ネットショップの開業に際して、「何から準備をはじめるべきかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか。じっさいに、商品ジャンルやコンセプトの明確化、販売方法の選定、仕入れやサイト構築、さらには届け出や許可の取得など、開業には多くの準備が必要です。また、開業後も集客・販促・在庫管理など、運営を軌道に乗せるためのポイントが数多く存在します。
そこで今回は、ネットショップ開業に必要なステップから運営のコツ、費用の目安やおすすめのサービスまで、はじめての方にもわかりやすく解説していきます。
ネットショップ開業を成功させるには綿密な事業計画が不可欠です!
ネットショップ開業は手軽にはじめられる一方で、しっかりとした事業計画なしに成功することは困難です。市場分析、競合調査、資金計画、売上予測など、開業前に整理すべき要素は数多くあります。
そこで、ネットショップ開業に特化した事業計画書のテンプレートを無料でご提供いたします。必要な項目がすべて盛り込まれているため、記入するだけで本格的な事業計画書が完成するのでぜひご活用ください。
- 目次 -
ネットショップ開業における具体的なステップ
ネットショップをはじめるにあたって、事前に決めるべきことや準備すべき手続きが数多く存在します。ここではネットショップ開業に必要な具体的なステップについて解説します。
商品ジャンルとコンセプトを明確にする
ネットショップを立ち上げる際、「どのような商品を扱うか迷っている」「サイトに個性が出せない」といった悩みを抱える方は少なくありません。
ジャンルを幅広く設定しすぎると、他店との差別化が難しくなり、大手ECサイトの価格競争に埋もれてしまうリスクがあります。とくに開業初期の段階では、「誰に」「どのような価値を届けたいか」を明確にすることが重要です。
たとえば「日本製のオーガニック衣料」など、あえてテーマを絞ることで、特定層のニーズに応えやすくなり、ショップ独自の魅力も打ち出しやすくなります。
商品ジャンルやコンセプトを固めることで、商品選定からサイト設計、プロモーションまで一貫性が生まれ、ユーザーからの共感や購買につながりやすくなります。
販売方法(自社サイト or モール)を選ぶ
ネットショップを開業するうえで、「自社サイトで販売するか」「ECモールに出店するか」は重要な選択になります。
自社サイトで販売する場合は、デザインや機能を自由に設計できる分、ブランドの世界観をしっかり表現できます。利益率も高めやすいため、ファンとの関係構築を重視したい場合に適しています。ただし、集客や宣伝はすべて自社で工夫する必要があるため、初期からの運営ノウハウが求められます。
一方で、楽天市場やAmazonなどのモール型は、知名度の高さから集客力があり、商品を早い段階で多くの人に見てもらいやすいのがメリットです。はじめてネット販売に挑戦する方でもスタートしやすい反面、出店料や販売手数料がかかる点はあらかじめ把握しておきましょう。
どちらにも特徴がありますが、最初はモールからはじめて、慣れてきたら自社サイトを並行して運営するという方法もあります。
商品の仕入れ・制作を準備する
ネットショップをはじめるうえで、「商品をどうやって手に入れるか」という点も考える必要があります。
商品を仕入れる方法にはいくつか選択肢があり、代表的なのはネットの仕入れサイトを使うパターンです。ほかにも、展示会や見本市でメーカーと直接つながったり、作家・クリエイターと個別に契約を結んだりするケースもあります。オリジナル商品をつくりたい場合は、OEMでの製造委託や、自分たちで手作りするスタイルも選択肢に入ってきます。
また、在庫を持たずに販売できる「ドロップシッピング」という仕組みもあります。仕入れ先を選ぶときは、取引の信頼性や供給の安定性、利益率がしっかり確保できるかどうかをチェックしましょう。
仕入れが停止するリスクに備え、複数の仕入れルートを確保しておくことが望ましいです。
ネットショップ構築サービスを選定・登録する
ネットショップを開業するうえで悩みやすいのが、「どの構築サービスを使うか」という点です。じっさいにサービスを選ぶ段階でつまずいてしまい、準備が進まない方も少なくありません。
構築サービスには、自社の世界観を表現しやすい「カート型」と、集客力に優れた「モール型」の2タイプがあります。たとえば、BASEやSTORES、Shopifyといったカート型は、低コストで個性を出したい人におすすめです。一方、楽天市場やAmazonなどのモール型は、開業直後からアクセスを集めやすいのが特徴です。
