【中小企業向け】新事業進出補助金とは?概要・公募スケジュール・申請のコツまで徹底解説

この記事は2025/05/23に専門家 坂井 優介 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
この記事の監修者
坂井 優介(さかい ゆうすけ)
補助金・起業コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社
税理士法人V-Spiritsグループの元補助金審査員の三浦が率いる補助金の専門家チームの新事業進出補助金を担当。元審査員の三浦から直々に申請テクニックや事業計画書の作成のコツを伝授され、高い採択率と細やかなサポートでクライアントの補助金活用を長年アシストし続ける。事業再構築補助金 50件 ものづくり補助金 20件 持続化補助金 10件を担当。補助金の選定から書類作成、申請、入金までフルサポート。全国対応・無料相談あり。補助金申請はV-Spiritsにお任せください。
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「新しい事業に挑戦したいけど、資金調達がむずかしい」といった課題を抱える中小企業も少なくないでしょう。変化の激しい時代のなかで、中小企業が持続的に成長していくためには、新市場への進出や新たな事業分野への挑戦は重要です。
本記事では、新事業に挑戦する中小企業を後押しする制度である、「中小企業新事業進出補助金」の概要から基本要件、必要な準備までわかりやすく解説します。中小企業新事業進出補助金は、1社で最大9,000万円の補助受けられる制度です。上手に活用することで、新事業挑戦へのハードルが低くなります。
公募のスケジュールや申請の流れ、過去に採択された事業事例までまとめているので、ぜひ補助金獲得に向けた第一歩としてご活用ください。

- 目次 -

新事業進出補助金の目的は中小企業の挑戦支援

「中小企業新事業進出補助金」は、既存の事業領域から一歩踏み出し、新たな市場や新事業に挑戦する中小企業を支援するために2025年に初めて創設されました。ここでは、中小企業新事業進出補助金の概要と、公募のスケジュールをわかりやすく解説します。

中小企業新事業進出補助金の概要

中小企業新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新たな事業分野への進出に挑戦する中小企業・小規模事業者を支援するための補助金制度です。中小企業の成長や拡大、生産性向上、従業員の賃上げの促進を主な目的としています。
制度創設の背景には、近年の人手不足や賃上げといった経済状況の変化があります。2024年まで実施されていた「事業再構築補助金」の後継制度と位置付けられている制度です。
企業の生産性向上や地域経済への貢献促進が期待されています。

【最新】中小企業新事業進出補助金の公募スケジュール

中小企業新事業進出補助金の第1回公募スケジュールは次の通りです。なお、申請受付開始や採択結果発表などの日程はまだ確定していません。

手続き 日程
公募要領公開 2025年4月22日(火)
申請受付開始 2025年6月中旬頃(予定)
公募締切 2025年7月10日(木)18:00
採択結果発表 2025年10月頃
交付申請締切 採択結果発表日から2ヵ月以内

2025年5月2日時点

第2回以降の公募については、まだ詳細な日程は発表されていませんが、2025年秋ごろに開始される見込みです。その後も年内や翌年初頭に複数回の公募が想定されますが、正式な情報は今後発表される予定です。
今後の詳細な情報は、中小企業新事業進出補助金の公式サイトを確認しましょう。

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新事業進出補助金の補助要件!中小企業が申請に必要な条件とは

「中小企業新事業進出補助金」の申請には、さまざまな要件が課されています。申請のためには、補助要件は対象経費などをしっかりと理解しておく必要がありますが、むずかしいと感じる方もいるでしょう。ここでは、補助要件など申請に必要な条件をわかりやすく解説します。

