2018年10月22~24日虎ノ門ヒルズで行われた第6回イノベーションリーダーズサミット(ILS2018)のメインイベント、大企業とスタートアップのマッチングプログラム「パワーマッチング」において、大企業から人気のスタートアップ「ILSTOP100」をご紹介します。

“ゲノム編集の産業化”を実現させ、
品種改良の効率化により食料問題の解決へ!

企業紹介

執筆者: 髙橋 光二 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

ゲノム編集済マウスの受精卵や生体などを
製薬会社や大学の研究室などに提供

事業や製品・サービスの紹介

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株式会社セツロテックは、徳島大学発のバイオテクノロジーベンチャーだ。製薬会社や大学の研究室などに向け、創薬の実験材料となるゲノム編集済マウスの受精卵や培養細胞、生体などの作製受託サービスを手掛けている。

具体的には、新たな治療薬の開発を目指す顧客に、当該疾病に罹るようゲノム編集を施したマウスの受精卵や細胞、生体を提供する。顧客となる研究者から、どういったDNAを有するマウスがその病気を発症しやすいかという情報の提供を受け、同社がそのモデルマウスのオーダーメイド――いわばバイオ業界のアウトソーシングサービスである。

中でも引き合いが最も多いのが、業界初となる受精卵での提供だ。生体で納品する場合、納品後に細菌などの感染検査が必要になり、そのために顧客側が1~2週間の時間と数十万円のコストを負担する必要があった。

しかし、受精卵の場合はこの検査が不要になり、受精卵を自身のSPF(病原生物のない)マウスに移植することで、すぐにモデルマウスとして利用できるというメリットも。生体はオーダーを受けてから納品まで3カ月ほど要するが、受精卵は最速2週間ほどで納品可能。期間短縮とコストダウンが一度に叶うというわけだ。

国際特許を出願済のコア技術、
「受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法)」

対象市場と優位性

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同社が現在対象としているゲノム編集マウスのオーダーメイド市場は、国内約20億円、海外約200億円の規模。実験用バイオ細胞の国内市場は14億円。さらに、参入準備を進めている疾患モデル動物の国内市場は、約100億円の規模とされる。

当該市場における同社の強みは、国際特許出願済のコア技術「受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法)」にある。ゲノム編集マウスを作製する場合、微細なガラス管を用いて顕微鏡下でゲノム編集ツールを受精卵1つ1つに注入するマイクロインジェクション法が一般的だ。しかし、この作業は熟練の技術者が必要で、人によって品質にバラつきが出て生産効率がよくなかった。

対して、「CRISPR/Cas9」というゲノム編集ツールを電気的に穿孔して注入するGEEP法は、受精卵を電極間に並べるだけなのでマイクロインジェクション法ほどの技術を要せず、一度に数十個ほどの量を卵が新鮮なうちに均一条件下で低侵襲に作製できるのだ。

これによって一定品質のゲノム編集済受精卵の量産化への道を拓くとともに、受精卵での提供という画期的なサービスが生まれた。GEEP法はある意味シンプルな作業なので、将来のロボット化も視野に入れ、さらなる多品種大量生産によるコスト削減とサービスの安定化を図る方針だ。

求める形質を理論的に特定できるゲノム編集で、
効率的な品種改良を実現する

事業にかける思い

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徳島大学先端酵素学研究所の竹本龍也氏は、2015年にGEEP法を発明し、特許のPCT出願をした。論文を発表すると、多くの研究室から共同研究やゲノム編集マウス作製の依頼が殺到する。

同大学は「研究支援・産官学連携センター」を設けて大学発ベンチャーの育成に熱心に取り組んでいる。そんな環境の後押しもあり、ニーズの大きさを直感した竹本氏は、隣の研究室の沢津橋氏に声をかけて共に同社を設立し、事業化に踏み切った。研究者志向の強い竹本氏は、沢津橋氏と大学時代に研究室を共にした会社経営経験のある竹澤慎一郎氏に社長就任を要請し、経営体制を整えた。
設立後、「資金調達には苦労している」と竹澤氏。ベンチャーキャピタルの投資委員会で承認され、出資を受けられると思いきや、付帯条件などが調整できずに断念せざるをえないこともあったという。「捨てる神あれば拾う神あり。いろいろなベンチャーキャピタルと交渉するなかで、いいパートナーが見つかりました」と当時を述懐する。

そんな同社が目指すのは、ゲノム編集技術の利用を研究室に止めるのではなく、一般にも提供する“ゲノム編集の産業化”だ。例えば、畜産業であれば、牛乳をより多く産生する牛や、産仔数を増やしたり、感染症に耐性のある生産性の高い豚に品種改良するといったニーズに応えていくということ。

「いろいろな種を掛け合わせる品種改良が行われてきましたが、いわば“運任せ”の面があります。しかし、ゲノム編集であれば、求める形質を理論的に特定することが可能なので、品種改良をより効率的に行えるようになります」

世界的な人口増加、食料不足といった問題解決に、ゲノム編集技術で貢献する――近い将来、世界から注目される可能性を秘めたベンチャーといえるだろう。

株式会社セツロテック
代表者:代表取締役会長 竹本龍也氏、代表取締役社長 竹澤慎一郎氏 設立:2017年2月
URL:https://www.setsurotech.com/ スタッフ数:13名(アルバイト含む)
事業内容:
ゲノム編集による受託事業・研究開発・商品販売及びゲノム編集に関する各種サービス
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
SBIインベストメント、テックアクセルベンチャーズ、フューチャーベンチャーキャピタルほかから総額1億円弱
ILS2017 大手企業との商談数:
5社

当記事の内容は 2018/7/3 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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