人材の流動が激しく、システム自体も整っていない。
木村:まずは日本と海外の比較から始めたいんですが、アメリカから見て日本の金融はどう見えるんでしょうか?ホリエモンの件も含めてお願いします。 大澤:アメリカでは、ホリエモンが逮捕されたとき、新聞の一面に出てましたね。ある意味日本のネット業界のシンボル的な存在でアントレプレナーの代表だと。まあ、すぐに沈静化しましたが。 木村:それはリスクマネーを出すだけの土壌がないということですか? 大澤:まず、アメリカ、ヨーロッパについてご説明しますが、お金を出す側のLPでもお金を預かる側のGPでも、それを扱う人材はほとんど変わらず、 同じ人が10年、20年やっています。そういった人材が流れていかないことで、プライベートエクイティーのライフが長く、1回お金を預けることになると、 5年、10年待ってその結果を見るわけです。長い間お金を預けるに値するだけの実績がないとダメなんです。そういった土壌があって新たな商品が出てきたり ハイブリッドな形式のものができたり、いろんな形でプライベートエクイティーというものが生まれてきていると。日本の機関投資家を考えると、その会社の社 員なわけですから、部署替えで人材が流動する。知見や経験値など、個人に依存する実績が継承されないので、底が浅くならざるを得ないんです。
松本:日本の金融業界は、制度の面でも世界的に見るとひどいですね。まず、目的が不明確なんです。金融には、国策としてイメージ持たなきゃいけない のにイメージが一切ない。アメリカは借金して世界中からお金を集めて、エクイティーとしてやっているわけですし、イギリスは世界中から優秀な金融陣を集め て、プロ市場をつくっている、世界の中でもプロの間でのマーケットをつくり、雇用も生まれ、税金も落としてもらうというモデルをつくったわけです。日本で は何のために金融があるのかというイメージが皆無ですし、外国資本を入れることを非常に嫌いますよね。 木村:日本では、買われちゃったら危ないという意見のほうが強いようですが。 松本:もともと日本はFDIという外国からの投資が2?3%。アメリカ、ヨーロッパ、イギリスでは平均20?30%です。日本はこれを少しずつ上げ
て行かないといけません。なぜかというといろいろな形でいろんなアイデアを持ち込むことには、お互いにメリットがあるわけです。日本の将来は少子高齢化で
だんだん資本が小さくなってしまうから、外国の人を入れるのが嫌でも、資本は入れて知恵を借りるという国策は立てなきゃいけないと思うんです。 ビジネスチャンスは、限られた人を対象とする小さな商品にある木村:グレーゾーン金利の廃止についてですが、個人の債務者を救うために金利を下げる目的だったのに、結局、金利が下がったことで、中小企業に対するお金がストップしているという現実がありますよね。
菅野:企業倒産数は減ってきていたんですが、去年にまた1万3000件と盛り返しています。そして、倒産が増えている一方で、規模、負債総額は減っ てきています。件数は減ったけど、負債総額は減ったということは、小さい会社がつぶれている、と。ノンバンクの一部が、銀行が貸し倒れたときの保証をやっ ているわけですが、グレーゾーン金利が撤廃されて、そういう会社のパワーが下がると、中小企業への資金供与も下げざるを得ない。大手企業だって、金利が低 いのに面倒な手続きして新たな資金調達しようと考えないので、商品がつくれなくなりますよ。 木村:多くの日本の銀行、小さな企業に積極的に貸し出すと言ってますが、メガバンクは実態として出していない。企業側もお金がまわらない状況です。日本においてベンチャーを立ち上げる場合、アメリカとは状況がかなり違いますか?