補助対象者は新規事業への挑戦を行う中小企業等

「中小企業新事業進出補助金」の補助対象者は、企業の成長・拡大に向けて新事業への挑戦を行う中小企業等です。具体的な対象者を表にまとめました。

分類 業種 資本金 常勤従業員数
中小企業 製造業、建設業、運輸業 3億円 300人以下
卸売業 1億円 100人以下
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 5,000万円 100人以下
小売業 5,000万円 50人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機用) 3億円 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円 300人以下
旅館業 5,000万円 200人以下
その他業種(上記以外) 3億円 300人以下
「中小企業等」に含まれる「中小企業者」以外の法人 ①「中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)」第2条第1項第6号~第8号に定める法人(企業組合等) 要件なし 300人以下
②「法人税法(昭和40年法律第34号)」別表第2に該当する法人(一般財団法人および一般社団法人については、非営利型法人に該当しないものも対象)
③「農業協同組合法(昭和22年法律第132号)」にもとづき設立された農事組合法人
④「労働者協同組合法(令和2年法律第78号)」にもとづき設立された労働者協同組合
⑤法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人
特定事業者の一部 ①製造業、建設業、運輸業 10億円未満 500人以下
①卸売業 400人以下
①サービス業又は小売業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 300人以下
①その他の業種(上記以外) 500人以下
②生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会 直接または間接の構成員の3分の2以上が、常時300人以下(卸売業は400人以下)の従業員を使用
③酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会 直接または間接の構成員たる酒類製造業者の3分の2以上が、常時500人以下の従業員を使用
③酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会の場合 直接または間接の構成員である酒類販売業者の3分の2以上が、常時300人(酒類卸売業者については、400人)以下の従業員を使用する者
④内航海運組合、内航海運組合連合会 直接又は間接の構成員たる内航海運事業を営む者の3分の2以上が常時500人以下の従業員を使用する者
⑤技術研究組合 要件無し 直接又は間接の構成員の3分の2以上が「上記上記①記載の事業者」または「企業組合、協同組合」

上記のほかにも「リース会社」が中小企業等で共同申請が認められており、機械装置やシステム購入費用への補助金交付が可能です。なお、次のような事業者は補助対象外となります。

  • 本社や補助事業実施場所が日本国外にある事業者
  • 過去16か月以内に本補助金、事業再構築補助金、ものづくり補助金で採択済または実施中の事業者
  • 従業員が0名の事業者(賃上げ目的のため)
  • 創業1年未満(決算1期分がない)事業者
  • 「みなし大企業」(大企業が株式等を過半数保有、役員過半数派遣など)
  • 親子・グループ企業で資本関係があり、連結で基準を超える場合
  • 反社会的勢力、公序良俗違反、風営法対象、補助目的に沿わない資産運用業など

詳細は公募要領の8~11ページを参照してください。

補助上限額は従業員数や特例適用の有無によって異なる

中小企業新事業進出補助金の補助上限額は「従業員数」と「大幅賃上げ特例の適用有無」によって異なります。従業員数ごとの通常上限額は、次の通りです。

従業員数 補助上限額
20人以下 750~2,500万円
21~50人 750~4,000万円
51~100人 750~5,500万円
101人以上 750~7,000万円

中小企業新事業進出補助金には、「大幅賃上げ特例」が設定されており、条件を満たすことで補助上限額がさらに上乗せされます。特例適用の場合の補助金額は、次のようになります。

従業員数 補助上限額
20人以下 750~3,000万円
21~50人 750~5,000万円
51~100人 750~7,000万円
101人以上 750~9,000万円

大幅賃上げ特例の要件は次の通りです。

  • 給与支給総額を年平均6.0%以上増加させること
  • 事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げること

補助事業の実施期間内に両方の条件を満たす必要があり、目標を達成できなかった場合は、上乗せ分の補助金全額返還義務があるので注意しましょう。ちなみに、補助率は一律で「1/2」で、補助対象経費の半分が補助されます。

6つの基本要件を満たすことで新事業進出補助金を活用できる

中小企業新事業進出補助金は、6つの基本要件をすべて満たす3~5年の事業計画に取り組むことで活用できます。6つの基本要件は次の通りです。

要件 内容
新事業進出要件 新事業進出指針に示す「新事業進出」の定義に該当する事業であること。以下の3つの要件をすべて満たす必要がある。

①製品等の新規性要件
②市場の新規性要件
③新事業売上高要件

付加価値額要件 付加価値額(または従業員一人あたりの付加価値額)の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みがあること
賃上げ要件
【目標未達成で補助金返還義務あり】
・一人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、または給与支給総額の年平均成長率が2.5%以上増加すること
・応募申請時までにすべての従業員等に表明する必要がある
事業場内最賃水準要件
【目標未達成で補助金返還義務あり】
事業所内最低賃金が、地域別最低賃金より30円以上高い水準であること
ワークライフバランス要件 次世代育成支援対策推進法にもとづく一般事業主行動計画を公表すること
金融機関要件 金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること

「賃上げ要件」にある「事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率」は次の通りです。

出典:中小企業新事業進出促進補助金公募要領|独立行政法人中小企業基盤整備機構|15ページ

上記の条件をすべて満たす事業計画をもって申請することで、補助金の対象となります。「賃上げ要件」と「事業内最賃水準要件」は、達成できないと補助金返還義務が発生するため、実現可能な計画かどうか十分に検討しましょう。

補助事業期間は14か月以内で補助対象経費に助成される

中小企業新事業進出補助金の補助事業期間は、「交付決定日から14ヵ月以内(ただし採択発表日から16ヵ月以内)」です。つまり「交付決定日から14ヵ月」かつ「採択発表日から16ヵ月以内」のいずれか早い日まで、という意味です。
補助対象となる経費は、次のように定められています。

補助対象経費 具体例
機械装置・システム構築費 補助事業専用の機械、工具、ソフトウェア等の購入・製作・リース費用、関連する改良・据付・運搬費用など
建物費 新事業のための建物の建設・改修・撤去費用(建物の購入や賃貸は対象外)
構築物費 必要な構築物の建設費用(インフラ整備等)
運搬費 設備や製品などの運搬にかかる費用
技術導入費 他者の知的財産権導入や技術指導のための費用(ライセンス料等)
知的財産権等関連経費 特許出願等にかかる弁理士費用や翻訳費用(補助事業成果に基づくものに限る)
外注費 補助事業に必要な加工・検査・設計等の外部委託費(補助金全体の10%が上限)
専門家経費 必要不可欠な専門家(大学教授・中小企業診断士など)への謝金・旅費(上限100万円)
クラウドサービス利用費 補助事業専用で利用するクラウドサービスの使用料(サーバー利用等)
広告宣伝・販売促進費 チラシ・パンフレット・動画・ウェブサイト制作、展示会出展等の費用(上限あり)

注意点として、「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかは必ず含める必要があります。また、経費が補助事業専用であり、かつ証拠書類(見積書や契約書など)で妥当性が確認できることが条件です。
「家賃」や「汎用的な備品」など補助対象外となる経費も多いため、公募要領の24~30ページで詳細をご確認ください。

審査結果や取得財産についての注意事項もおさえよう

中小企業新事業進出補助金は要件に沿った内容で応募しても、審査を必ずしも通過できるわけではありません。また、補助金交付後の取得財産の扱いについても注意事項があります。審査結果や取得財産の注意事項をおさえたうえで、補助金の申請や管理を行う必要があります。
審査結果に関する注意事項は、次のようなものです。

  • 採択された場合でも、実際の交付決定はその後の「交付申請」での提出書類の審査や経費の精査を経て補助対象経費が決まる
  • 交付申請時に経費の内容が精査され、経費区分が変更されたり、一部または全部が補助対象外と判断される場合もある
  • 基本的に審査は書面審査で行われるが、事務局と電話などでやり取りを行う場合もある

補助事業で取得した財産(設備、システムなど)についての注意事項もおさえておきましょう。

  • 補助事業で取得した財産は、補助事業専用で使用する必要がある(既存事業やほかの用途で使用すると、補助金返還を求められる可能性がある)
  • 補助事業で取得した財産には処分制限がかかる(譲渡、貸付、担保、廃棄などを行う場合は、残存簿価格相当や譲渡額等に応じて補助金返還が求められる)
  • 事業終了後も、取得財産の管理や事業化状況の報告(5年間)が義務付けられる

「採択=即交付決定」でないことや、取得財産の取扱によっては返還義務が発生する点などに注意して、補助金の申請や活用をしましょう。注意事項については公募要領の36~41ページをご参照ください。

中小企業新事業進出補助金のメリット・デメリット

中小企業新事業進出補助金は、企業の新事業への挑戦や新市場への進出を後押ししてくれる魅力的な補助金です。メリットの多い補助金といえますが、デメリットといえる部分もあります。メリットとデメリットの両方を把握したうえで、申請をご検討ください。