それぞれにメリット・注意点があるため、初期費用や販売手数料、対応決済、サポート体制などを比較しながら、自社の販売スタイルに合ったものを選びましょう。
開業に必要な届け出・許可を確認・実施する
ネットショップを開業する際は、まず「自分が取り扱う商品に、どのような許可や資格が必要なのか」を確認しておくことが大切です。
たとえば、食品を販売する場合は「食品衛生責任者」の資格取得と「営業許可」の取得が求められます。中古品を扱うなら「古物商許可」、化粧品であれば「製造販売業許可」など、販売ジャンルによって必要な手続きや届け出先は異なります。
これらの許可を取らずに営業をはじめてしまうと、罰金や懲役といった法的なリスクが発生することもあるため、開業前の確認は必須です。
必要な許可を取得できたら、税務署へ「個人事業の開業届」を提出し、正式に事業をスタートさせましょう。また、ショップのWebサイトには「特定商取引法に基づく表示」「プライバシーポリシー」「利用規約」の3点を掲載する必要があります。
サイトデザインと商品登録をおこなう
ネットショップを立ち上げる際は、「サイトの見た目」と「商品情報の整理」が売れ行きを左右する重要なポイントになります。
まずデザイン面では、ショップの世界観やターゲット層に合わせた色使いやフォント、レイアウトを選ぶことが基本です。たとえば、ナチュラル系の商品ならやわらかい配色でまとめたり、若年層向けならポップなデザインにしたりと、第一印象で好感を持たれる工夫が重要です。
また、メニューやボタンの位置がわかりやすいと、ユーザーの迷いも減り、購入までスムーズに進めます。スマホでの閲覧にも対応した「レスポンシブデザイン」にしておくと、見やすさもアップするでしょう。
そして商品登録では、「商品名・説明文・価格・画像・在庫数」といった基本情報を丁寧に入力していくのがポイントです。説明文には検索されやすいキーワードを自然に盛りこむとと、検索エンジンからのアクセスも増えやすくなります。
またさらに、ジャンルや用途ごとにカテゴリを整理しておくと、ユーザーが欲しい商品にたどり着きやすくなります。
とくに商品画像はとても重要で、1枚だけでなく「複数の角度からの写真」や「使用イメージ」を載せておくと、購買意欲を後押しします。
決済・配送設定を完了させる
ネットショップをはじめるにあたっては、「どのような決済方法を導入するか」「どの配送手段を使うか」といった設定も重要です。
決済方法では、クレジットカードをはじめ、銀行振込・代金引換・コンビニ払い・ID決済・後払いなど、複数の選択肢を用意しておくのがおすすめです。とくにクレジットカード決済は利用者が多く、対応しているだけで購入のハードルが下がるケースも少なくありません。
配送方法については、商品のサイズや重さ、温度管理の必要性などをふまえて、適した配送業者を選ぶことが大切です。ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便など、それぞれのサービス内容や料金体系を比較し、自社にとって最適なバランスを探りましょう。
また、配送料の設定(全国一律・地域別・一定金額以上で無料など)も、購入率に影響するため、ショップの利益率とのバランスを見ながら、無理のない範囲で決めておくことが重要です。
集客と販促の準備を整えて公開する
ネットショップを公開する前に、「どうやってお客さんに来てもらうか」「どうすれば買ってもらえるか」を考えることも大切です。
開店初日からの売上を目指す場合、事前準備が極めて重要となります。たとえば、SNSでフォロワーにプレオープンの案内をしたり、ターゲット層に向けたプレスリリースを出したりすることも効果的です。インフルエンサーによる紹介も、話題喚起に有効です。
また、「初回購入で割引」「送料無料キャンペーン」などの特典を用意しておくと、購入のハードルを下げやすくなります。広告を出す場合は、InstagramやGoogle広告など、自社商品のイメージに合う媒体を選びましょう。
さらに、トラブルが起きたときに慌てないよう、あらかじめ対応マニュアルをつくっておくと安心です。
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モール型ネットショップの開業におすすめのサービス
