起業・経営FAQ:議決権を維持するための資本政策について教えてください。

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

課題・悩み

現在新しく事業を立ち上げる準備をしている最中です。幸いなことに出資してくれる方が現れたのですが、自己資金が少ないので、出資者がオーナーに、自身が雇われの役員になると思われます。

ただ私としては議決権を維持したいと考えており、断片的なスキームとしては以下を考えています。

  • (1)私が会社を設立し議決権制限種類株等で増資をする
  • (2)役員報酬でオーナーの持ち分を買い取る
  • (3)TK出資を活用する
  • (4)法人への貸付(借入)にする
  • (5)その他のスキーム

上記を考えていますが、専門知識や事例などが全く無知であるため、それぞれのメリットデメリットや他のスキームについて教えてください。

回答:(1)~(4)のスキームのメリット・デメリットから見ていきましょう。

この質問への回答者

長谷川 徳男(はせがわ のりお) / 小谷野税理士法人
特に税務面でのサポートに力を入れている長谷川さん。会社が損をしないための経営方法について、経営者向けの参謀役として活躍をされている税理士の方です。

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自己資金がわずかながら、資金調達をしつつ、議決権の過半数は維持したい、というご要望と理解しました。

まず、ご検討されている(1)~(4)のメリット・デメリットを挙げてみます。

  • (1)私が会社を設立し議決権制限種類株等で増資をする

メリット:議決権を制限しつつ、資金調達が可能。

デメリット:発行のためには登記手続きが必要。

  • (2)役員報酬でオーナーの持ち分を買い取る

メリット:普通株式の発行と譲渡で足りる。

デメリット:買取資金が必要。買取りしないと議決権取得ができない。株価算定が必要。

  • (3)TK出資を活用する

メリット:出資と経営を分離できる。

デメリット:匿名組合契約書の作成が必要。匿名組合員への決算報告が必要。

  • (4)法人への貸付(借入)にする

メリット:議決権を維持できる。

デメリット:返済が必要。

上記のようにまとめると、4つの中では(1)が最も望ましいのではないでしょうか。 さらに、(5)その他のスキームとしては次の2つが考えられます。

・新株発行価格を高く設定する

質問者様が少額で設立した上で、設立時の株価よりも発行価格を高く設定して増資する。

例えば、質問者様が1株1000円で100株出資して資本金10万円で会社を設立した後に、1株10万円で99株の株数の増資を受けるとします。この場合、増資後の資本金は1000万円、発行済株式総数は199株、質問者様は50%超を支配することができます。 問題は、当初1株1000円で設立されているのに、直後にそれよりも高い金額で増資に応じてもらえるか否かですが、シェアにこだわっていないとのことなので成立し得るのではないかと思います。

・定款の属人的定めにより議決権を加重する

会社法上の非公開会社の場合には、定款の定めによって、例えば、質問者様が保有する株式については議決権を加重するということも考えられます。

例えば、質問者様が1株1万円で10株を出資し、他の株主の方も1株1万円で990株発行してもらいますが、定款の定めによって、質問者様が保有する株式については1株につき100個の議決権を与えるとするように規定しておくとします。この場合、質問者様は10株しか保有していませんが、議決権は1000個持つことになり、他の株主から990万円の出資を受けたとしても、過半数の議決権(1000/1990)を確保することができます。

問題は、定款変更を行うためには、「特殊決議」が必要となり、原則として「総株主の半数以上であって、総株主の議決権の4分の3以上にあたる多数の決議」が必要となります(会社法309条4項)。よって、設立した後も定款の定めを自分の意思に副うように変更するためには、総株主の半数以上と4分の3以上の議決権を維持し続ける必要があります。

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