新事業進出補助金のメリット

中小企業新事業進出補助金のメリットは次の通りです。

  • 補助率1/2、最大9,000万円と資金面での大きなサポート
  • 新市場参入リスクの軽減
  • 幅広い補助対象経費
  • 収益納付が不要
  • 企業イメージの向上や公共調達での加点
  • 雇用創出・地域経済への貢献

中小企業新事業進出補助金の大きなメリットとして、高い補助率と補助金額が挙げられます。高額の補助が得られるため、自己資金負担を大幅に減らせます。初期投資リスクを分散して、新市場に挑戦しやすい環境を整えられることもメリットです。
また、幅広い補助対象経費により、柔軟な資金活用が可能なことや、新規事業で収益が出ても返還義務が発生しない店も魅力でしょう。補助金採択は企業イメージの向上につながったり、新事業による雇用創出や地域経済に貢献したりする効果も期待できます。

新事業進出補助金のデメリット

中小企業新事業進出補助金のデメリットといえる部分は次の通りです。

  • 採択率が低い可能性がある
  • 事業計画書の作成が負担、手続きが煩雑
  • 補助金は原則後払い
  • 目標未達成時の返還リスク

中小企業新事業進出補助金の採択率は15%前後と予想されており、申請しても不採択となる可能性が高いといえます。

ア 公募回ごとの事業者数
• 応募事業者は約10,000者/公募回を想定する。
• 交付採択事業者は約1,500者/公募回を想定する。

引用元:新事業進出補助金システム システム要件定義書|独立行政法人 中小企業基盤整備機構|9ページ(最終閲覧日2025年5月2日)

また、詳細な事業計画書や多くの証拠書類が必要になり、作成に時間と労力がかかります。補助金は原則後払いで、事業完了・実績報告後に補助金が支払われるため、事業開始時には資金繰りに注意が必要です。
賃上げや付加価値額などの目標を達成できなかった場合は、補助金の返還義務が発生することもデメリットといえます。

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中小企業新事業進出補助金の申請前に必要な準備

中小企業新事業進出補助金の申請前に十分に準備を済ませることで、スムーズに手続きが行えます。ここでは、中小企業新事業進出補助金の申請前にしておくべき準備について解説します。

補助金の公募要領をしっかり理解する

中小企業新事業進出補助金の申請前に、補助金の公募要領への理解を深めておきましょう。公募要領には、次のような内容が詳しくまとめられています。

  • 補助対象者の要件
  • 補助対象経費
  • 申請方法
  • 事前計画の要件
  • 必要書類
  • 審査基準
  • 禁止事項

申請に必要な情報が網羅されているため、公募要領を十分に読み込みましょう。内容を正しく理解しておくことで、申請書類の不備や要件未達による失格を防げます。

補助金要件に沿った事業計画を作成する

補助要件に沿った事業計画を作成することも、申請前に必要な準備です。上述した6つの基本要件をすべて満たすとともに、公募要領にある「事業計画の記載内容」に沿って作成する必要があります。事業計画書に記載すべき主な内容は次の通りです。

記載項目 内容
補助事業の具体的取組内容 補助金を活用して何を行うのか(新商品開発、設備導入、販路開拓など)、その進め方や工夫点
連携体の必要性(連携体申請の場合) 新事業が新しい市場に挑戦するものか、または従来よりも高い付加価値を生み出す内容か
新規事業の新市場性・高付加価値性 必要な構築物の建設費用(インフラ整備等)
新規事業の有望度 新事業が今後どれだけ成長・発展する可能性があるか、将来性や市場の広がり
事業の実現可能性 計画が実現できる根拠(体制・ノウハウ・資金・スケジュール)、リスクとその対応策
公的補助の必要性 なぜ補助金が必要なのか、自社だけでは実現がむずかしい理由や補助金による効果
政策面 国や自治体の政策(地域活性化、雇用創出、産業振興など)と自社の事業がどう合致しているか
補助対象予定経費 補助金を使う予定の具体的な経費(設備費、システム費、広告費など)
収益計画 新事業でどれくらい売上や利益が見込めるか、その根拠や今後の成長予測

