“電界結合”でケーブルが消える!?
モノに電力を伝える新たなかたち

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 佐々木 正孝  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

開発・普及に力が注がれる「非接触給電」。
独自の「電界結合方式」でシステムを構築

事業や製品・サービスの紹介

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コンセントや電源ケーブルなどを使わずに電力をやり取りする「非接触給電」。携帯電話や電動歯ブラシ、シェーバーなどで私たちの生活にも浸透しつつあるが、製造業や加工業、物流業などの現場でも期待が大きい。ワイヤレスの給電は総務省が主導し、成長戦略の一環として実用化・標準化が目指されており、各メーカー、研究機関がさまざまな方式の給電方法を模索している。

株式会社ExHは「電界結合方式」というアプローチにより、まったく新しい非接触給電システムを開発した。電界結合方式とは、設置した電極が近接したときに発生する「電界」を利用して電力を伝送する技術のこと。

他の方式に比べて送電効率が高い上、軽量でフットワークの軽い給電機器を設計できる。電磁波の漏洩も少ないので安全性も高い。また、給電機器まわりは銅線が用いられるが、これは将来的に高騰が予想される金属資源でもある。同社のモデルは安価なアルミニウム加工材を用いることで汎用性を高めた。現在主流になっている電磁コイルを用いた非接触給電方式に比べ、低コストで給電できるのが大きなメリットになっている。

同社は電界結合方式に関して複数の特許を取得しており、産業機器メーカーと試作品を共同開発。工場での実証実験を進め、商用化に向けた調整を進めている。

シームレスに給電できるだけではない。
高速無線通信との親和性で現場に訴求する

対象市場と優位性

製造現場では工作機械や産業用ロボット、設備機器に、輸送関係でもフォークリフトや自動搬送車さまざまな搬送体にケーブルフリーで給電ができる。今後、非接触給電の市場はますます広がっていくだろう。そこで、ExHの優位性になるのが無線LANなど高速通信とのマッチングだ。

同社は開発にあたって電極のフィットを試行錯誤。充電台と端末の電極を厳密に合わせなくても充電できる仕組みを開発した。非接触ではなく準接触という自由度の高い仕様により、他の追随を許さない汎用性を確保している。

こうして機器の自由度を高めたことで、一つの充電台に複数の機器・端末が対応できる。同社の給電システムは信頼性の高い通信とセットできるようになっているのだ。

製造業でも物流業でも、生産機器や輸送機器・搬送体をネットワークしたスマートファクトリー、スマートロジスティクスの取り組みが活発である。信頼性の高い無線通信と給電を組み合わせることで、工場・物流ラインを一気通貫につなぐIoTインフラになり得る。

しかも、同社が特許を取得した「スイッチ式」給電は防水性を高めることができ、他の非接触給電方式ではあり得なかった屋外での活用も視野に入る。

酪農、農業、漁業、林業など人手不足が深刻化する国内産業で大きなアシストになるだろう。生産・物流のパフォーマンスを大きく変える切り札として、同社の非接触給電システムにかかる期待は大きい。

少子高齢化の社会を支えるIoTインフラに!
あらゆる現場のラインを支えていきたい

事業にかける思い

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同社代表の原川健一氏は、竹中工務店のエンジニアとして非接触給電技術の技術を磨いてきた。定年退職後に起業し、新方式の知的財産権にも配慮するなど、手堅い開発体制を構築してきた。

「コストを抑えて給電システムを開発できたのは、解析ソフトによって電磁波や磁場のシミュレーションができたからです。リアル環境で実験をすると数千万円単位でコストがかかるところ、ソフトのライセンスフィーの年間40万円弱に抑えられました」

食品包装メーカー、機械部品メーカー、大型設備機械メーカーなど、幅広い業界からオファーが届いており、それぞれの現場に即した共同開発も活発だ。

「NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発型ベンチャー支援事業・SUI(スタートアップイノベーター)によって開発助成をいただき、STS(シード期研究開発型ベンチャー)の応募も検討中。エンジェル投資家からの資金調達もあり、ビジネスとして順調にテイクオフできています」

技術開発の踊り場はすでに過ぎ、協業を軌道に乗せて生産・販売をスケールさせていくことに注力する。目指すは、近未来の日本を支えるIoTインフラだ。

「生産や物流の人手不足のほか、他の業界にも幅広くお役に立てるでしょう。私たちの製品が少子高齢化社会に突入した日本のソリューションとして役立っていければと思います」

株式会社ExH
代表者:原川 健一 氏 設立:2013年8月
URL:なし スタッフ数:4名
事業内容:
電界結合による非接触給電技術の開発。
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
交渉中
ILS2017 大手企業との商談数:
8社

当記事の内容は 2018/6/26 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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