開催日:2006年3月11日 会場:東京・プリズムホール
~起業スタイルの違いって?新会社法施行でどうなるの?~「自分にあった起業スタイルを見つける独立開業セミナー」
中野坂上行政書士事務所 山内 一永氏
事業スタイルを選ぶ際、個人と法人で漠然とした違いはイメージできるものの、どちらが自分の起業に適しているのかまではなかなか判断しにく
い。その手助けをしてくれるプログラムがAステージ2日目の一本目。中野坂上行政書士事務所の山内一永氏による「自分にあった起業スタイルを見つける独立
開業セミナー」である。
![]() |
普段はドリームゲートで大好評のネット相談サービス「起業・独立相談室」で、相談員として活躍する山内氏。
「自分ならどうするかを具体的に考えながら聞いてください」
という前提のあと、講演は始まった。今回の趣旨は、あくまで個人と法人、それぞれのメリット・デメリットを参加者に講義するというもの。そこから、実際に起業する人間が何を優先させるかによって、起業スタイルが決まるのだ
設立形態は大きく分けて2つ、「個人」と「法人」がある。まず、個人のメリットとして挙げられるのは、手続きが少ないという点。始める時は税務署に 「開業届け」を提出すればよく、やめる際も、「廃業届け」を提出すれば、それで終えることができてしまう。その反面、デメリットとしては信用度の低さが指 摘され、簡単に終えることのできる事業形態では、大きな仕事を任されない可能性が高い。
法人は会社と社長以下社員を切り離すことができる。例えば何かミスがあって、取引先から損害賠償を請求されたとしても、会社が訴えられた場合は会社 が支払いをすればよい。もしも会社が払いきれなくなっても、「有限責任」といって個人にまで支払いの責任が問われることはない。逆に個人事業主が損害賠償 を請求された場合、事業用資金で払いきれなくなれば、「無限責任」といって個人の資産等を換金してまで支払いをする責任がある。
税制の観点から見ると、個人に対しては累進課税、法人に対しては一律の税額が課せられる。所得額で言えば1800万円を超えると、個人への課税額が法人への課税額を上回ってしまう。
個人での起業を選ぶなら、信用度や課税額など法人のメリットを捨てなければならず、法人を選ぶなら、手軽という個人のメリットを捨てなければならない。
資金面を見ると、定款を作り、認証を受けるまでに、事務的な手続きだけで有限で20万円強、株式なら30万円弱が必要となる。これが個人開業だと全て省かれる。
![]() |
また、会社法の改正も起業スタイルの選択に関与してくる。現在、会社の形態には、株式、有限、合資、合名の4つがあるが、5月の会社法改正により、 この4つの形態から、株式、LLC、合名、合資、LLPの5形態に変更される。有限のかたちが株式に吸収され、最低資本金制度がなくなり、それぞれの事業 規模にあわせて起業することができるようになる。これは大きなメリットといえよう。
前提としてあったように、どんな事業スタイルにするかは、それぞれの判断に委ねられる。しかし、山内氏の意見はこうである。
「実際に事業を行うには、自分がいなくなった状態まで想定しなくてはならず、そのためにはやはり会社という選択が適当といえます。まして、事業が失敗して
しまった場合、無一文になるまで追い詰められては大事な家族も守れなくなる。やはり個人事業というのはリスクが大きいです」
日本一資本金が大きい有限会社は資本金500億円と言われている。こんなに大きな企業に成長しながら株式会社に組織替えしないのは、決算公告不要などの有限会社のメリットを優先し、最大限に活用させているからだそうだ。最後に山内氏はこう締めくくった。 「皆さんも起業にまつわる法律をきちんと勉強して、法律に規制されるばかりではなく、法律を使いこなすようになってください。今日これだけの知識を得たことで、皆さんは確実に大きく前進しているんですよ
ゲスト審査員
(株)サイバーエージェント 藤田 晋氏
GMOインターネット(株)熊谷 正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株)松田 公太氏
(株)テイクアンドギヴ・ニーズ 野尻 佳孝氏
(株)フォーバル 大久保 秀夫氏
ブックオフコーポレーション(株)坂本 孝氏