引当金

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

引当金とは、来期以降に発生する可能性が高い経費を合理的に算出して、そのうち当期の負担分を費用にしたものである。収益に見合う費用が計上されることで、適正な期間損益が計算され、健全な処理と言えるだろう。株主などにとっては、将来を見据えた安全性の面で信頼感が増すと言える。ただし、会計では認められるが税務上では認められない引当金が多いので注意したい。

代表的な引当金として、貸倒引当金がある。
せっかく当期に売上げたものでも、すぐに現金にならないのが売掛金といった債権だ。売掛金は売上として当期の利益とされるものの、現金として手元に入らない「信頼関係」の上に成り立つ債権だ。しかし実際には現金化できないと大変なことになる。原価などのコストがかかっているし、税金も課税されるためだ。経験上、債権の一定割合は未入金となることがわかっており、将来の損失に備えることが必要になる。

売掛金や貸付金が現金化する前に取引先が倒産してしまうと、債権は損失となる。この現象を「貸倒れ」と呼び、いつ起こるか分からない見積りの難しいものだ。そのため、過去の貸倒れ状況を考慮した計算法がある。

予期不能な貸倒れが実際に起こってから、特別な損失として計上する会社もあるだろう。しかしその貸倒れた売掛金は、当期の売上(収益)分が貸倒れたのではない。
一会計期間の収益と費用は、それぞれが対応させて考えるのが会計の基本である。当期の売上分が貸倒れたのではなく当期以前分である場合は、過去の期の費用にすべきという考え方だ。これは会社自体の安全性を重視した、保守主義的な考えともいえるだろう。会計上の費用である貸倒引当金は、税務上でも中小企業については一定の算出法で計算される部分について損金に算入することが認められている。

返品調整引当金は、出版会社など特定の業種に適用される引当金だ。店舗に商品である「書籍」を売上げても、実際は書籍が売れ残る場合が多い。そして売れ残りの書籍を出版元が引き受けるという契約が交わされている場合には、返品された書籍分が損失となるからだ。

引当金には、こうした将来の「損失」を前もって保守的に経費計上するものと将来当然発生する「費用」を、前もって引当てるものがある。例えば退職給付引当金や賞与引当金、修繕引当金等がそうだ。いずれも、当期の収益に対応した部分を費用と考えている。
ある期間に大きな費用を計上すると、その期だけが大赤字となるだろう。しかしそれを合理的に各期間に割り振れば損益も正しく表示できるし、将来大赤字にならないよう損益を平準化することが可能だ。ただし、上記の引当金は損金にすることができないので節税効果がない点に注意が必要だ。

※会計では引当金は見積計上しなくてはいけないが、税法としては損金算入限度額が設けられていたり、そもそも損金に計上できないものが多いので注意が必要。

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