2017年10月23~25日虎ノ門ヒルズで行われた第5回イノベーションリーダーズサミット(ILS2017)のメインイベント、大企業とスタートアップのマッチングプログラム「パワーマッチング」において、大企業から人気のスタートアップ「ILSTOP100」をご紹介します。

どこでも手軽に血液検査ができる、
画期的な装置を開発。世界展開スタートも秒読み段階に!

企業紹介

執筆者: 髙橋 光二 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

1滴の血液で同時に主要8項目を検査。
全国のドラッグストア店頭で手軽に受検可能に

事業や製品・サービスの紹介

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POCT(Point of Care Testing:臨床現場即時検査)のための装置や診断薬の開発、およびこれらを用いた次世代プライマリケアソリューション事業を展開する、セルスペクト株式会社。POCTを簡単に説明すると、診察室や入院中のベッドサイド、さらには店頭や自宅など、場所を選ばず迅速かつ簡易的に行える検査のこと。

同社が開発した小型の血液検査装置は、1滴の血液で肝機能や脂質、血糖値といった主要8項目の検査を同時に行うことができる。画像処理技術、診断試薬の製剤化技術、および材料物理学的な技術を横断的に駆使することで、生化学的手法と免疫学的手法という原理が異なる検査を同時に測定可能とした成果だ(特許出願中)。

同社は、東北6県に221店舗(2018年2月末現在)のドラッグストアや調剤薬局を展開する株式会社薬王堂と組み、店頭で低価格かつ手軽に血液検査が受けられる次世代プライマリケアソリューション事業(検体測定室事業)を2018年5月から展開する。両社はその後、他エリアのドラッグストア、調剤薬局チェーンと提携しながら、日本全国に展開していく計画だ。

また、子宮内膜症の悪性化度を診断する経腟プローブを開発し、数年後のリリースを目指して治験を続けている。子宮内膜症で生じるチョコレート嚢胞が卵巣がんになる確率は1%程度であるが、将来のがん化の懸念のため摘出手術が行われる場合が多い。同社は奈良県立医科大学との共同研究で、悪性化を鑑別するバイオマーカーを発見、製品化に成功した(特許取得済)。これにより、99%の無駄な手術を回避することが可能となった。

国内のPOCT市場において、
ほかにないプロダクトをリリース

対象市場と優位性

国土の狭い日本においては、血液検査は主に大規模な検査機関で集約的に行われている。一方、国土の広い米国などでは、採取血液を運搬する間に血液が劣化してしまう恐れや運搬コストなどの問題により、医療機関ごとに行う例も多くある。これを発達させたPOCTは、30年ほど前から米国で活用が始まった。

近年、日本でもPOCTの活用が増え始め、現在、年間8500万検体ほどのPOCT市場が形成されており(セルスペクト調べ)、大手系の2社とセルスペクトが参入している状態だ。しかし、1滴の血液で主要8項目の検査を同時に行うことができるプロダクトを有しているのはセルスペクトのみ。

同社では、心筋梗塞やがんの状態を測定するマーカーも開発済み。これらをPOCT装置に適応させ、より広範かつ重篤な病気の簡易的診断に貢献していく構えだ。ちなみに、子宮内膜症は月経周期を有する女性の約10%、200万人ほどが罹患する。これが先述した経腟プローブの対象市場となるが、類似製品を開発している競合は見当たらないそうだ。

学術分野の異なる専門家を1カ所に集め、
妥協せず議論、画期的な製品開発に成功!

事業にかける思い

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セルスペクト代表取締役兼CEOの岩渕拓也氏と取締役の小出和弘氏は、数年前まで岩手県で診断薬メーカーを経営していた。日本でもPOCTが普及するだろうと感じていた二人は、同じ岩手県に立地する精密機器メーカー、株式会社アイカムス・ラボの片野圭二CEOと出会う。そこで、診断薬と精密機器のそれぞれの技術を合体させ、オールインワンのPOCTプロダクトの開発を手掛けるプロスペクトの設立を決め、片野氏を社外取締役として同社に招いた。

そうやって同社を設立した岩渕氏ら3人は、次世代に求められる医療診断アイテムとして、低侵襲、小型化(高機動化)、医療個別化の3要素に注目する。そして、疾患分子センシング(製剤学、免疫・生化学、材料物理学、IT)の横断的技術を駆使したデジタルメディカルアイテムの実用化に、ビジネスの方向性を定めた。

「化学や機械・電子工学、ソフトウェアエンジニアなど広範な専門家を揃えたのですが、当初はそれぞれ違う場所で要素技術の開発を進めたため、全体をまとめるのに苦労しました」と小出氏はスタート当初を振り返る。学術分野が違うと、実験などの時間軸や思考法が異なるからだ。そこで、一つの場所に全員を集め、議論しながら開発を進める体制に変更した。

「お互いに妥協せず意見をぶつけ合うようにしたことで、次第に連携が取れ始めたのです。この開発体制の再構築が、血液検査装置や経腟プローブなど、画期的な製品を生み出す原動力となりました」。そうやって試行錯誤を乗り越え、設立から4年目を迎えた同社は、すでに海外の大手企業とも提携し、グローバル展開の目途もつけている。

セルスペクト株式会社
代表者:代表取締役兼CEO 岩渕 拓也 氏 設立:2014年4月
URL:https://cellspect.com/ スタッフ数:42名
事業内容:
次世代プライマリケアソリューション事業、ヘルステック&ヘルスデータ活用事業ほか
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
みずほキャピタル株式会社、いわぎん事業創造キャピタル株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社から4億5000万円
ILS2017 大手企業との商談数:
3社

当記事の内容は 2018/7/17 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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