ネットショップの開業方法にはさまざまな選択肢がありますが、初期費用をおさえつつ集客力も確保したい場合は「モール型サービス」の活用が有効です。ここでは、モール型ネットショップの開業におすすめのサービスを紹介します。
Amazon|圧倒的な集客力と信頼感で初心者にもおすすめ
Amazonは世界中に3億人以上のユーザーを持つ大手ECモールで、商品を出品すればすぐに多くの人の目に触れるチャンスがあります。
さらに、FBA(フルフィルメント by Amazon)という仕組みを使えば、商品の保管・配送・カスタマー対応・返品処理まで、面倒な作業の大部分をAmazonが代行します。販売者は在庫を送るだけで、運営業務の手間を大きく減らせることがポイントです。
加えて、新規出品者向けには「FBA配送料の15,000円分割引」「保管料や返送料の一定期間無料」「広告費用7,500円分のクレジット提供」など、初期費用をおさえられる特典も用意されています。
楽天市場|国内最大級のユーザー数と販促サポートが魅力
楽天市場は、国内でもトップクラスの規模を誇るECモールです。月間利用者数は数千万人規模にのぼり、集客力の高さが魅力のひとつといえます。ネットショップを立ち上げたばかりでも、多くのユーザーの目に商品が触れやすく、初心者にも心強い販売環境といえるでしょう。
また、楽天スーパーSALEやお買い物マラソンなど、全体規模の販促イベントに出店者として参加できるのも大きな特長です。自力では難しい集客や売上アップにつながるチャンスが豊富に用意されています。
さらに、出店者専用ツール「RMS(楽天市場の管理システム)」では、商品ページの作成・広告運用・アクセス分析まで一括で対応可能です。運営面のサポートも充実しており、効率良くショップを成長させやすい環境が整っています。
Yahoo!ショッピング|初期費用無料&販路拡大しやすい
ネットショップをはじめるうえで「なるべく初期費用をかけたくない」「集客に不安がある」という方には、Yahoo!ショッピングがおすすめです。
初期費用・月額利用料・売上ロイヤリティがすべて無料ではじめられるため、コストをおさえてネット販売にチャレンジしやすいのが大きな特徴です。また、Yahoo! JAPANやPayPay、LINE、SoftBankといったグループの強力な集客基盤と連携しているため、開業直後でも多くのユーザーに商品を見てもらいやすい環境が整っています。
さらに、メルマガ配信・SNS連携・外部リンクの設置など、無料で使える販促機能も豊富です。
参考:Yahoo!ショッピング「ネットショップ開業ならヤフーショッピング」
メルカリShops|個人でもかんたんにはじめられる新興モール型サービス
メルカリShopsは、フリマアプリ「メルカリ」内で自分のお店を開けるサービスです。初期費用や月額利用料は一切かからず、かかるのは商品が売れたときの販売手数料(10%)と振込手数料のみとなります。コストをおさえて気軽にはじめられるのが魅力です。
さらに、メルカリの利用者数は2,200万人以上と非常に多く、商品を出品した直後から多くの人の目に留まりやすい点も安心材料です。クーポンやタイムセール機能、冷蔵配送対応など、売上につながる機能も備わっています。
スマートフォンから短時間で申請できるため、はじめてネット販売をおこなう方でも無理なくはじめられます。
参考:メルカリShops
自社型ネットショップの開業におすすめのサービス
ネットショップを自社運営する場合、デザインの自由度や利益率の高さを重視できるのが大きな魅力です。ここでは、自社型ネットショップを立ち上げる際におすすめの構築サービスについて紹介します。
BASE|無料ではじめられる初心者向けの王道サービス
初期費用をおさえて手軽にネットショップを開業したい方に適しているのが、カート型ネットショップ作成サービスのBASEです。初期費用・月額利用料ともに完全無料で、最短30秒でショップ開設が可能です。操作もシンプルでわかりやすく、パソコンが苦手な方でもスマートフォンからスムーズに管理できます。
デザイン面では、豊富な無料テンプレートから選ぶだけでプロのようなショップが完成します。さらに、HTML編集Appを活用すれば細部のカスタマイズにも対応できます。InstagramやYouTube、Google広告などとの連携機能も備えており、SNSを活用した集客にも強いのが魅力です。
