開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
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ジャパネットたかたでは、テレビショッピング用の自社スタジオを設けています。よく、地元の小学生が見学にやってきます。実際にカメラを回し、商品
を手にとって紹介してもらいますが、子どもたちはみんな「自分もやりたい!」って言います。後で手紙が届くんです。「テレビのしくみがわかってよかった」
なんて書いてある。子どもに夢を感じてもらえてうれしくなります。子どもたちが素敵な仕事をし、素敵な家庭を築き、素敵な人になることを願わずにはおられ
なくなりますね。
私がテレビに向かって話す時、原稿はないんです。台本があると全く語れなくなります。そして、私の話には「最後になりますが」というのが多い。思いついた
ことをどんどん自由に重ねて語りますから。台本があると、そのとおり読まなければならないと意識するので、かえって難しい。一度だけ仲人をやったことがあ
りますが、その時も、たった3行のあいさつも原稿があるとだめになりました。うまく言えず詰まってしまったんです。
よく、このことを恋愛に例えますが、求婚する時だって同じだと思うんです。自分の言葉で真剣に話すから、相手の心が動く。それを台本どおりに読んで
も気持ちは伝わらないでしょう。テレビショッピングでは、お客さまにメッセージを伝えているわけですが、このように「誠実に」気持ちを伝えるということが
大事。「うまく」ではない。これはどんなビジネスでも同じだと思うんです。当社では、MC(司会者)は若い社員もやっていますが、下手でもいいから一生懸
命、自分の言葉で自分の思いをわかりやすく伝えるように語りなさいと言っています。
当社はラジオショッピングからこの世界に入りました。ラジオは商品を見せることができません。しゃべりでリスナーに心が伝わるかどうかの勝負なのです。そ
れで見えないモノを買ってもらう。ビジネスとは、お客さまに向き合うことなのです。企業も個人も、お客さまに向かって自分の思いをどれだけ伝えられるかが
一番大事だと思います。
起業家を目指す人は、何を目指して人生を送ろうとしているのかを考えるべきです。一つひとつ努力を重ねて58歳になった今、少し見えてきたものがあ
る。目指しているのはお金? 名誉? 確かに最初にお金がなければ起業できないかもしれませんが、目的にもお金を置いてしまうと、最終的にはお客さまへの
目線を忘れてしまうのではないかと思います。企業活動を通じて、世の中に対して何をしたいのか、そしてどんな人生を送りたいのかという目標をしっかり立て
ることが大切。お客さまは何を求めているのかを大切に考えていけば、いい人生を送れると思います。
テレビショッピングには、いろいろな会社が参入してきています。そこで、競争に勝つことを目的にすると、最終的には無理をすることに追い込まれるようになります。すると、社員もいろいろ大変になる。結果的に、お客さまへの目線を忘れてしまうことになるんです。
当社で扱う商品は家電製品が70%ほどを占めていますが、メーカーも激しい商品開発競争を繰り広げてどんどん新しいものを出してきます。そうやって勝ち
組・負け組をつくっていくのが本当にいいことなのか。他社と比較したり競い合うよりも、自社内でいかに最高レベルのものをつくりあげるかをまず考えるべき
なのではないか。自社内の問題を改善していけば、結果的に競合にも勝っているということになるのではないかと思います。他社と比較して自社を大きくしてい
くのはどうか。お客さまを見ていかないと、企業を継続させることは難しいと思います。
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ジャパネットたかたは、昨年、1080億円の売上がありました。906億円だった前の年に「次に目指すのはいよいよ1000億円ですね」といろいろ な人から言われました。会社は税金などで社会還元しなければならないし、雇用もしていますから、利益を出さなければなりません。だから、前年より売上が下 がるのは問題ですが、何が何でも1000億円でなくても、それに近づければいいと思ってやってきました。さて来年はどうするか。12月の忘年会で 「1000億円でもいいんじゃないか?」と言ったら、社員から「それでは困ります」と言われました(笑)。「じゃあもう少し頑張ってみるか」となりました が、いずれにしろ、自分たちのペースで最大の努力をすればいい、それで結果に満足できればいいと思います。何を目的にするのか。いくら売り上げるかという ことよりも、世の中のためになる事業を行うことのほうが大切なのだという思いでやっているわけです。
さて、ジャパネットたかたはテレビショッピングのイメージが強いと思いますが、実際は売上の30%もありません。当社はメディアミックスを行っていて、インターネットが15、16%、ラジオが10%弱あります。あとは紙メディアなど。
最初はラジオから始めました。北海道にも放送したんですが、その時、電話がかかってきまして、「おたくは北海道のどこにあるの」と聞かれたんです。「長崎
です」と答えましたら「えーっ。考えさせて」と引かれてしまいまして。こういうことがずっと続きました。そこで、いろいろ考えたのです。まず、責任もって
売るために、商品に関するクレームが出ないようナショナルブランドの製品にこだわりました。つまり、どこでも売っている商品。だから、いかにその商品がい
