2018年10月22~24日虎ノ門ヒルズで行われた第6回イノベーションリーダーズサミット(ILS2018)のメインイベント、大企業とスタートアップのマッチングプログラム「パワーマッチング」において、大企業から人気のスタートアップ「ILSTOP100」をご紹介します。

電子機器の熱対策における“特効薬”!
高性能放熱フィラー「AlNウィスカー」

企業紹介

執筆者: 髙橋 光二 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

少量のフィラー添加でも高い熱伝導性。
軽くて柔軟な高放熱樹脂材料を実現!

事業や製品・サービスの紹介

photo1.jpg株式会社U-MaPは、高性能放熱フィラー「AlNウィスカー」を開発し、現在、サンプル販売および量産化に向けた製造装置の開発を行っているところだ。

パソコン、スマートフォン、LEDなどの電子機器は熱を発生する。小型軽量化や処理速度アップ、ハイパワー化といった性能の向上にしたがって熱源が集中し、発熱量も高まる。熱は、故障はじめ処理速度や輝度の低下、製品寿命を早めるなどの原因となる。

発熱の主な原因は、各パーツに用いられる樹脂にある。樹脂は熱伝導性が悪く、熱が外に逃げないためだ。そこで、樹脂にはフィラーという放熱材が混ぜられる。酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)といったセラミクスが主な原料だ。

photo1.jpg熱伝導性を高めるため、従来のフィラーは樹脂に70~80%程度含ませる必要があったが、出来上がったものはほとんど“セラミクスの固まり”の状態となって、「曲がらない」「加工しにくい」「重い」といった問題が生じていた。同社が開発した「AlNウィスカー」は含有量をなんと20%程度に抑えることができ、これら問題の解消に成功したのだ。

ちなみに「ウィスカー」とは、髭状に成長した結晶のこと。写真のような単結晶の形状により、少量でも相互接触点が確保でき、放熱性能を高めることができる。また、粉末状のAlNは空気中の水分と接触するとアンモニアを発生させるため用途が限定されていたが、「AlNウィスカー」は単結晶の表面に反応保護膜が形成されることにより、この問題も解決したのだ。

フィラー添加量40%弱で12W/mKを達成。
「5G」用の高周波基板もターゲットに。

対象市場と優位性

世界の放熱フィラーの市場規模は、80億~100億円ほど。うち、酸化アルミニウムが概ね65%、窒化ホウ素が25%、窒化アルミニウムが10%ほどを占める。また、樹脂に放熱フィラーを混ぜた TIM材(Thermal Interface Material:発熱するデバイスとヒートシンクとの間の小さな隙間や凸凹を埋め、効率よく熱をヒートシンクに伝える材料)の市場規模は700億円ほどといわれている。

「AlNウィスカー」は現在、12W/mk(ワット毎メートル毎ケルビン:熱伝導率の単位)を達成。10W/mkを超えるのは難しいとされるなかでの成績であるが、同社では将来的に20~50W/mkという金属レベルの熱伝導性を達成し、市場を席巻することを目指している。

従来、放熱フィラーはTIM材や高熱伝導樹脂、高熱電動封止材、高熱電動基板材料に用いられてきた。「AlNウィスカー」は、これらに加えて5G通信や自動運転用ミリ波レーダー機器などの高周波基板、および射出成型向けペレットの市場もターゲットにしている。

前者においては、電波を通しにくいセラミクスの量を減らせる特性がマッチし、後者においてはセラミクスを減らすことで射出成型機の目詰まりを防いだり、成型性を高められる特性がマッチしているのだという。

同社はまず、樹脂メーカーと提携し「AlNウィスカー」を混ぜた樹脂部材の共同開発・製造・販売から着手。そこで市場を広げてから、「AlNウィスカー」単体の販売も手がけていく。現在、年間100kg製造できる装置を開発しパイロットラインを構築中であるが、年間100tオーダーの製造を見越し、機能部分をブラックボックス化に向けた開発を進めていく考えだ。

素材系分野でも、スピーディな商業化を。
機械学習も導入し開発を実施!

事業にかける思い

photo3.jpg「AlNウィスカー」を開発したのは、名古屋大学未来材料・システム研究所 未来エレクトロニクス集積研究センターの宇治原徹教授(株式会社U-MaP取締役CTO)である。2012年に窒化アルミニウムの板状の結晶をつくる研究過程で、偶然ウィスカーが合成されているのを発見した。

その特性を調べてみると、前述どおりの性能を発揮しそうなことがわかり、生成メカニズムの解明に向け、研究に着手する。「AlNウィスカー」は、原料のアルミニウムを高温にしたものに窒素ガスを流し、合成してつくられるが、それらの温度や量、時間などの条件が数多くある。

組み合わせを少しずつ変えながら最適な値を得る必要があったが、宇治原研究室の機械学習の手法を導入し、50回程度で最適な値を得ることに成功。そして、2016年10月頃に製品化にメドをつけ、サンプル販売をスタートさせた。

「宇治原研究室では、以前にシリコンカーバイトの結晶を成長させる研究で機械学習の手法を取り入れていました。そのノウハウを応用できたことが大きかったと思います」と同社代表取締役社長の西谷健治氏は言う。

昨今のモバイルデバイスの放熱事故など、製品の問題はメーカー自体の信頼性を大きく左右する。各種メーカーの製品への熱対策のために、熱制御・放熱部材の世界的需要は確実に拡大していくだろう。高熱伝導性を有するにも関わらず、フレキシブルな特性を有する「AlNウィスカー」への市場からの期待は、ますます高まっていきそうだ。

株式会社U-MaP
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 西谷 健治 氏設立:2016年12月
URL:http://www.umap-corp.com/スタッフ数:7名(パート含む)
事業内容:
熱対策用窒化アルミニウムウィスカーの開発・製造・販売
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
日本ベンチャーキャピタルより数千万円
ILS2018 大手企業との商談数:
12社

当記事の内容は 2018/12/24時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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