“難聴者”にも“健聴者”にもよく聞こえる!
「音のバリアフリー」を実現するスピーカー

企業紹介

執筆者: 東 雄介  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

「曲面サウンド」なら
音量を上げなくても音が届く

展開している事業の内容・特徴

photo1.jpg
難聴者にも聞き取りやすいバリアフリースピーカー「ミライスピーカー」。開発しているのは秋葉原のお隣、台東区浅草橋でオーディオ事業を手がける株式会社サウンドファンだ。ミライスピーカーの秘密は、同社が独自開発した「曲面サウンド」にある。「音楽療法の専門家に『高齢の方でも蓄音機の音はよく聞こえる』という話を聞いたんです」と同社の佐藤和則社長。

通常のスピーカーの場合、音波を発信する振動板はすり鉢状になっている。一方、ミライスピーカーは曲げた下敷きのような形状。構造そのものはシンプルだが、通常のスピーカーとの違いは健聴者の耳にも瞭然としている。距離が離れても、また音量を上げなくてもクリアに音が聞こえるのだ。佐藤社長によれば「室内だったら、60~70m先まで、狭い廊下なら100m先まで届く」という。

実は、このメカニズムに学問的な裏付けがあるわけではない。その分、効果測定は念入りに行われた。これまで難聴者600名、健聴者800名を対象に実験を行い、うち7〜8割から「よく聞こえた」という回答を得られている。

「よくよく考えれば、ピアノやバイオリンといった楽器も曲面でできていて、ピアニッシモで弾いてもホールの後ろのほうまで音が届きますよね。私たちの発見は、この構造、この組み方のスピーカーで音を出すと、難聴の方にも健聴者の方にもよく聞こえるということです」

2014年には国内で構造特許を取得し、2015年10月から一般販売をスタート。販売を後押ししたのは、2016年に施行された障害者差別解消法だ。高齢者や難聴者などの個人ユーザーだけでなく、CSR意識の高い日本航空などの交通機関や野村證券などの金融機関、高齢者施設、教育機関、自治体、一般企業にまで、音のバリアフリーに対応するミライスピーカーが評価された。今後は、駅や病院などへの導入が期待されている。

ヒントはずばり「蓄音機」。
施設を回って実験・検証を繰り返した

ビジネスアイディア発想のきっかけ

photo2.jpg
佐藤社長はもともと、富士ゼロックスやサン・マイクロシステムズ、デルなどを渡り歩き、営業やマーケティングに従事したあとで、コンサルタントとして独立していた。

2013年に「蓄音機の音はよく聞こえる」と聞きつけ、ミライスピーカーの試作機を作ってみると「84歳の父親も、補聴器なしで聞こえる、と言うんです」。そこで音響メーカー出身の現取締役、宮原信弘氏を誘い、サウンドファンを創業した。「私自身、左耳の聞こえが弱い。それに、この仕事なら社会貢献ができると思ったんです」。

音は割とすぐに出た、と佐藤社長と言う。これは聞こえる、という確信もあった。しかし聞こえるメカニズムがわからない、治験データもないままでは売り出すことはできない。創業から2年間は、高齢者施設や難聴者の団体をまわって実験・検証を繰り返し、「確かに聞こえる」という生の声を集め、製品化にこぎつけた。

「その間、潰れそうになることが何度もあったが、そのたびに助けてくれる人が現れましたね。2016年には東京三菱UFJ銀行が主催するビジネスコンテストに応募し、ソーシャル部門で最優秀賞を獲得できました」

そこから資金調達に弾みがつき、2016年に製品化の資金として1億7000万円をベンチャーキャピタルなどから、2017年にも1億円を日本医療機器開発機構などから調達しながら、導入実績を増やしていった。

世界進出へ向け国際特許を取得。
東京オリンピックの採用も狙う!

将来の展望

導入実績が積み上がるほど、製品の信頼性も高まっていった。特に大きかったのは、野村證券が営業店舗での採用を決めたことだという。現在までに、全国97店舗にミライスピーカーが設置されている。

「高齢の方が参加されることが多い、投資セミナーなどで使っていただいているんですね。通常のスピーカーにミライスピーカーをアドオンするだけで、健聴者も難聴者もよく聞こえるようになります」

今後の目標は、ミライスピーカーを国内外に広めること。国際特許も約130カ国に申請中だ。2020年の東京オリンピック、パラリンピックでの採用も目指している。現在の製品ラインナップは、スタンダードモデルの「Boxy2」とハイスペックモデルの「Curvy」の2種だが、これも増やしていく計画だ。

ミライスピーカーの心臓部はすでに小型化、軽量化に成功している。「これを移動式のスピーカーやメガホンなど、いろんなものに組み込む可能性を模索しています」。サウンドファンのセカンドフェイズが、これから始まる。

ちなみに同社には、70歳超の従業員も在籍するなど「下町シニアベンチャー」としても知られている。「役員2人は72歳。平均年齢は55歳くらいで、40代といったらうちの会社では若手です。何をやるにも、年齢なんて関係ないですよ」。

株式会社サウンドファン
代表者:佐藤 和則 氏 設立:2013年10月
URL:https://soundfun.co.jp/ スタッフ数:19名
事業内容:
事業内容:バリアフリースピーカーの開発、製造、販売。

当記事の内容は 2017/11/16 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める