プランは、商品が売れるまでは費用がかからないスタンダードプランと、販売手数料をおさえたい方向けのグロースプランから選択可能です。Pay ID連携やポップアップ出店サポートなど、運営を支える機能も充実しています。
参考:BASE
STORES|デザインの自由度が高く、低コスト運営が可能
STORESは、初期費用・月額固定費なしではじめられる手軽さが魅力のネットショップ作成サービスです。
無料プランでも豊富なテンプレートが利用可能で、直感的な操作により、HTMLやCSSの知識がなくても個性を反映したショップを構築できます。はじめての方でも無理なくはじめられる点が大きな特長です。
さらに、有料のベーシックプラン(月額2,980円〜)を利用すれば、独自ドメインの設定やロゴの非表示、アイテム動画の掲載といったブランディング強化にも対応。より本格的なショップづくりが可能になります。
クレジットカード・コンビニ払い・PayPay・Amazon Payなど、多様な決済手段に対応しているため、販売機会の拡大につながる点も特長のひとつです。加えて、予約販売やデジタルコンテンツの取り扱いにも対応しているので、幅広いビジネスモデルに柔軟に対応できます。
参考:STORES
カラーミーショップ|中級者以上向けのカスタマイズ性が魅力
ショップの世界観を明確に表現したい方や、将来的な機能拡張を見据えている方には、カラーミーショップがおすすめです。
このサービスは、HTMLやCSSを使った本格的なデザイン編集が可能で、無料テンプレートをベースに独自のUIを作りこむことができます。そのため、デザイン性を重視する中級者以上のユーザーにも対応しやすいのが特長です。
また、卸売り・定期便・予約・デジタルコンテンツ販売といった多様な販売形態にも対応しています。BtoB展開や事業フェーズの拡大にも柔軟に対応できる仕様です。
プランによっては、Amazon連携や独自ドメイン設定、会員限定コンテンツの配信といった高度な機能も利用可能です。とくにラージ・プレミアムプランでは容量制限が緩和されており、大規模なネットショップ運営にも適しています。
参考:カラーミーショップ
MakeShop|大規模運用に適した高機能型ASP
MakeShopは、GMOインターネットグループが提供する高機能型のネットショップ作成サービスです。年間流通額12年連続No.1の実績を誇っており、信頼性や導入実績の面でも安心して選べるサービスといえるでしょう。
標準機能は600種類以上あり、BtoC(一般消費者向け)だけでなく、法人間取引(BtoB)や社員向け販売(BtoE)など、さまざまな販売形態にも対応できます。定期購入や予約販売、多店舗展開、越境ECといった多様なニーズにも柔軟に対応できるのが大きな特長です。
料金プランは、月額13,750円(税込)から使える「プレミアムプラン」と、さらに拡張性の高い「エンタープライズプラン」の2種類です。どちらも販売手数料がかからず、無料のデザインテンプレートやHTML・CSSを使ったカスタマイズにも対応しているため、ブランドイメージにこだわりたい方にもおすすめです。
また、開業から運営までを支える専任アドバイザーによるサポートも受けられるため、はじめての方でも安心してネットショップをはじめられます。
参考:MakeShop
Shopify|越境ECにも対応する世界標準のプラットフォーム
Shopifyは、世界中の事業者に選ばれているコマースプラットフォームです。自社型ネットショップの構築に対応しており、オンライン販売だけでなく、実店舗での決済にも対応可能です。SNSやECモールとの連携もスムーズで、BtoBの卸売りやサブスクリプション販売といった多様なビジネスモデルにも柔軟に対応できます。
なかでも「Shopify Markets」という機能では、多言語・現地通貨・ローカルドメインといった越境ECに必要な要素を一括で管理でき、海外展開も視野に入れた運用がしやすくなっています。
さらに、13,000以上のアプリが揃う「Shopify App Store」を活用すれば、機能の拡張も自由自在です。料金は月額3,650円のBasicプランからスタートでき、事業の成長に合わせて上位プランへの移行もできます。
参考:Shopify
FC2ショッピングカート|広告なしの無料プランで運用コストを削減
FC2ショッピングカートは、無料ではじめられる自社型ネットショップ構築サービスです。
初期費用・月額費用・販売手数料がすべて無料で利用でき、フリープランでも広告が表示されないのが魅力です。