各項目を簡潔かつ具体的に記載し、根拠や数値目標も明示することがポイントです。詳細は公募要領の33~35ページを参考にしてみてください。

GビズIDプライムアカウントを取得する

中小企業新事業進出補助金の申請は電子申請のみで行われており、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。GビズIDとは、法人代表者や個人事業主向けの共通認証システムで、1つのIDとパスワードで、補助金申請や社会保険手続きなど複数の行政サービスにアクセスできる仕組みです。
GビスIDプライムアカウントは、オンライン申請と書類郵送申請のどちらかで取得でき、どちらも公式サイトから申請を始めます。オンライン申請の申請手順は次の通りです。

  1. GビズID公式サイトにアクセスし、「GビズIDアカウントの作成をはじめる」を選択
  2. 次の画面で「プライムアカウントを申請する」を選択
  3. メールアドレスを登録し、届いたワンタイムパスワードで認証
  4. 必要事項を入力し、マイナンバーカードとスマートフォン(GビズIDアプリ)を使って本人確認
  5. 入力内容を確認し、申請完了

審査は、オンライン申請は最短即日でおすすめです。書類申請では1週間~10日ほどかかります。まだ取得していない場合は、事前にアカウントの取得手続きを済ませましょう。

一般事業主行動計画の策定・公表

一般事業主行動計画の策定・公表も、中小企業新事業進出補助金の申請前に必要な準備です。

【一般事業主行動計画とは】
「次世代育成支援対策推進法」にもとづき、企業が従業員の仕事と子育ての両立や、多様な働き方ができる雇用環境の整備を目的として策定する計画

一般事業主行動計画には、主に次の内容を記載します。

項目 内容
計画期間 通常2~5年程度の期間を設定
計画目標 仕事と子育ての両立や働きやすい職場づくりに関する具体的な数値目標
対策・実施期間 目標達成のための具体的な取り組み内容と、その実施時期

中小企業新事業進出補助金では、ワークライフバランス要件が基本要件となっているため、申請前に作成して、所定の方法で公表しておく必要があります。申請時の添付書類として、一般事業主行動計画の公表URLや計画書の提出が必要です。
公表手続きには1~2週間程度かかるため、未公表の企業は早めに作成・公表しましょう。

中小企業新事業進出補助金の申請手続きの流れ

中小企業新事業進出補助金の主な流れは、下図の通りです。

出典:中小企業新事業進出補助金|中小企業庁|2ページ

申請者が行う手続きの流れは、次のようになります。

  1. GビズIDプライムアカウントの取得、一般事業主行動計画の策定・公表
  2. 添付書類の準備・確認
  3. 事業計画の策定
  4. 電子申請システムへの入力・書類アップロード
  5. 書面審査(必要に応じて口頭審査)
  6. 審査結果の通知・公表
  7. 補助事業の実施
  8. 補助事業の終了・報告手続き

「2.添付書類の準備・確認」で必要な書類は次の通りです。

必要書類 具体的内容
決算書 会社の経営状況や財務内容(売上・利益・資産・負債など)を示す書類(直近2期分が必要)
従業員数を示す書類 現在の従業員数を証明するための書類(労働保険関係成立届や社会保険加入状況など)
収益事業を行っていることを説明する書類 会社が実際に収益事業を行っていることを示す資料(事業内容説明書や営業許可証など)
固定資産台帳 会社が保有する設備や建物などの固定資産の一覧表
賃上げ計画の表明書 補助事業期間中に設定した賃上げ目標を、従業員に周知・表明したことを証明する書類
金融機関による確認書(金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合) 補助事業の実施にあたり、金融機関等が事業計画を確認したことを証明する書類
リース料軽減計算書(リース会社と共同申請する場合) リースを利用する場合、リース料が適正に算定されていることを示す計算書
リース取引に係る宣誓書(リース会社と共同申請する場合) リース取引が補助金の要件に適合していることを誓約する書類
再生事業者であることを証明する書類(再生事業者加点を希望する事業者のみ) 法的・私的整理など再生手続き中または再生済みであることを証明する資料(裁判所の決定書等)

