開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
インターネットの出現は、隕石が振ってきたくらい衝撃的で、広告業界全体の生態系を壊してしまったという。逆にいえば、新しいチャンスが次々と生まれる可能性も秘めている、起業家にとっては魅力ある業界ともいえよう。
テーマは「次世代広告に見る新しいコミュニケーション方法とは」。テクノロジーとクリエーションが融合した近未来の広告とは、を語ってもらった。
インターネット広告を取り巻く業界の課題
西田:ご承知のように広告業界は、インターネットの登場とともに、非常に様変わりしてきました。それまでになかった広告手法というのがどんどん出て きて、既存のマス媒体、あるいはインターネット業界に、多大な影響を与えていると思います。そこで、皆さんにはまず、広告業界の課題は何かをお聞きしたい と思います。 ティム:私は、顧客に対して本当の価値を提供したいと考えています。しかし、残念ながらインターネットビジネスというのは、効果やリターンが明確で ない。私は、広告主にとっていい広告とは何かを常に考え、それによる利益をできるだけ上げ、さらにリターンがどれだけあるのかを明確に示したい。私がこの 業界に参入した98~99年頃は、広告主は料金を払いすぎていたと思います。2000年以降は、だんだんバランスが取れてきましたが、顧客には公正な利益 を適正に確保して欲しいと思っているのです。 田中:インターネット広告は、不特定多数に流すTV広告などと違い、ターゲッティング技術やターゲッティングの切り口の精緻化っていうのを、ずっと 追求していくのだと思います。インターネットのユーザー、もしくは消費者を分類して、そこに興味のあるコンテンツなり広告を、どう配信するかでしょうね。 広告効果を上げる仕掛けが、もっとできると思います。今後、誰も気付いてなかった新しい切り口で、細かく細かく追求していきたいと考えています。 加藤:私は、広告システムではなくて広告会社の経営者ですが、広告業界が抱える問題は、実はインターネットの存在そのものだと思っています。僕らが 商売を始めた15年前というのは、メディアといえばテレビ局とラジオ局、新聞社、雑誌社しかなかった。ところがインターネットという“隕石”が落ちてき て、生態系が変わってしまった。メディアそのものが増えてしまったんですね。それが実は大変な問題なんです。多メディア化が実際に起こってしまったこと で、マス媒体、特に新聞とテレビの相対的な広告価値が下がってしまったんですね。それから、広告枠を独占していた大手広告代理店も、独占している意味が薄 れてきた。私自身はどうかというと、インターネットが現れたことである意味破壊が始まった、という意味ではスゴク良いことだなと、既存の広告業界の課題 は、僕らにとっての大きなチャンスだなと思いますね。
中橋:今までのモバイル広告に足りなかったのは、ユーザーと広告主様をマッチングさせるってこと。この事に、僕らは価値をすごく感じています。そし て、これが同時にこれからの課題なんだと思っています。今後、検索に連動する以外にも、マッチングする方法っていろいろある。人に合わせてカスタマイズさ れる広告が本来あるべきだし、行動に合わせるマッチングもある。場所、時間に合わせた広告という部分で、うまくパートナーに価値を提供するのが、僕らのバ リューであると考えています。 「インターネット自体が、既存の広告業界にとっての課題だ」と指摘した加藤氏。その背景には、従来から根付いたROIつまり実数値を出さない、とい う慣習もあるようだ。また、今よりもさらに細かなターゲッティングが行われるだろうと分析するのは田中氏と中橋氏。ユーザーの特性に応じた情報の出し方 が、今後のカギだという。さらにもう一つ、成果をどのようにマネタイズしていくのかというところも大きな課題と言えそうだ。とにかく今、広告業界は大きく 変わってきている。 ターゲッティング技術の進歩で変わる新コミュニケーション西田:非常にエポックメイキングな会社として、よくグーグルが取り上げられます。グーグルは何がすごかったのか、何でみんなこれに飛び乗ったのか、どんな技術をもって広告業界に大きなインパクトをもたらしたのでしょうか。 田中:最近TVCMを見ると、検索してくださいっていうのがすごくたくさん出てきますよね。昔はいろんな情報が分散化していて、それにたどり着く方 法が全くなかった。グーグルのすごかったところは、誰でもグーグルの検索ボックスに入れると、結構適切な情報にしっかり道筋を付けてくれるところですね。 たとえば、今までだと政治に興味がある人は、政治に詳しい本を買うしかなかった。しかしグーグルは、この代議士っていうのを入れると、どういう高校を出て どういう本を書いたのか、全部分かってしまうというところでしょう。 西田:ティムさんはいかがでしょうか。広告とコンテンツの分離をグーグルが提供したのがエポックメイキングなことなんじゃないか、ということです が、ティムさんのところも、そういうところを標榜していると思うのですが、メディアはどう思っているのか、広告主はどう考えているのか教えてください。
