その時、偉人たちはどう動いたのか?  新日本製鐵創業者 永野重雄 3

企業紹介

執筆者: ドリームゲート事務局

エピソード3「新日本製鐵発足」
「分離案は釜石に対する侮辱ですらある。我々は一体となってこの釜石を守り抜く」 (70歳)

 新日本製鐵が発足した時のエピソード。

 日本製鐵が「生木を裂くように(永野)」GHQによって八幡製鐵と富士製鐵に分離させられた時から、日本製鉄の社長であった三鬼隆と常務であった 永野との間で「俺たちが健在なうちにまた一緒になろう」と誓い合っていた。不幸にして三鬼は航空機墜落事故で不慮の死を遂げるも、後を継いだ稲山嘉寛も同 じ思いであった。稲山は日本製鐵時代、営業次長として当時営業部長であった永野とともに働いた気心知れる仲。ひそかに合併の機をうかがっていた二人は、 1965年、通産大臣の三木武夫に話を持ちかけ同意を得る。当時の日本の製鉄業界は今日のように強くはなく、欧米勢に対抗するためにもっと国際競争力をつ ける必要があった。しかし、事は日本の産業社会に大きな影響を及ぼす。産業界の広範な支持を得るため、永野は策をめぐらし、「製鉄事業法構想」や「東西製 鉄二社合同論」などをぶちあげて世論を喚起した。

 機が到来し、富士・八幡の二社は公正取引委員会に合併の認可申請を提出。しかし、合併により35.6%のシェアを占めるようになることに公取は首 を縦に振らなかった。暗礁に乗り上げて、強気の永野も「あきらめようか」と弱音を吐く。しかし、気を取り直して東京高裁に緊急停止命令却下を請求。両社の 合併問題は公取委の審判の場で争われることになった。

 公取は、両社が合併すると、ある4品目が独禁法違反になるから、それを製造する釜石製鉄所を分離すれば認めるという。しかし、釜石は永野が敬愛し てやまない三鬼が手塩にかけて育てた製鉄所。到底のめない。その場はいったん席を立った。後日、釜石を訪れた永野は、従業員を集めて講和を行った。

「分離案は釜石に対する侮辱ですらある。我々は一体となってこの釜石を守り抜く」

 永野は稲山と釜石を分離しなくても同じ効果があがる対応策を協議。問題とされた品目の製造設備やノウハウを、この分野への進出を図る競合他社に供 与する案をまとめた。通産省の強力な後押しもあって、1969年、公取は正式に合併を認めたのである。そして、翌70年に世界最大の製鉄会社、新日本製鐵 が誕生。「鉄は国家なり」といわれた、製鉄業が日本の基幹産業となる時代が幕をあけ、高度成長を始めた日本は、世界第2位の経済大国へと驀進していったの である。

私 たちならこうする!

(株)リサイクルワン 代表取締役 木南陽介氏

経営者は目線を上げることが大事であることを感じさせられるエピソードです。自社だけではなく、業界だけではなく、日本だけでもない。はじめから社会全体 や世界に目が向いている。だからこそ、この合併には世論の喚起が必要だとわかり、「製鉄事業構想」などをぶち上げたのでしょう。また、釜石の件では、普通 は「名を捨てて実を取る」的に妥協してしまうことも多いでしょうが、永野氏は守り抜いた。「~のために」という拠りどころがあったからだと思います。
当社の社員はまだ50人くらいです。とは言っても家族を含めれば100人以上になる。そう考えると、やはり責任の大きさを感じます。その人たちの生活を守 り抜くことは、すでに自分の価値観の中心になっていると思います。

(株)カフェグルーブ 代表取締役 浜田寿人氏

一企業や業界を超えて、国家的な観点から立ち回っているような、政治家的な発想と行動ができる人だと感じます。あまりにもスケールが大きい話なので、体感 温度に近づけることは難しいですが、この時代を生きた偉人たちは根底に骨太の信念があって、それが日本の質を支えていたのだろうと思います。しかしながら この時代に生まれなくてよかったと思いました(笑)。今という時代性があるからこそ、当社のように小さな会社でも大企業が取引してくれるのかもしれません しね。
今は、大企業こそ小さな会社と組んでビジネスを展開していったほうがいい時代だと思います。大企業の資本投下力にはすごいものがありますが、機動力に弱い ところがあり、相互補完できます。ベンチャーにとっても重要なパートナーです。そうして、臨機応変に外的環境の変化に対応していく。かの時代を生き抜いた 偉人のように、我々も今の時代にできることを考えて、熱く行動すべきです。

(株)ワークスアプリケーションズ 代表取締役 CEO 牧野正幸氏

現代の日本社会は官僚的。安定しているかもしれないが、新しいものに対する許容力が不足している。公正取引委員会に対して説得や交渉を行うなんて、今では 考えられないでしょう。厳然としたルールがあり、それに則してダメなものはダメだからです。従来の社会には存在しない新しい価値を生み出すときには、何ら かのリスクを取る必要がありますが、それが非常に取りづらい時代だとも思います。

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