もみじの葉っぱをお金に変えて究極の町おこし / (株)いろどり

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

009 どんな厳しい条件でも智恵と情熱があれば事業は起こせる。
四国一人口が少なく、若い人がすっぽりと抜けたお年寄りの町で、
しかもさしたる資源のない環境から年商2億5000万円の一大事業を
立ち上げたのが横石知二さんである。

「農業大学校を卒業して、最初は上勝町の農協に営農指導員として就職したんです。
いわば外から入ったよそ者です。そのころの町を見渡すとそれはもう閑散として いるというか…。
典型的な過疎の町でした。町のお年寄りたちも『うちの町は駄目だ』と愚痴ばかり。
で、私が生意気言うと『よそもの小若衆になにができる か。謝れ!』って叱られましたよ(笑)。
でもね、初めて社会人として就職した町ですから、なんとか町の役に立ちたい。
このなにもない町からあっと驚く特産 物を生み出せないか。
山と畑に囲まれた何の変哲もない町を2年間歩き回っては考えました」

起業のヒントは出張先でつかんだ。
大阪の寿司屋で耳にした会話が横石さんのアンテナにビリリと響いたのだ。

「衝 立の向こうで若い女性たちが食事をしていたんです。
その彼女たちの会話が聞こえてきたんですが、彼女たちは料理じゃなくて、
料理を飾るもみじの葉をしきり にほめている。
そのとき、『そうか、つまものという手があった。これならいける!』って閃きました。
もみじや山草ならそこらじゅうに生えていますから (笑)」

町に帰った横石さんは早速、町おこしの第三セクターを設立。
半信半疑の農家を説得し、裏山の木の葉や草木などを集めさせて、試験 的に出荷してみた。
が、ほとんど売れなかった。

商品として流通するにはもうひと工夫が必要なのだ。

そこで横石さんは徳島で有数の高級料亭の料理人に教えを 請うたが門前払い。
ならばと、横石さんは、わが財布には分不相応とは思いつつも自腹でその料亭に通い詰め、
最後は厨房で直接教えてもらえるまでになった。
つまものとはいえ、料理や器によってサイズやあしらい方が違うのだ。

横石さんは現場のニーズをとりいれた『彩りシリーズ』を作り出し事業化を軌道に乗せ た。

「葉っぱものだけで町の農産物売り上げの10%を占めるまで に成長しました。
ここまでこれたのは、商品としての加工はもちろん、町の防災無線を使った同報ファクスで、
ジャストインタイムの出荷体制を作り上げたこと が大きい。
朝、『いますぐ100セット』と注文を受けても、その日の午後4時半には調達できますよ」

政府の進める『構造改革』のもとで、地方の疲弊は日増しに進んでいる。
多くの市町村が生き残りをかけて自前の事業育成に取り組んでいるが、なかなか実を結んでいない。
そんなときに横石さんの起業は、町の再生を考える上で大事なヒントを含んでいるように思える。

「自前の事業といっても地域の一部の人間だけでやるものは駄目です。
年齢、男女関係なくみんなが取り組めるものでないと成功しないし、町はよくならないんです。
いまではみんな『昔は落ち葉の掃除は嫌だったが、いまは金を拾っているようなもんだ』って喜んでいます(笑)。
自分で稼ぐからみんな元気になる。そし て地域も活気づく。これこそ本当の福祉ではないですか」

【横石 知二氏プロフィール】

徳島県生まれ。徳島県農業大学校園芸学科卒業後、上勝町農協に営農指導員として就職。
16年連続で農産物売り上げを伸ばす。
91年に上勝町役場に転籍。みかんやすだちしか生産していない町の農業形態を変えようと
干しいもや椎茸などさまざまな挑戦の末、町おこし事業として「つま もの」の生産・販売を考えつく。
2002年役場を退職し、(株)いろどりの専務に就任。

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ここにあります。

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