申請はすべて電子申請で行います。申請前に、必要書類や要件をよく確認し、誤って書類をアップロードしないようにしましょう。
交付決定後は、補助事業を実施して実績報告を行います。実績を検査されたのち、補助金の請求と受領をして完了です。
なお、補助金受領後も5年間の事業化状況報告と、取得財産の管理が必要なことも考えておきましょう。

中小企業新事業進出補助金の採択率と採択されるためのコツ

中小企業新事業進出補助金に応募する以上、採択の可能性を少しでも高めたいとお考えの方は多いことでしょう。ここでは、中小企業新事業進出補助金の採択率と、採択されるためのコツについて解説します。

採択率は15%程度になる予想

中小企業新事業進出補助金の採択率は、上述した通りおよそ15%と試算されています。ただ、数値はあくまで制度設計段階の想定地であり、実際の公募では20%前後になる可能性もあります。

中小企業新事業進出補助金の審査ポイント|新規性・実現可能性が鍵

中小企業新事業進出補助金の審査は、主に以下のポイントにもとづいて書類審査や口頭審査で評価されます。(詳しくは公募要領42~46ページ参照)

審査ポイント 概要
補助対象事業としての適格性 新事業が「自社にとって初めての内容」であり、これまで関わっていなかった新しい市場や顧客層に挑戦する計画になっているか
新規事業の新市場性・高付加価値性 新しい分野や顧客に向けた事業で、今までにない価値や利益を生み出せる内容か
新規事業の有望度 その事業が今後成長する可能性が高く、将来的に売上や利益がしっかり伸びそうか
事業の実現可能性 計画が現実的で、実行できる体制やノウハウ・資金があるか。リスクや課題への対応策も用意されているか
公的補助の必要性 補助金がなければ事業の実現が難しい理由があるか、補助金によってどんな効果が期待できるか
政策面 国や自治体の政策(地域活性化や雇用拡大など)と事業内容が合致しているか
加点・減点項目の有無 賃上げ特例や再生事業者などの加点要素、過去の不正受給等の減点要素があるか

審査では、上記の観点をもとに事業計画の内容が評価されます。特に「新規性」「実現可能性」「成長性」などが重視されるでしょう。

専門家からのサポートも検討しよう

自社で補助金申請に詳しい人材がいない場合や、初めて申請する場合は専門家のサポートを活用することが非常に有効です。専門家のサポートが重要な理由は、次の通りです。

  • 手間と時間を大幅に削減できる
  • 採択率を高められる
  • 申請期限に間に合わせやすい
  • 本業に集中できる
  • 専門的なアドバイスを受けられる

申請書類や事業計画の作成、要件確認など複雑な作業を専門家に任せることで、自社の負担を大きく減らせます。また、審査ポイントをおさえた事業計画の作成がしやすくなり、採択率を高められるでしょう。
申請期限に間に合わせたり、本業に集中できることも専門家のサポートを受けるメリットです。申請に不安がある場合は、中小企業診断士や行政書士といった専門家への支援依頼についても、検討されることをお勧めいたします。

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新事業進出補助金と併用できる中小企業向け補助金一覧

中小企業の新たな挑戦を後押しする新事業進出補助金ですが、ほかにも併用できる支援策が存在します。複数の補助金をうまく活用することで、資金調達の選択肢が広がり、より事業を進めやすくなるはずです。併用できる中小企業向けの補助金には、次のようなものがあります。

補助金 概要
ものづくり補助金 中小企業や小規模事業者が「新製品・新サービスの開発」や「生産性向上」のために行う設備投資などを国が支援する補助金制度
小規模事業者持続化補助金 小規模事業者や個人事業主が「販路開拓」や「生産性向上」のために使う費用を支援する国の補助金
IT導入補助金 中小企業や小規模事業者が業務効率化や生産性向上のためにITツール(ソフトウェア、クラウドサービス、ハードウェアなど)を導入する際、その費用の一部を国が補助する制度

ただ、原則中小企業新事業進出補助金と同一事業や同一経費での併用はできません。「既存事業にものづくり補助金を使用する」というように、明確に異なる事業や経費で活用しましょう。

【Q&A】中小企業新事業進出補助金についてよくある質問

中小企業新事業進出補助金は2025年に新設されたばかりの制度です。申請にあたって疑問や不安が残る方もいるでしょう。ここでは、中小企業新事業進出補助金についてよくある質問に答えていきます。

応募前にかかった経費は補助対象になる?

