エンジン、モーターに次ぐ“第3の駆動機構”。
「静電アクチュエータ」が世界を変える!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 髙橋 光二  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

軽量、小電力で、人間の瞬発力や
自動車の駆動力に匹敵する大きな出力

事業や製品・サービスの紹介

photo1.jpg
ストローブ株式会社は、東京工業大学の実吉敬二准教授と、主にロボットの“人工筋肉”に用いるための静電アクチュエータの開発を進め、2018年春の実証実験を予定している。

この静電アクチュエータは、正負の平板電極となる銅箔のテープを一定の間隔を空けて相互に折り重ね、多層構造にしたもの。この電極に電圧をかけると、筋肉のように収縮する。300vの電圧で10kgf/㎠(1㎠あたり10kgの力)という、人間が発することができる最大級の瞬発力や、自動車を動かせる大きな力を出すことが明らかとなっている。

本製品の最大の特長は、軽量であること。材料として、モーターのように鉄の磁性体を必要とせず、銅箔を用いるのみ。ある大きさのモーターと同じ出力を得るのに必要な重量は、およそ6分の1だ。ウェアラブルのパワードスーツや移動体などに採用すれば、重量を大きく軽減でき、機動力が一気に高まるだろう。

また、収縮の方向が直線であるため、モーターやエンジンの回転力を直線運動に変換するギアが不要。よって、力をダイレクトに伝えることができ、エネルギー効率はエンジンの30~40%に対し50%程度と高い。電圧の調整だけという制御の簡単さもメリットだ。こうした特性から、エンジン、モーターに次ぐ“第3の駆動機構”となることが期待されている。

あらゆるアクチュエータと比べても、
欠点が見つからない圧倒的な競争力

対象市場と優位性

photo2.jpg
本製品の想定用途は、軽量さを生かしたウェアラブルのパワードスーツなど移動を前提としたロボティクス領域。当該市場の規模は、2020年におよそ580億円、25年は1060億円、35年には1900億円程度と想定しているという(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のデータより同社が独自に試算)。

アクチュエータには、電磁式、空気圧式、油圧式、形状記憶式、熱膨張式、圧電式、高分子式(誘電/ゲル/ICPF/CNT)など、多様な種類がある。また、アクチュエータの性能や特性としては、重さ、小型化、エネルギー効率、発生力、応答性、制御性、柔軟性、耐久性、駆動距離といった項目が挙げられる。

各種アクチュエータが有する性能や特性には、それぞれ長所、短所がある。しかし、静電式には短所が見当たらないのだ。かつ、主材料は銅箔とPETなどの絶縁樹脂であり、コストも安い。このため、圧倒的な競争力を得ることができると同社では見ている。

すでに、産業界からの反響は大きい。展示会への出展や「ILS(イノベーションリーダーズサミット)」への参加により、名だたる自動車メーカー、機械メーカー、化学メーカーなど、数十社からアプローチを受けている。現在、そのうちのある企業から、製品化を前提とした開発要請を受けているところだ。

製品完成で、人手不足を大幅に改善。
労働市場に大きなインパクトを!

事業にかける思い

ストローブは、2002年に日本リビング株式会社として設立され、2008年に、ふくはうちテクノロジー株式会社を吸収し、現社名に変更された。

「大手石油会社が家庭用燃料電池事業を推進するにあたり、住宅を高気密化させることに伴うホルムアルデヒドなど化学物質による人体への害を防ぐことを目的に、その石油会社からの出資を受けて設立したのが日本リビングです」と代表取締役社長の今井裕一氏。

日本リビングは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の柳沢幸雄教授との産学共同研究により、世界初の非破壊検査法によるホルムアルデヒド検知センサーを開発。第1号の製品として、現在もストローブがハウスメーカーなどへの提供を続けている。

一方、ふくはうちテクノロジーは、電気通信大学共同研究センターにおいてプラズマCVD法による「ダイヤモンド薄膜作成装置」を開発した内富男氏が代表取締役、今井氏が取締役となって設立した企業である。

2008年、実吉准教授の静電アクチュエータの研究内容を知った今井氏らは、両社の技術が画期的な静電アクチュエータの製品化に役立つと、実吉准教授にアプローチし、共同研究契約を締結。それとともに、両社を一つにしてストローブに改組する。以来、静電アクチュエータの基礎研究を続け、2016年に製品化へのメドをつけたというわけだ。

「しばらく研究資金不足に苦労しましたが、ようやく製品化の光明を授かりました。2018年春までに実証実験を成功させ、ファンドレイジングを行う予定です。現在研究開発を進めている製品が完成すれば、現在の労働力不足を大幅に改善できる可能性があると思っています」(今井氏)

近い将来、世界から脚光を浴びる“日本発”のテクノロジーとして、静電アクチュエータを“第3の駆動機構”として大きく成長させていってほしい。

ストローブ株式会社
代表者:今井裕一 氏 設立:2002年1月
URL:www.strawb.jp スタッフ数:8名
事業内容:
静電アクチュエータの開発、ホルムアルデヒド発生源検知センサーの開発・製造・販売ほか
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
日本石油ガス株式会社および新日本石油株式会社(現JXTGエネルギー株式会社)より2700万円、チャレンジ・ジャパン・インベストメント株式会社(CJI)「がんばれ日本企業!ファンド」より6000万円、あいおい損害保険株式会社(現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)より1000万円
ILS2017 大手企業との商談数:
10社

当記事の内容は 2018/1/4 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める