いかというメッセージを伝えないと売れないわけです。
「大広望(たいこうぼう)」という8ミリビデオカメラがありました。ズームの機能がすごいのが特長で、それをわかりやすくするために「大きく広くワイドに
13人まで画面に入ります」と言うんです。すると「おーっ」という声が入る。リモコンのことを説明する時は、「なんと離れた遠くでもチャンネルを変えられ
るんです!」と言うと、「おーっ」。べつに普通なんですけどね(笑)。でも、メッセージを伝えるというのはそういうことなんです。
長崎で創業して、おかげさまで売れるようになり、長崎でできるなら福岡でもできるだろうと福岡に出て、徐々に全国に広げていきました。名称は最初
「通販九州」といっていたんです。それを「通販四国」「通販中国」と広げていったら、わけがわからなくなって「通販高田」に統一しました。
企業はメッセージを発信しなければなりません。それにはお客さまに馴染んでもらえるネーミングやキャラクターをつくって、それを見ただけでパッとわかって
もらうことが大事です。当社は2年で全国にネットワークができましたが、「通販高田」はどうもよくない。そこで福岡のプロに頼んで名前を考えてもらいまし
た。50くらいの案が来ましたが、どれもピンと来ないんです。「全国ネット」、ピンと来ません。するとある人が「ジャパンネット、ジャパネットはどうです
か」と。「おお、それがいい!」と決めたわけです。
「北の街から南の街まで」という歌や、CGを使ってキャラクターもつくり、テレビショッピングで流しました。すると、お客さまから「子どもがテレビショッ
ピングを見て踊るんですよ」というお便りが届いたのです。うれしかったですね。そのお宅に感動を与えられているわけですから。
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私は「感動」という言葉をひんぱんに口に出します。誰しもが、与えられる人生は1回きり。皆さんに感動の人生を送ってほしいと思います。感動するた
めには情熱が必要。ある詩人は「人は情熱を失って初めて歳をとる」と書いています。語る人の表情に情熱が溢れていると感じるから、その人を信じて買うわけ
です。
情熱を持ち続けていれば、ほとんどの夢はかなうと思います。あのナポレオンは「我輩の辞書に不可能という言葉はない」などと言ってずいぶん傲慢な人かと思いましたが、おそらく情熱を持って努力し続けた人なのでしょう。
そして、自分だけ感動していたのではもったいない。感動は人と共有するもの。人に伝えなければなりません。
当社では、全社員で「アイデアマラソン」というイベントをやっています。いろいろなアイデアをノートに書き込むんですが、380人が7カ月間かけて10万
件ものアイデアを考え出している。「なぜ?」を問う能力、感動を人に伝える能力を身につけさせたいからやっています。人に伝えるのが苦手な人って多いんで
す。伝え方が下手なのではなく、感動のしかた、情熱が不足しているんじゃないかと思います。感動したら人に伝えたくなりますよね。
テレビショッピングのMCで一番心がけているのは、感動を伝えること。ある時、9万円もする高級炊飯ジャーにチャレンジしたことがあります。一般的
に炊飯ジャーは1、2万円くらいのものなので、普通は売れません。で、自分で実際に使ってみたんですが、これがおいしく炊けて感動したんです。それがお客
さまに伝わったんでしょう、紹介が終わった瞬間に100台売れました。自分の感動は100台では足りない、200台にしたい、とモチベーションが上がるん
です。
1本で1000回充電できるという、環境にいい電池に感動して売ったこともあります。こういう商品を広めないわけにはいきません。共感したお客さまから「買いたい」と電話がかかってきます。涙が出るほどうれしくなります。
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会社は続けることが大切です。難しい問題は避けるのではなく、受け入れなければなりません。少子高齢化が問題になっていても、その現状を受け止めて
そこから始めなければならない。そういう問題を跳ね返す情熱がなければ、ベンチャーは成功しないでしょう。むしろ自分に課題を与えて乗り越えていくくらい
でなければなりません。
今は環境変化のスピードが速く、舵取りが難しい。商品の入れ替わりが早くて疲れるほど。変化対応能力がないと会社は継続できません。精進し続けることです。やってみてもだめだった。でもやり続けることです。
会社を残したいと強く思いますが、そのためには、「感動を与えるジャパネットたかたのテレビショッピングは必要」と思わせなければなりません。そんな会社で働く社員も感動の人生を送れる。こんな幸せなことはありません。
自分を信じることと、自分を疑う心も必要です。自分を疑うとは、聞く耳を持つこと。何歳になっても自分ができないということを受け入れることです。
イチロー選手や松井選手は天才なのではなく、「疑」の心で自分ができないことを人一倍努力してできるようにしているのだと思います。つねに自分を高めるた
めに「信」と「疑」を持ち合わせて日々精進し続ける。これがエンドレスの課題だと思います。
株式会社ジャパネットたかた
代表取締役 髙田 明氏
ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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