2018年10月22~24日虎ノ門ヒルズで行われた第6回イノベーションリーダーズサミット(ILS2018)のメインイベント、大企業とスタートアップのマッチングプログラム「パワーマッチング」において、大企業から人気のスタートアップ「ILSTOP100」をご紹介します。

キャビアとイチゴが同時に育てられる?
水耕栽培×水産養殖のハイブリッドビジネス

企業紹介

執筆者: 佐々木 正孝 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

水産養殖+水耕栽培=アクアポニックス
新たな食糧生産のかたちを実現する

事業や製品・サービスの紹介

photo1.jpgアクアポニックスとは、水産養殖を意味する「Aquaculture」、水耕栽培の「Hydroponics」をかけ合わせた造語。農業でもなく漁業でもなく、葉物野菜と淡水魚を同時並行で育てることができる、まったく新しいかたちの食糧生産モデルだ。

養殖している魚の排泄物を水中の微生物が分解し、それを栄養分として植物が育つ。植物がもたらす浄化作用により、水を一切替えずに栽培・養殖を可能にしている。アクアポニックスは、工場内で循環型のエコシステムを実現しているのである。

株式会社プラントフォームは、新潟県長岡市で雪冷熱を活用した超省エネ型データセンターを運営する株式会社データドックの執行役員・山本祐二氏が設立した。同社のアクアポニックス工場は、冷涼な気候で豪雪地帯でもある長岡市の気候を利用したエコなデータセンターに隣接している。データセンターの排熱と雪冷熱を有効活用し、地球にやさしいハイパーエコな食糧生産の第一歩を踏み出したのだ。

工場で栽培した野菜と魚を販売する直販事業、アクアポニックスの導入・運営支援、学校や老人ホームなどにアクアポニックスを導入するコラボレーション事業がビジネスの柱になる。2018年7月のスタートから資金調達、コラボ展開も順調で、工場で働く人材の育成にも着手。日本ではまだ知られていないアクアポニックスの横展開にも意欲的である。

キャビアがとれる食糧生産モデル。
食育や生きがい提供も視野に入る

対象市場と優位性

photo2.jpg天候不順による野菜価格の高騰、食料自給率の向上などをねらい、植物工場ビジネスに参入する企業は多い。しかし、それらの工場はLEDを光源にしてシステムで管理し、化学肥料を使う無機・水耕栽培というスタイルがほとんどだ。エコ、オーガニックな食べ物が志向される中、有機栽培で安心な野菜を提供できるアクアポニックスには大きな期待が集まる。LED型の植物工場に比べて初期投資が4分の1、ランニングが10分の1というコスト面のメリットがあり、水耕栽培の2.6倍という生産性の高さも魅力だ。

栽培可能な植物はレタスなどの葉物野菜からトマト、バジル、イチゴ、ワサビまで幅広い。養殖できる魚も淡水魚であればほぼすべて育てることができ、回転寿司でタイの代用魚として並ぶこともあるティラピア、ウナギ、ナマズなどをラインナップ。キャビアがとれるチョウザメの養殖も考えられるという。

プラントフォームはデータセンターの排熱を利用してシステムを回しているが、発電所やオフィスビルなどの排熱も有効活用できる。同社取締役CTOのワイコフ尚江氏は日本におけるアクアポニックスの第一人者であり、一級建築士でもある。工場設備の企画・設計・施工までワンストップで手がけられるのは大きな強みだ。

導入しやすいアクアポニックスの強みを生かし、同社は学校や老人ホームなどさまざまな業種とのコラボレーションを模索している。魚と植物を生産するプロセスが体感できる食育、おいしくて安全な野菜を自分たちで育てながら健康になれるやりがい、生きがいの提供など、現代の課題に即した付加価値の提供を目指しているのだ。

先行き不透明な農業・漁業に一石!
ワクワクをこめたビジネスを提案したい

事業にかける思い

photo3.jpg代表の山本祐二氏は株式会社リクルートの企画営業職、株式会社メディックスでのマーケティング支援、新規事業立ち上げなどを経て、メディックスの子会社として2016年にデータドックを設立。今回、データドックの派生ビジネスとしてプラントフォームを創設した。データセンターの余剰エネルギーを利用するという事業性の高さからアクアポニックスビジネスを着想したが、社会的意義にも重きを置いているという。

「農業従事者の高齢化が進んでおり、60歳以上が8割。30歳以下はわずか7%しかいません。10年後はいったいどうなっているのか。それは漁業従事者も同じです。現在の農業、そして漁業のあり方が終焉を迎えることが確実視される中、新たな食糧生産のかたちを考えていかなければなりません。私たちは、その回答の一つがアクアポニックスだと考えているのです」

有機栽培によって安心・安全な野菜を提供できるだけではない。「キャビアやイチゴが出荷できる工場」という切り口も話題性がある。山本氏には、食糧生産をさらに活気づけ、楽しいものとしてプレゼンテーションしていきたいという思いもある。

「私は新潟県長岡市で事業を展開していますが、農業県でありながら農業を志望する若い人にはほとんど出会えません。先行きの不安、そして現場の大変さから農家を継ぎたい、継がせたいとはならないのです。しかし、私たちのビジネスを紹介すると、若い人も目を輝かせて前のめりに聞いてくれます。ワクワクやドキドキがある未来のモデルとして、日本初のアクアポニックス事業化に取り組んでいきたいですね」

株式会社プラントフォーム
代表者:山本 祐二 氏 設立:2018年7月
URL:https://www.plantform.co.jp スタッフ数:2名
事業内容:
アクアポニックスの企画、設計、開発、設置、施工、運営業務アクアポニックス制御システムの企画、設計、開発、販売/サービス提供野菜の栽培、魚介類の養殖、及び加工と販売
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
9000万円/大和企業投資、ツネイシキャピタルパートナーズ、だいし経営コンサルティング各社が運営するファンド、データドック、ファームシップを引受先とした第三者割当増資を実施。
ILS2018 大手企業との商談数:
15社

当記事の内容は 2018/12/03時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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