開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
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2000年に百度を設立し、現在、年間30億ページビュー、広告主は10万社と、いずれも中国で最大のサイトに成長しています。
百度を設立する前は、アメリカのインフォシークに2年半ほど在籍。そこで第2世代の検索エンジンを開発していました。その前はダウ・ジョーンズの子会社で
3年半、リアルタイムファイナンシャルニュースを担当。その前はパナソニックのリサーチラボに1年ほどおりました。この1年間は、私のキャリアで最重要の
時期。というのは、私の夢は大学教授やリサーチャーではなく、エンジニアとしてできるだけ多くの人の役に立つ、新しいモノをつくることと自覚できたからで
す。インターネットが誕生し、それで多くのことができると感じたのもこの時期。その前は、ニューヨーク州立大学でコンピュータサイエンスの修士を取り、さ
らにその前は北京大学で学んでおりました。
過去2年間の中国における検索エンジンのパフォーマンスを比較した調査結果があります。最もひんぱんに使っている好きな検索エンジンは、という質問の答え
として、百度は2005年の47.9%から、06年には62.1%と1年間で10%以上もマインドシェアがアップしているのです。06年のトラフィック
シェアは約69%。グーグルは14%、ヤフーは7%です。ニュース検索は約60%、イメージ検索は約70%、ミュージック検索に至っては、84%ものシェ
アを獲得しました。
私たちがこの7年間で何を感じ、何を信じるようになってきたかをお話します。
1つ目は、展望がなければならない、今はやっていることだけをやっていてはだめだということ。ポータルサイトがはやった時期、中国でも多くの会社が参入
し、そしてだめになっていったのです。その後も、ワイヤレスモバイル、着メロダウンロード、オンラインゲームなどが出てきました。
当社も「なんでやらないんだ」と言われましたが、そのたびに「そんなものは長くは続かないから」と言ってきたのです。ネットの世界はすぐ変わるので、何か
をやると決める時は、もっと先を見なければなりません。少なくとも2年先くらいまでは予測できる。2年後は何が成長するかを予測することは困難ですが、大
変重要なのです。今ホットだからといって飛びつくのはよくありません。例えば今、ユーチューブのような動画配信サイトが世界中で流行しています。中国にも
たくさんありますが、その99%は失敗するでしょう。まだはやっていないことをやるべきなのです。
2つ目は、約束以上の結果を出すこと。99年の末、投資家に100万ドルの投資をプレゼンした時のこと。それだけの資金があれば、6カ月で最初の百
度サーチのバージョンができるだろうと言いました。それに対して、投資家は「もっと投資したらもっと大きくできるか? もっと早くできるか?」と聞いてき
ました。私は無理だと感じ、率直にそう答えたのです。すると誠実に答えたことが評価され、結果120万ドル調達できました。
中国に帰って、私は24時間働きました。そうしたら、実際には4カ月で最初のバージョンができた。約束以上の結果を出し、4カ月後に投資家と会った時に大変喜ばれました。
最初の調達は99年の終わり頃、ITバブルの頂点です。それがはじけて、2回目の調達が困難な環境になりました。誰もIT企業に投資しようとしなかった
中、2000年の9月に1000万ドルを調達することができたのです。それができたのは、約束以上の結果を出して信頼を得ていたからにほかなりません。
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3つ目は、必要でない時でも資金を確保しておくこと。最初120万ドル調達した時は、投資家に「半年かけて使う」と言いましたが、実際は1年かけて
使うつもりでいました。まだ半分残っていたのです。だから、その時はまだ1000万ドルも必要ではありませんでした。投資家からは「20人の会社でなんで
そんなに必要なのか」と疑問に思われましたが、それでも私は「どうしても必要」と言ったのです。
というのは、厳しい時期を迎えることがわかっていたからです。さらにそれがどれだけ続くかはわかりませんでした。私は、資金調達より強力なビジネスをつく
ることに時間をかけたかった。1000万ドルあれば、調達しなくても3、4年は生き残れる。つまり、3、4年は資金のことを心配せず、最高の検索エンジン
をつくることに集中できました。だから、求めていない時でも資金を手にできることは、とても大切なのです。
4つ目は、大口クライアントだけではだめだということ。これは誤解されやすいのですが、普通は売り上げの20%をもたらしてくれるクライアントがで きるとワクワクします。しかし、それは健全な状況ではない。いつかそのクライアントを失ったら、20%もの売り上げを失うことになる。それは大きなリスク です。そもそも創業直後の企業はリスキーなもの。投資家はできるだけリスクは避けたいと思うものです。1社でも離れたら打撃を受けてしまわないよう、ポー トフォリオを分散化する必要がある。百度には10万社以上のクライアントがありますが、1、2社を失っても、それが大きなパーセンテージを占めていないの で安心していられるのです。また、多くのクライアントがあれば価格設定力、交渉力を持つことができる。それが、クライアントが1社で20%もの売り上げ シェアを占めていたらこちらの交渉力は落ちてしまいます。
