開催日:2006年3月11日 会場:東京・プリズムホール
九州ベンチャー大学/株式会社インタークロス 代表取締役 栢野克己氏
株式会社ウィル・シード 代表取締役 船橋力氏
コーディネーター 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 助手 牧兼充氏
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「起業家を育てる」というテーマでお話をいただいたのは、零細企業コンサル・講演家である栢野氏と、企業や団体、小中高校などに教育研修プログラム
を提供している船橋氏。司会進行役には、慶應義塾大学でベンチャーインキュベーションを主に研究されている牧氏を招き、ディスカッションがスタートした。
牧さんが「起業教育によって起業家は育成できるのか」という問いを会場に投げかけたところ、講演出席者の意見は「YES」と「NO」のふた
つに割れた。「YES」の人は「成功しているケースを見ることによって、ノウハウを学べるし、マインドを高めることができる」、「もともとマインドを持っ
ている人でも、どうやって始めればいいか学ぶことができる」、「NO」の人は「実社会に出てみないとわからないことがある」、「きっかけにはなっても、あ
くまでも起業は本人の意思によるところが大きい」「起業するには自主性が必要。教育は受け身のイメージがある」など様々な意見が寄せられた。
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では、パネリストはどう考えているのか。九州で草の根的に起業勉強会を開催している栢野氏は、「育てようと思って育つのかというと、そういうもん じゃない。ゼロから勉強して成功した人はあまりいないんですよ。もともと何かを持っていた人が、たまたま何かのきっかけで起業できたっていうパターンが多 いですよね。ただし、ひとつ言えることは、有名大学を出たから成功できるというのは間違い。高卒や無名大学卒から這い上がる人が多いんですね」と分析す る。
一方、学校などで体験しながら経済を学ぶプログラムを提供する船橋氏の意見は、「私はできると思っています。子どもたちに教育をすることで、ビジネ
スはおもしろいということや、勇気や志を与えることはできる。こういう場もそうですが、“自分にもできるんだ”と思ってもらえることはできますよね」。牧
氏は「広い意味ではできると思います。ただし、教育がいくら頑張っても、それで起業家が育つわけじゃない。しかし、起業家が勝手に育つ環境作りはできる」
と続けた。
栢野氏がこれまでに見てきた成功事例に共通していえるのは、「みんな人よりも働いている。24時間365日営業は当然。そのぐらいの気持ち
がないと成功しない」。船橋氏によると、「体験教育プログラムで活躍するのは、じつはクラスの問題児が多い。型にはまらない突拍子のないアイディアを出し
てくる」のだという。牧氏は、学園祭での経営体験を通して、「実際に人のお金を預かって、店を運営させてみると、人を説得する交渉術や人脈造りなどが身に
ついた学生が多い」と語る。三者三様の方法論で教育を行った結果、着実に起業家の芽は育っているのである。
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最後に、会場から質問を募ったところ、「起業家として必要な資質や環境とは?」という問いが投げかけられた。これに対しての答えは、「人との出会 い、ビジネスを始めるしかない環境、学歴とは別の意味での知識」(栢野氏)、「欲求の高さと、どんな苦労にも乗り越えられるストレス代謝の強さ」(船橋 氏)、「どれだけ支援者を集められるか。支援者を口説く能力も必要」(牧氏)。
つまり、起業家には“やる気”や“エネルギー”などの本人が持つ力と、周りの人たちの協力が絶対に不可欠だという結論に至ったといえる。ゲスト審査員
(株)サイバーエージェント 藤田 晋氏
GMOインターネット(株)熊谷 正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株)松田 公太氏
(株)テイクアンドギヴ・ニーズ 野尻 佳孝氏
(株)フォーバル 大久保 秀夫氏
ブックオフコーポレーション(株)坂本 孝氏