商品登録数に上限はなく、物販はもちろん、動画・音楽・電子書籍などのデジタルコンテンツ販売にも対応しています。定期購入やサブスク、クーポン発行、年齢認証といった便利機能も揃っており、ビジネスの幅を広げられるでしょう。
さらに、HTMLやCSSを活用した本格的なデザインカスタマイズが可能で、ブランドの世界観を重視したい方にもおすすめです。PayPalなどの多様な決済手段にも対応しているため、ネットショップ初心者から本格運営を目指す方まで、幅広く活用できるサービスといえるでしょう。
参考:FC2ショッピングカート
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ネットショップの開業にかかる費用
ネットショップを開業する際には、商品仕入れやサイト制作、システム利用料、集客費用など、さまざまな費用が発生します。ここでは、ネットショップ開業時に必要な主な費用項目についてくわしく紹介します。
サイト作成やデザインにかかる初期費用
ネットショップを立ち上げる際、サイト作成やデザインにかかる初期費用は、利用するサービスや構築方法によって大きく変わります。。
たとえば、BASEやSTORES、カラーミーショップ(フリープラン)などを利用すれば、初期費用をかけずに開業できる場合もあります。一方で、デザインの外注や本格的なカスタマイズを希望する場合は、数万円〜数十万円の制作費がかかることもあるため、事前に把握しておくことが大切です。
さらに、独自ドメインの取得費用やロゴ制作の外注費なども発生する可能性があるため、見落としやすいポイントまで含めて予算を組んでおきましょう。
商品仕入れ・在庫管理にかかる費用
ネットショップを運営するうえで、仕入れや在庫の管理は大きなコスト要因となります。どれくらいの資金が必要になるかは、取り扱う商品の単価や販売目標によって異なります。
たとえば、月商30万円を目指す場合、1個あたりの原価が2,000円の商品を100個仕入れると、仕入れだけで約20万円の資金が必要になります。このように、販売計画と原価のバランスを見ながら、必要な資金を見積もることが重要です。
また、在庫リスクをおさえたい場合には、少量からの仕入れにとどめる方法や、在庫を持たずに販売できる「ドロップシッピング」の活用も効果的です。初期費用をかけずにはじめられるため、ネットショップ初心者でも挑戦しやすい販売スタイルといえるでしょう。
さらに、仕入れた商品を自社で保管せずに外部倉庫を利用する場合は、月額で数万円の保管費が発生することもあります。
月額システム利用料と維持コスト
ネットショップを運営するうえで、「月額システム利用料」やそのほかの維持コストも見落とせない重要なポイントです。
たとえば、BASEやSTORESといった無料のASPサービスでは、月額費用がかからず手軽にスタートできます。しかし、じっさいには売上ごとに「決済手数料」や「販売手数料」が発生し、取引が増えるほどコストも膨らみやすくなります。とくに、手数料が「6.6%+30円」の場合、客単価が低いと1回あたりの負担が大きくなり、想定より利益が残りにくくなるケースも少なくありません。
一方で、有料サービスでは月額3,000〜13,000円ほどの固定費が必要ですが、販売手数料がかからないか、非常に低く設定されていることが多いのが特徴です。一定の売上が見込める店舗であれば、トータルの運営コストをおさえやすい傾向があります。
さらに、独自ドメインの取得費用やサーバーの維持費、システムオプションの追加料金なども発生するため、事前に全体のランニングコストを整理しておくことが大切です。
撮影・梱包・配送にかかる備品費
ネットショップを運営するうえで、撮影や梱包、配送に必要な備品費は意外と見落としがちですが、実は非常に重要なコストです。
まず撮影機材については、スマートフォンでも代用できますが、商品の魅力をしっかりと伝えたい場合は、デジカメ・照明・背景紙・三脚などの撮影ツールをそろえるほうがよいでしょう。とくに照明機材があると、自然光に左右されず安定した環境で撮影ができます。機材によっては数千円から購入できるため、予算に応じて検討してみましょう。
梱包に使う資材には、ダンボールや宅配袋、クッション封筒、緩衝材などさまざまな種類があります。商品サイズや形状に合ったものを使い分けることが重要で、とくにギフト対応や破損防止を意識した丁寧な梱包は、顧客の満足度にも直結します。資材はまとめ買いをすると単価をおさえやすく、初期費用としては数千円ほどを見込んでおくと安心です。