ティム:確かに大きなポテンシャルがあり、お客様にも得と言えます。しかし、どのようなリンクを集めるのか、メディア、アドバタイズ、匿名の3つの プロフィールを構築し、ユーザーがどんなタイプのロケーションへ行きたいかを分析するのは、難しくコストもかかります。クリエイティブな人と相談して、狙 いどころをつめる必要があります。 中橋:ティムさんの言うとおり、ROIは全く違うと思います。それと、グーグルに関してですが、広告代理店様が扱えないような小さな広告主にとって は、オンライン上からフォームで申し込みをして、広告を出せるのはすごいメリットだと思います。このことによって逆に、広告代理店さんの価値が問われてい るというふうに感じています。 加藤:多メディア化の時代がくると、広告会社の仕事はもう、枠を仕入れて売ることではなくて、どんな気持ちの人をつくるか、どういう気持ちになって もらうか、どんな気持ちの人がどこにいるのか、その人に何を言えばいいのかという「コミュニケーションのデザイン」が、広告会社の仕事になってくるんです ね。つまり、ターゲティングが必要になる。そうすると、それにあったコミュニケーションの設計がすごく大事になってきて、ターゲティングしている人にとん ちんかんな投げかけをすると、逆にネガティブに働いてしまいますよね。 田中:行動ターゲッティングと、たとえばコンテンツマッチ広告を組み合わせるとですね、1週間前にハワイのビーチのサイトを見ていた人に、1週間後 に文字広告なりバナーの広告を出すという細かいところまで、技術的にはターゲットできます。しかし、その人に対してどういうコミュニケーションをすればい いか、それを考えるのって、ものすごくコストかかると思います。“ビーチに行きたいなら”って発信すると、なんでそんなこと知ってるんだと。 加藤:どれだけ技術が進歩しても、広告主と生活者との間に立って、ブランドがどう思われるべきかっていうことを設計できる機能が求められます。機械 にそれをやらせる訳にいかないじゃないですか。これからターゲティングがどんどん細かくなる、細かくなればなるほどコミュニケーションの取り方はセンシ ティブになるはずなので、それをやる会社は必要です。 テクノロジーとクリエーションの融合
加藤:去年一番ビックリしたのは、実はユーチューブなんです。今までの広告料金っていうのは、全部で何回見たとか、何ページ買ったとか、何人の人に 手渡ししたとか、そういうのが広告料金の基準だったんですね。でも、ユーチューブって、たとえば5人の人が広告を見ても、50万人の人が広告を見ても、 500万人の人が広告を見ても、広告主が量に応じてユーチューブにお金を払うことはないんですね。露出量とか広告がリーチしている人数とかと、料金が連動 してないっていうのが、かなりやばいですよ。人々が見るか見ないかを決めている基準は、面白そうか面白そうじゃないかだけ。クリエイティブ、デザインだけ で広告が完結するという、新しい時代が来ているんですよ。 ティム:私は、ターゲット分けがポイントになると思っています。技術手法にしても、媒体にしても、選択の余地がかなり増える。これらを上手に組み合わせることで、価格のモデルはそんなに変えずに、費用対効果は上がると思っています。 西田:コミュニケーションをうまくつくっていくということで言えば、ティムさんのようなビジネスもちゃんと使うし、ユーチューブのようなものも必要だし、そういうことを上手く均衡化させることが、もっと効果的にやっていくっていうことですね。
田中:今までのインターネット広告は、あまり表現力がなかった。文字広告にしても、バナー広告にしても。それが動画広告となると、ものすごく表現力 が上がってくるので、逆にコミュニケーションの取り方が難しくなってくると思います。ユーザーは何が面白いのか、というのはかなり読みづらいですよね。で も、それをどう高い表現力で設計するかというところが、広告会社のプロフェッショナルなところの価値となるのだと思っています。そして、今大手の広告会社 でやっているようなTVCMと、インターネットでのコミュニケーションの取り方って言うのは、だんだん似てくるだろうと、私は見ています。 中橋:それと、テキストで形成するようなクリエイティブに関しては、もっとテクノロジーと融合できると思っています。具体的に言うと、いろいろな企 業の商品データベースに合わせた、たとえば「あと10冊しかない」というあおりや、「在庫0だったら広告出さない」という調整、行動の時間軸に合わせた配 信、シチュエーションに合わせた配信、曜日とか人に合わせて、用意されたクリエイティブを出し分けるっていうテクノロジーは、今後も増えると思います。た だ、人間が結局どういうコミュニケーションをしたいかを考えた上で、それを技術的に出し分けるっていうことなのかなと思います。 最後に、いちばん身近なメディアとして今後の可能性を秘めたモバイル広告について、「高校生しか知らないけど100万人のシェアがあるなど、特定の ターゲットに強みを持つメディア。広告主が気付けば、面白い媒体」と田中氏。また、モバイルの端末に向けて検索連動型広告を提供している中橋氏は「まだ、 検索エンジンに付いてはグーグルも覇権を取れてない。起業するならチャンス」と語ってくれた。 |
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ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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