水野:アメリカ時代に携わっていた企業について言えば、地元のエンジェルがいたりするので、資金の供給がすごくラクでしたね。銀行から借りる場合に も売掛金の担保があった。日本では、それをやっているところがないし、あったとしても、事業を回して行けるようなシステムにはなっていない。日本の風土は 起業に対するシステムが整備されていないんです。 松本:日本は、1500兆円という個人金融主さんがありますし、ひとつの文化しかないから、海外と比べてビジネスするには効率がいいはずなんです よ。金融ビジネスのチャンスはいくらでもあります。メガバンクのように全部を相手にしようとしてはダメです。投資商品はすべての人に供給できるものではな いので、限られた人たちに向けて、ひとつの狭い定義でやればいいんです。敷居を高く小さくやっても、ビジネスモデルとして成り立ちます。我が国の金融に未 来があるとすれば、そういう小さなものが乱立していくことが唯一の方法なのでは?そもそも日本という国には市民革命がなかった。金融は民主的なものなの で、民衆主義が根付いていないのとおなじで、金融も難しい。国全体で良くなるには、100年かかるだろうと。 木村:ポジティブにとらえるなら、それくらい歪んで遅れてるから、同一の手法で動きうるマーケットは巨大だと。ビジネスを大きく展開していくための素地はあるということでしょうか? 松本:日本は金融をやりにくい国だと言われてるのに、お金は集まるし、外資の金融機関も大きくなる一方ですから、そのくらいチャンスがあることに間違いないでしょう。世界からはバカにされているんだけど、金融人としてはいくらでもやれることはありますよ。 日本の金融の未来には、意識改革と制度改革が必要になる日本においてIPOの株は、8割以上を個人が買っているのが現状だ。ベンチャー企業に対するリスクマネーの供給者がプロではなく個人であることが問題である。市場をつくればいいわけではなく、そこへ投資家を連れて来る仕組みが必要なのだ。
大澤:ベンチャーの人からすれば大きな問題ですよ。コアな技術を持つ会社は、マーケットで受け入れられない。SNS などのように、B to Cの体験ができる会社なら個人投資家もつきますが、コンピューターの内部の仕組みをつくるなど、表に出ない技術の会社は評価されません。ベンチャーキャピ タルの人も、値段がつかないからできないわけです。ではなぜ機関投資家がつかないかというと、やはり人材の問題なんです。技術を見極める人が分野のエキス パートがプールされてないから、価値がわからない。それなら大手企業のほうが安全だと考えてしまうんです。これからは、人をいかに育成して行くか。逆に言 えば、これだけ整備されていないから、チャンスは山ほどあるわけです。機関投資家のみならず、そういうビジネスをやってるエキスパートが日本に戻って来る ことで、新しい技術なり商品なりを提供していけますよ。 松本:プロの投資家がIPO株を買わない理由はサラリーマンだからなんですよね。成績が良くても悪くても給料は変わらないから、モチベーションも上 がらない。報酬制度を設ければ、個人投資家のように、機関投資家も視野を広げると思います。でも、そこに理解を得るためには、金融教育をしっかりやって世 論を変えて行かないとダメだし、世論はマスコミがつくるから、マスコミも変えないとダメ。官僚、政治家、経団連、それも全部変えて行かないとダメですよ ね。 大澤:アメリカは、市場のメカニズムが働いてるから、そこにいるプレーヤーが秩序を保つんですよ。政府はほっといてくれというのが基本的発想です。 日本は、悪平等主義なので、出る杭は打たれる。それを教育で刷り込まれているから、心の底から変えられるかといったら難しいですね。いかに打破するかとい えば、エキスパティーズを持って来ることかな。意識の違う人を連れて来て、新しい価値観をつくっていくこと。大企業の方々が変われないのであれば、そう いった人たちを連れてくることでも変わって行くことができますよ。 日本の金融には、意識改革、制度改革が求められている。が、逆に言えば、混沌とした今だからこそ、細分化した商品を提供するなど、ビジネスチャンス も多くあると感じさせてくれた。これからの起業家は、国内市場だけを対象にせず、グローバルなオペレーション考えていくこと、より特化した商品を提供して いくことが必要なのだろう。日本の金融業界の未来を救うのは、市場を活性化させる起業家たちなのだ。 |
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グローバル カタリスト パートナーズ/工学博士 東北大学工学研究科博士課程終了。1985年、三菱商事に入社し情報産業関連の事業開発や投資に従事。同社在職中、1999年までの6年間は、同社シリコ ンバレー事務所にてベンチャー企業への出資・事業開発を通じ多くの事業機会創出に貢献。1999年に三菱商事を退職後、ベンチャーキャピタルである Global Catalyst Partnersをシリコンバレーにて設立しGeneral Partnerを務める。 |
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