和柄を現代風にアレンジするデザイナー / 株式会社 ソールワーク

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

デザイナーの道を進むもライターへと転向

京都の染色や織物技術を応用して、和柄をシャツなどにプリントした独特の作品をつくりだす、ファッションデザイナーの古野雅子さん。

高校卒業後、デザインの道を志して美術短大に進学するが、ある出来事がきっかけで方向転換を図ることになる。

「エッセイコンテストに応募したら、大賞に選ばれたんです。
文章を書くことにも興味があったので、それをきっかけに短大を退学し、コピーライターとして広告代理店に就職しました」

3年後、結婚を機にフリーライターに転向。
そのうえファッションにも携わっていたいと、ブティックでのアルバイトを始めると同時に、経営の勉強をするために短大の夜間学校に入学した。

「主婦、バイト、学生、ライターと1人4役。
忙しかったけれど、好きなことができて幸せでしたから、つらいなんて思ったことはありませんでした」

しかし、28歳の時、幸せな彼女の人生を覆す大きな出来事が起こる。
妊娠した子供を流産してしまうのだ。

「この経験で、『生と死』をダイレクトに体感して、生きることを根本から考えさせられたんです。
どうせ一度の人生なら、悔いなく好きなことをやろうと。
そうしないと幸せをつかむことができないことを、流産した子供に教えられた気がしましたね。
自分の生きる道は、自分で切り開いていかなければと決心しました」

自分の進むべき道はデザイナーしかない!

今後のことを考えた時、自分の本当にやりたいことは、
デザインの道という結論にたどりついた。
京都で生まれ育った古野さんは、古くから伝わる生活・文化・芸術を肌で体感。
着物素材にも興味があり、若い人たちにその良さを伝えたいと
以前から考えていたのだ。

「ライター時代、織物産地などの取材をした時に、
高い技術を持ちながらも、伝統産業が衰退していることを知ったのです。
伝統に固執することなく、若い人向けにアレンジできれば、
市場は広がると考えていました」

デザイナーとしての道を再度歩み始めた古野さん。
まずはアパレル業界の仕組みを勉強するためにブティックでアルバイトをして、
卸業者の開拓や接客、店舗運営などを実践で覚えた。
そして仕事が終わってからはデザインに没頭する毎日。

「ある時、店の顧客でもあるパタンナーの方に、思い切ってかきためていた自分のデザインを見せて、つくってほしいと頼んだんです。最初は、『こんな複雑なデザインはつくれない』と断られたんですが、ゴリ押しでOKをもらいました」

完成した作品は、まだ市場にはないものとして注目を集めた。
すぐに展示会を開催して、本格的に活動を始める。
その後、自分の作品をもっと多くの人たちに見てもらいたいとロンドンへ向かった。

「ショッ プへの売り込みももちろんしました。
英語は得意ではないので作品で勝負(笑)。
すると、あるイベンターが私の作品を気に入って、
2日後のファッションショーに参加しないかと誘ってくれたんです。
モデルがいないし、準備の時間もないからと一度は断ったのですが、
すべてこちらが用意するから大丈夫だと言ってくれて。
これはチャンスだし、やるしかない!と」

日本の伝統美を受け継ぎ海外にも広めたい

この経験は彼女の自信となり、社会的な信用を得るためにも、拠点となるショップを開きたいと考え始めた。

「目をつけたのは、京都の詩仙堂近くの町家。
お金もそんなにかけられないので、自分でリフォームしてお座敷ブティックをオープンしました。
一人でも多くの人に出会って、楽しみながら買ってもらうことが願いだったんです」

初期の作品はフリーマーケットで古い着物を仕入れ、解体して洋服にリメーク。
しかし、どんなに素晴らしい柄の着物でも、ひとつしかつくれないのはもったいないと考えていた。

「多 くの人に素晴らしい和柄を広めたい。
でも、着物素材をそのまま使ったのでは、家で洗うこともできずメンテナンスも難しい。
これでは若い人のニーズには合っていないんです。
だから私は、伝統的な和柄をプリントにしたシャツやワンピースをあらたに考案しました。
素材もストレッチでシワになりにくく、自宅でその まま洗えて働く女性が着やすいものにしたんです」

誰もやっていないことにチャレンジするのがポリシーの古野さん。
彼女の作品は好評で、2000年 7月には東京進出し、百貨店に次々と出店するまでに成長を遂げたのだ。

「今でこそ、着物の素材を服にすることが認知されましたが、立ち上げ当初は新しい試みが多かったので、
地元の産地の方々に理解してもらうのに時間がかかりました。
でも、京都を変えていこうとする老舗店の若手が協力してくれたおかげで、やり通すことができたんです」

彼女は日本の美、伝統美を誰よりも愛しているからこそ、
それを後世に伝えていくとともに、世界へも発信したいと考えているのだ。

「今後は海外出店も積極的に行いたいと思っています。
一人の女性として、事業の結果を出すことが、今まで応援してきてくれた人たちへの恩返しだと思っていますから」

【古野雅子さん プロフィール】

京都府生まれ。
関西女子美術短期大学ファッションデザイン科に入学。
1年後、エッセイコンテストでの大賞受賞をきっかけに、コピーライターの道を 進みたいと退学し、広告代理店に勤務。ほぼ同時に、近畿大学短期学部商経科の夜間学校へ。
その後、大阪モード学園ファッションベーシック科に入学。
勉強の ために高級ブティックでアルバイトをしながら、接客や店舗運営の仕方などを学ぶ。
2000年7月、(株)ソールワークを立ち上げる。

会社名   株式会社ソールワーク
住所   東京都港区青山3-13-3 南青山YMビル2階
連絡先   03-5772-1722
設立   2000年7月
業務内容   レディース・メンズファッション企画、製造、販売、卸。ファッションプロダクト企画、制作、プロデュース。
URL   http://www.soulwork-jp.com/

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