5つ目は、短期間で利益を求めないこと。ベンチャーキャピタルの資金が潤沢な時はいいが、環境が厳しい時にこの主張は難しいかもしれません。当社が
1000万ドルの調達を図った2001年はまさに厳しい時期で、多くのネット系企業は短期的な活動を行わないと黒字化できず、資金調達できない状況でし
た。それでも私はあえて逆の主張をし、01年9月にビジネスモデルを変えたのです。そして約5年間、赤字を出しながらも、長期的に成長できる確実、健全な
ビジネスの基盤をつくったのです。
なぜその間赤字だったかというと、当時、検索エンジンはまだよく理解されていなかったから。中堅中小企業にとって、検索エンジンが自社ビジネスの最良の
PR法であることがわかってもらえませんでした。だから、その間、先に多くの利用者を獲得してトラフィックを増やすことに努めていったのです。
6つ目は、集中すること。私は7年間、ひたすら中国語の検索エンジンの開発に没頭してきました。その間、ネットの世界では先述のとおりのさまざまな サービスが生まれていきましたが、あえて検索エンジン1つに集中したのです。そのほうが、ベストを尽くせるから。現在、支配的なシェアを獲得することで、 その結果は実証されました。
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最後の7つ目は、情熱を持つこと。起業家にとって情熱は極めて重要。それなくしては起業すべきではありません。起業家の誰もが問題に直面するからで す。私は成功、失敗したさまざまな起業家と会い、共通して、厳しい時期での挑戦は情熱が成功をもたらしていることがわかりました。困難な局面でもあきらめ ない。自分たちがやっていることが好きなものであれば乗り越えられる。当社も、過去7年の間にバブルがあり、5年間の投資の時期がありました。誰も検索エ ンジンに注目せず、利益が出ると信じない人もいました。しかし、そんな時期でも情熱を燃やし続けて集中しました。私はよく1日に何時間仕事をしているのか と聞かれますが、うまく答えられないのです。というのは、生活と仕事を分けるのが困難だから。1日10時間以上パソコンの前に座り、パソコンで遊んでいる こともあります。ネットや検索が好きだからです。好きならばベストを尽くすことができます。
ところで、海外のメディアやユーザーから、百度はなぜ成功したかについて誤解されていることがあります。
まず、「中国には検閲があるから」というもの。それは事実ではない。百度は中国の企業として、中国の法律に則って事業を行う必要があり、法律に反するページはフィルタリングして検索できないようにしています。その点においては、むしろ外国の企業のほうが有利なはずです。
「政府の支援を受けている」というものもありますが、7年間、1ドルたりとも受けてはいません。当社はナスダックに上場しており、資本のすべてはアメリカの投資家によるものです。
「著作権の問題を避けている」というものも誤解。百度は著作権がからむコンテンツをホスティングしているわけではない。コンテンツを提供するサイトを検索しているだけです。
「先行者優位」という指摘も誤り。百度ができたのは2001年9月で、その時には中国にはグーグルやヤフーなどがすでにサービスを開始していました。
「商業結果」というものもあります。広告の表示について、実際の検索結果とは違うように表示すると批判する人がいますが、結果をきちんと表示しなければユーザーは離れていると思います。
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さて、私たちはどのように成長してきたのか。最初の5年間は、いかにユーザーに最高のエクスペリエンスを提供するかに集中してきました。そしてでき
るだけ多くのユーザーに利用してもらい、多くのトラフィックを得、そして多くのクライアントを獲得して収益をあげ、それを投資に回すという好循環を行えて
きたのです。
7年前、社員数は2人でしたが、2006年には3000人以上。トラフィックは2000年の段階ではゼロでしたが、今では世界で第4位までに。7年前、売
り上げは16万ドルで、200万ドルを投資。現在は売上1億700万ドル、利益は3800万ドル。これから成長していくにしたがって、収益率もさらにアッ
プしていくでしょう。時価総額は2000年では400万ドルで、06年では40億ドルと1000倍に。ナスダックにおいて1日に2億8000万ドルの出来
高があり、中国株として最も取引高のある人気銘柄となっています。
7年前に創立した時は、コンシューマー指向の検索エンジンではなく、バックエンドテクノロジーを提供していました。中国の大手IT企業に技術を提供してい
ましたが、収益は上がりませんでした。そこでモデルを変えたわけですが、今日では毎日20万人以上が使っている検索エンジンとなり、7年前とは全く変わっ
ている。始めた段階のビジネスにこだわらず、変えていいのです。むしろ、市場を見ながら、恐れずに変えていかなければならないでしょう。
百度は日本に進出しました。日本には成熟したネット市場があり、日本の強力なプレーヤーから学びたいと思っています。まずは検索サービスから始めます。日本人のニーズに答えてサービスを開発していきますが、日本の市場を理解しているパートナーを求めています。
ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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