また、配送作業をスムーズに進めるためには、宛名ラベルを印刷するプリンターや宛名作成ソフトの導入も効果的です。
広告・SNS運用など集客のための費用
ネットショップをはじめたばかりの方にとって、「どうやってお客さんを集めたらいいのかわからない」という悩みは非常に多く見られます。
商品を用意してサイトを公開しただけでは、なかなかアクセスは集まりません。そこで必要になるのが、広告やSNSを活用した集客施策です。広告には、リスティング広告・ディスプレイ広告・SNS広告・アフィリエイト広告など複数の手法があり、商材やターゲット層に合わせて選ぶことが重要です。
なかには、数十円からはじめられるクリック課金型の広告もありますが、広告出稿には継続的な費用が発生するため、売上目標や購買率、平均客単価をもとに計画的に予算を設定する必要があります。
一方、無料ではじめられるSNS運用やコンテンツSEOも選択肢のひとつですが、こちらは効果が出るまでに時間がかかる傾向があり、数か月単位での継続的な投稿が求められます。
まずは、自社の商品やサービスに合った集客手段を見極め、少額から段階的に投資を進めるのが現実的です。
補助金・助成金でカバーできる費用項目
ネットショップの開業費用は、国や自治体が実施する補助金・助成金制度を活用することで軽減できる場合があります。代表的な制度には、「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」などがあり、それぞれ対象経費や補助率に違いがあります。
たとえば、「小規模事業者持続化補助金」では、販路拡大を目的としたWebサイトの制作費やネット広告費が補助の対象になります。また、「IT導入補助金」では、ECサイト構築に必要なITツールや業務効率化を目的としたソフトウェア導入費用なども含まれます。
ただし、どの制度も事前の申請と事業実施後の報告が必須となるほか、補助金の上限額や対象要件にも制限があります。
ネットショップ開業に必要な手続き
ネットショップを開業する際には、商品の準備やサイト構築だけでなく、法的な手続きや税務申告に関する対応も欠かせません。ここでは、ネットショップをはじめるうえで必要となる主な手続きについて解説します。
個人事業主として開業届を提出する
ネットショップを本格的にはじめる場合は、「個人事業の開業届」を提出しておくことが望ましいです。開業届とは、事業の開始を税務署に知らせるための書類です。原則として、事業開始から1か月以内に所轄の税務署へ提出する必要があります。提出は無料で、郵送やe-Tax(電子申請)にも対応しています。
この届け出をおこなうことで、正式に「事業者」として認められ、確定申告や青色申告といった手続きもスムーズにできるようになります。
あわせて、2023年10月から導入されたインボイス制度への対応も確認しておきましょう。サービスによっては、適格請求書発行事業者として登録していないと取引ができない場合や、顧客から選ばれにくくなるケースがあります。とくに法人との取引やモール出店を考えている方は、売上規模や販売先に応じて早めに登録を検討することが大切です。
青色申告を希望する場合は申請書を提出する
副業や本業としてネットショップをはじめる場合、節税や確定申告の面で有利に進めたいと考える方は多く見られます。
そのような方におすすめなのが「青色申告」です。青色申告をおこなうには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。最大65万円の特別控除を受けられるほか、赤字の繰越控除など節税面で多くのメリットが期待できます。
申請は、事業開始から2か月以内またはその年の3月15日までが期限です。開業届とあわせて申請しておくことで、手続きを効率的に進めることができます。
また、青色申告では複式簿記による帳簿づけが条件になりますが、最近はクラウド会計ソフトの活用により、簿記に関する知識があまりない方でも対応しやすくなっています。とくに、売上規模の拡大が見込まれるネットショップ運営においては、青色申告の節税効果が大きくなりやすいため、本格的に収益化を目指す場合は早めに準備を進めることが重要です。
販売商品に応じて必要な許可・届け出を確認する
ネットショップで扱う商品によっては、販売をはじめる前に特定の許可や届け出が必要になるケースがあります。