中小企業新事業進出補助金では、応募前にかかった経費は原則として補助対象になりません。補助対象となる経費は、「交付決定日以降に発生した契約・発注・支払い分」が原則です。

交付決定日より前に補助事業に係る製品の購入や役務の提供に係る契約(発注)等した経費は、補助対象になりません。

引用元:新事業進出補助金システム システム要件定義書|独立行政法人 中小企業基盤整備機構|37ページ(最終閲覧日2025年5月2日)

補助金制度全般に共通するルールですが、必ず交付決定後に事業を開始し、経費を発生させる必要があります。

事業再構築補助金との違いは?

事業再構築補助金は「既存事業の大幅な転換」や「事業再編」なども含め、より広い意味での事業変革を支援する制度です。主な違いは次の通りです。です。主な違いは次の通りです。

項目 中小企業新事業進出補助金 概要
目的 中小企業の新市場進出や新分野展開を支援 中小企業等の「新分野展開」「事業転換」「業種・業態転換」「事業再編」など大規模な事業再構築を支援
補助上限額 最大9,000万円 最大1億円(枠による)
補助率 1/2 1/2~3/4(枠や事業者区分により異なる)
要件 付加価値額増加、賃上げ、ワークライフバランス計画など 付加価値額増加、賃上げ、事業再構築指針に該当する事業内容など
対象経費 必須経費 建物費または機械装置・システム構築費が必須 なし
研修費・賃借料・撤去費 対象外 対象(条件あり)

中小企業新事業進出補助金は、新市場進出に特化している制度です。一方、事業再構築補助金は事業転換・再編も含め、補助額や補助率、対象経費などに違いがあります。

中小企業成長加速化補助金との違いは?

中小企業成長加速化補助金との違いは、主に次の通りです。

項目 中小企業新事業進出補助金 中小企業成長加速化補助金
目的 中小企業の新市場進出や新分野展開を支援 売上高100億円を目指す中小企業の大規模・大胆な設備投資や成長投資を支援
補助上限額 最大9,000万円 最大5億円
補助率 1/2 1/2
要件 付加価値額増加、賃上げ、ワークライフバランス計画など 「100億宣言」を行っていること、投資額1億円以上、賃上げ目標の設定・達成義務(未達成時は返還)、5年程度の成長計画策定
対象経費 建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、広告宣伝費など 建物費(拠点新設・増築等)、機械装置費(器具・備品含む)、ソフトウェア費、外注費、専門家経費(広告宣伝費や土地代は対象外)

中小企業成長加速化補助金は、「100億円企業」を目指す企業のみが対象で、中小企業新事業進出補助金より対象範囲が狭いといえます。補助上限額も最大5億円と、高額であることも特徴です。自社の規模や目的に応じて使い分けましょう。

中小企業新事業進出補助金を活用して新規事業に挑戦しよう

本記事では、2025年に新設された中小企業新事業進出補助金の概要について解説しました。2025年4月22日に公募要領が公開され、公募締切は2025年7月10日です。申請受付開始は2025年6月頃になる予定なので、公式サイトの情報をこまめにチェックしましょう。
中小企業新事業進出補助金を上手に活用して、自社のノウハウを活かした新事業に挑戦してみてください。

この記事の監修者
坂井 優介(さかい ゆうすけ)
補助金・起業コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社
税理士法人V-Spiritsグループの元補助金審査員の三浦が率いる補助金の専門家チームの新事業進出補助金を担当。元審査員の三浦から直々に申請テクニックや事業計画書の作成のコツを伝授され、高い採択率と細やかなサポートでクライアントの補助金活用を長年アシストし続ける。事業再構築補助金 50件 ものづくり補助金 20件 持続化補助金 10件を担当。補助金の選定から書類作成、申請、入金までフルサポート。全国対応・無料相談あり。補助金申請はV-Spiritsにお任せください。
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執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

著書:「マネして完成! 事業計画書 ~10業種36の事例で事業計画のまとめ方がよくわかる」ドリームドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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