一人で起こした市場調査会社が年商4億円 / 株式会社 ユーティル

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

みんなが楽しんで仕事ができる会社をつくりたい

「社長になりたい。
しかもそれは幼稚園に入る前から決めていたことだったんです。
卒園アルバムにも、そう書いていました」

幼い頃から祖父の経営する工場に出入りしていた打田光代さん。
優雅な生活を送る祖父と、毎日工場で必死に働く工員たちとのギャップが、
彼女の心の中に焼きついていた。

「そんな不公平さが、子供ながらに納得できなかったんです。
自分が社長になってみんなが楽しく仕事ができる会社を実現したいと、
社長になることを夢見ていたのでしょう」

その言葉どおり、打田さんは現在、マーケティングリサーチ会社「ユーティル」の社長として日々活躍している。

打田さんが学生の時、父親の事業が失敗し、やむなく倒産してしまう。
何とか家業の手助けをしたいと探した就職先は、彼女がやりたい仕事ではなく稼げる仕事だった。

「中でも、女性に憧れのスチュワーデスを狙っていましたが、理由は高給だから。
けれども視力が悪くて受験できない。
それならと、次に選んだのが、給料の良い教育関係の出版会社で、そこに就職を決めました」

編集担当という約束で入社したものの、社長秘書に配属となってしまった打田さん。
2年間担当をしていたが、あまりにも仕事量が少なく居心地が悪かった。
真面目な彼女は、何もしないのに給料をもらうことに後ろめたさを感じて退社を決意する。

企業における市場調査の重要性を実感

その後、起業した時のためにと、簿記の学校で経理業務を習い始めた。
そして授業料を払うため、待遇のいいアルバイトを探す。

「そんな時、情報誌でリサーチ会社を見つけました。
どんな仕事をするのかわかりませんでしたが、他社より待遇が良かったのですぐに応募しました」

採用後、彼女が最初に担当したのは街頭での将来生活予測調査。
100人の通行人に突撃インタビューする仕事はとても楽しかったが、
「こんなことがお金になることが不思議でならなかった」
という。
アルバイトながら、リ サーチ会社の仕事にますます興味を持って取り組んでいった。

毎日の仕事が新鮮で楽しく、次にどんな仕事が待っているのだろうと期待しな がら、
与えられた仕事を片っ端から片付けた。
他の人が1日かかる仕事を半日で終え、会社に余分な負担を与えないよう午後は退社した。
いつでも会社のことを 考えて行動する打田さんは、常に経営者の視点で物事をとらえていたのだ。
そんな彼女の仕事の評価は高く、時給はどんどんアップした。

「けれども、それにもっと応えなければならないと、さらにハードな業務をこなしました。
常に、支給される給料のプラス20%以上の業務をこなさないと気が済まなかったのです」

こうして半年間アルバイトをして簿記も習得したので、
起業準備に入ろうと社長にあいさつに行ったところ、社員にならないかとの誘いが。
彼女は断りつづけたが、何と 8時間にわたって説得が続く……。
これにはさすがに打田さんも折れ、ついに社員になることを承諾した。

「こんなに私を必要としてくれるならもう少し勉強しようと。
ただし、自分の会社を起業して社長になりたいので、あまり長くは続けられないことを話しました」

社員になるとアンケートを取るだけでなく、調査、分析まで全体的に仕事を受け持つようになった。
経理全般も自分が起業することを見据えて率先して担当。
仕事 を進めていくと、企業における市場調査の必要性や重要性をあらためて実感できた。
そして、この事業で独立する意思を固めたのである。

たった1人で市場調査会社を設立

退社後、本格的に起業に向けて始動。
打田さんの今までの仕事ぶりを見ていた知人から、融資の申し出もあったが、
すべて断り自分の貯金だけで資金をまかなっ た。

始めは1人でのスタートだったこともあり、自宅を事務所として使用。
93年9月、市場調査会社・(株)ユーティルをたった1人で立ち上げた。

独立するにあたって、彼女の胸の内にはある構想があった。
それは、アメリカでは一般的な手法であるデータベースマーケティングを、
日本でも定着させたいと考 えていたのだ。
これは、市場調査会社がクライアントからの発注で、
単発の調査を行うのではなく、あらかじめ調査結果をデータベース化。
それをこちらから複数のクライアントへ売り込む手法だ。

アメリカではすでに成功をしている企業も多かったが、
このデータベース構築には、大規模な仕掛けが必要。
会社を立ち上 げたばかりの打田さんには、まだまだ先の話だった。

彼女は、まずその現状を自分の目で確かめようと会社を立ち上げると同時に渡米。
目を つけていたマーケティング会社を回り、聞き込み調査を行った。
これは、アメリカのマーケティング会社が、日本での市場調査を必要とした時のパートナーに指名してもらうための営業活動としての訪問でもあった。

帰国後、この打田さんの読みが的中し、訪問したあるマーケティング会社から大規模な車関連のプロジェクトで、日本でのパートナーを探しているとの連絡を受けたのだ!

「相手の条件は車関係の情報に精通しており、同業界のクライアントを持たないことが条件でした。
これはうちの他にできるところはないですよ、と猛烈にアピールしたのです。
もちろん社員 1人なんて絶対言えなかったですけどね」

こうして、なんとかプロジェクトを落札。
直ちに友人、知人、昔の同僚を総動員して、この仕事にあたった。
全身全霊で、この初プロジェクトにあたった打田さんに休みなどはもちろんない。
しかし、自分を頼って仕事を発注してくれる会社のことを思うと、いてもたってもいられなかったのだ。

無事に このプロジェクトを成し遂げたことで、この企業からは継続して仕事を任されるようになり、
他のマーケティング企業やクライアントからの信頼も厚くなった。
その後、IATA(国際航空運送協会)の主要空港における顧客満足度調査や自動車メーカーのユーザー調査など、
企業と消費者を結ぶマーケティングリサーチ の分野で多くの実績を重ねてきた。

設立当初はクライアントの見込みもなく、ゼロからのスタートだったが、
現在は社員26名、グループ会 社3社、協力会社 1社を持つまでに成長。
今後も立ち止まることなく、新しい事業にチャレン ジする彼女の姿が目に浮かんでくるようだ。

【打田 光代さん プロフィール】

東京都生まれ。
青山学院女子短期大学英文科を卒業後、教育関係の出版会社に就職。
退社後、市場調査の会社にアルバイトとして入社。半年後、正社員に。
独立を目指し12年間勤務した会社を退社。
93年、(株)ユーティルを立ち上げる。

会社名   (株)ユーティル
URL   http://www.util.co.jp/
住所   東京都港区虎ノ門3-11-15 SVAX TTビル 2階
連絡先   TEL 03-5408-3850
設立   1993年 9月
業務内容   市場調査

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