たとえば、食品を販売する場合には「食品衛生責任者」の資格取得に加え、「営業許可」が求められます。中古品を取り扱うなら「古物商許可」、酒類を扱う場合は「通信販売酒類小売業免許」が必要です。また、化粧品を製造・販売する際には「製造業許可」や「製造販売業許可」の取得が義務づけられています。
こうした手続きを怠ったまま販売をおこなうと、行政からの指導や営業停止、さらには罰則を受ける可能性もあるため注意が必要です。商品ジャンルによって適用される法律や申請先は異なるため、不明点がある場合は、事前に自治体や所轄の官公庁へ相談しておくとよいでしょう。
成功するネットショップの運営のポイント
ネットショップを立ち上げた後、安定した売上を築くには運営面での工夫が欠かせません。ここでは、ネットショップ運営を成功に導くためにおさえておきたいポイントについて紹介します。
集客チャネルを多角的に展開する(SNS・SEO・広告)
ネットショップの売上を安定させるには、「集客チャネルを多角的に活用する」意識が大切です。とくに効果的とされるのが、SNS運用・SEO対策・Web広告の3つです。
SNSでは、InstagramやX(旧Twitter)などを使い、商品やブランドの世界観を継続的に発信することでファンの獲得につなげやすくなります。SEO対策は、検索エンジンからのアクセスを継続的に呼びこめる手法で、信頼性の高いサイトづくりにも貢献します。一方で、Web広告は即効性が高く、ネットショップの立ち上げ直後や新商品リリース時の認知拡大におすすめです。
こうしたチャネルは、どれかひとつに偏るのではなく、段階的に併用していくのが理想的といえるでしょう。
商品やショップの世界観を統一してブランディングする
ショップの魅力をしっかり伝えるには、「商品」と「デザイン」の世界観をそろえるのが効果的です。
写真の雰囲気や配色、フォント、コピー文のトーンまでコンセプトに沿って統一できていると、訪問者の印象に残りやすくなります。たとえばナチュラル系の商品を扱っている場合は、自然光や木目の背景を使って撮影し、やわらかい色味のデザインにすることで、やさしい雰囲気が伝わりやすくなります。
この世界観の統一は、Webサイト内だけでなく、SNSやメールマガジンなどの外部発信でも意識することがポイントです。どこで見かけても「このブランドらしい」と思ってもらえるようになると、ファンづくりにもつながるでしょう。
購入導線の最適化と使いやすいUI設計をおこなう
ネットショップの売上が伸び悩んでいる場合、購入までの導線やUI設計に原因があるケースが少なくありません。
たとえば、「カートに入れる」ボタンの位置が不明確であったり、購入完了までの手順が多すぎたりすると、ユーザーが途中で離脱する可能性があります。このような場合、興味を持ったユーザーを逃してしまうでしょう。
購入率を高めるためには、ユーザーが迷わず商品を探してスムーズに決済まで進められるよう、サイト全体の導線をシンプルに整えることが重要です。カテゴリ分けや検索機能の充実、購入ボタンの配置、カートへの移動のしやすさなど、一つひとつの要素を見直してみましょう。
さらに、スマートフォンからの利用も意識したレスポンシブ対応や、視認性の高い文字サイズ、指で押しやすいボタン設計など、モバイルユーザーの操作性にも配慮することが大切です。
ユーザー目線で使いやすさを追求していくことが、ネットショップの売上アップにつながります。
顧客対応とレビュー管理で信頼感を高める
ネットショップでは実店舗のような対面接客ができないため、顧客との信頼関係を築くうえで「丁寧な対応」と「レビュー管理」が重要な役割を果たします。
購入後の問い合わせやクレーム対応では、迅速かつ誠実な姿勢がポイントです。しっかり対応することで「このショップなら安心できる」という印象を与え、リピーターの獲得にもつながります。
また、レビュー欄は新規顧客にとって購入判断の材料になります。好意的なコメントには感謝の言葉を、ネガティブな内容には冷静に対応し、改善策を提示することで、誠実なショップ運営が伝わりやすくなるでしょう。投稿されたレビューを分析し、商品やサービスの改善に活かす姿勢も評価につながるポイントです。
さらに、レビュー依頼のメールを送ったり、投稿者にクーポンなどの特典を提供したりすることで、レビュー数の増加も期待できます。
リピーターを獲得する仕組みをつくる(メルマガ・特典)
ネットショップで安定した売上を築くには、「リピーター」の存在が欠かせません。すでに購入実績のある既存顧客は、新規顧客よりも再アプローチしやすく、費用対効果の面でも優れています。
リピーターを増やすためには、メルマガを活用して新商品の案内や限定セール、クーポンなどの情報を継続的に発信する仕組みが効果的です。こうしたアプローチは、再訪や再購入のきっかけづくりとして機能します。
さらに、誕生日クーポンやレビュー投稿者への特典など、顧客の行動に応じたインセンティブも有効です。購入後の満足度を高めるとともに、継続的な利用を後押しする要素となります。
また、単品購入で終わらずに繰り返し購入される「リピート商品」を用意することも効果的です。たとえば日用品や食品など定期的に消費される商材や、シリーズ展開で継続購入を誘導できるアイテムを取りそろえることで、自然にリピーターが増えやすくなります。
加えて、顧客の属性や購買履歴に応じて内容をパーソナライズし、特別感のあるコンテンツを配信することで、より深い信頼関係の構築が可能になります。
在庫管理・コスト管理を効率化する
在庫やコストの管理も、ネットショップ運営において非常に重要なポイントです。
在庫が多すぎると保管スペースを圧迫したり、無駄なコストがかかったりする一方で、在庫切れは販売機会の損失を招くリスクがあります。こうした問題を防ぐには、在庫状況をリアルタイムで把握できる体制を整えておくことが大切です。
手作業で管理する場合はExcelでも対応できますが、商品数が増えるとヒューマンエラーや作業負担が増加しやすくなります。とくに複数店舗を運営している場合は、在庫管理システムの導入がおすすめです。管理ツールを使えば、在庫の一元管理に加えて受注・出荷の自動処理も可能となり、業務全体の効率化が期待できます。
さらに、在庫を持たずに販売できる「ドロップシッピング」も、保管コストをおさえたい方には有効な選択肢です。
炎上やトラブルを未然に防ぐリスク管理も重視する
ネットショップを運営するうえでは、商品の品質や集客だけでなく、トラブルを未然に防ぐ「リスク管理」も欠かせません。とくにSNSを活用している場合は、何気ない投稿が思わぬ炎上につながるケースもあるため、注意が必要です。
まず対策として取り組みたいのが、SNSガイドラインの策定と社内共有です。投稿ルールを明確にし、運用担当者には事前にリスク対応の教育をおこなうことで、トラブル発生の芽を早い段階で摘むことができます。
加えて、投稿内容のダブルチェック体制を整えておくと、誤解を招く表現や誤情報の拡散を防ぎやすくなります。最近では、炎上リスクを早期に察知できるモニタリングツールの導入も進んでおり、万が一に備えて対応マニュアルや連絡フローを用意しておくと安心です。
ネットショップは「売ること」だけでなく、「守ること」も大切です。
開業の流れをおさえて、スムーズにネットショップをはじめよう
ネットショップをスムーズに開業するには、商品ジャンルの選定から販売チャネルの決定、必要な届け出やサービス選びにいたるまで、事前に流れをしっかり把握しておくことが重要です。まずは「誰に何を届けたいか」というコンセプトを明確にし、それに基づいて商品を仕入れたり制作したりする準備を進めましょう。
次に、自社サイトかECモールのどちらで販売をはじめるかを選定し、構築サービスを登録・設定していきます。さらに、許可申請や開業届などの法的手続きを忘れずにおこない、サイトデザインや商品登録、決済・配送の設定を済ませたら、いよいよ公開です。
集客施策も同時に整えておくことで、オープン初日からの成果が期待できます。これらのステップを順におさえ、無理のない計画でネットショップをスタートさせましょう。
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ネットショップ開業には、資金調達、許可申請、税務処理、マーケティング戦略など、専門知識が必要な課題が数多くあります。一人ですべてを解決しようとすると、重要なポイントを見落としてしまい、開業後に大きな問題となる可能性があります。
ドリームゲートでは、ネットショップ開業に精通した専門家が、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスを無料で提供いたします。開業準備をスムーズに進めるために、ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
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