Web会議システム、Web接客システムで、
完全在宅勤務や次世代の接客スタイルを実現

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 松本 美菜  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

かゆい所に手が届くWeb会議システムで
まずは自社から完全在宅勤務をスタート
展開している事業の内容・特徴

20170608-1ニューロネット株式会社(東京都町田市)は、自社で開発したWeb会議システムを使った在宅勤務を実践している。取材に伺った際、社内を見渡すと、社長の他にスタッフは見当たらず、部屋の一角に設置されている大画面に、社員の方々の姿が映し出されていた。彼女たちは日々の業務を、都内ではなく、兵庫県などの遠隔地で行っているという。ここまでは、今の時代、それほど珍しいことではないかもしれない。しかし、驚いたことに、皆さんは社長と実際に会った経験がないのだという。

「当社は、採用の面接から入社後の教育、日々の業務に至るまで、1日も出勤する必要のない、完全在宅勤務を実現しています」と同社の代表取締役社長を務める前川博文氏が説明する。もはや「Web会議」というよりは、「Webオフィス」という環境だ。「もちろん、一言声をかければ、すぐにFace to Faceで会話ができますから、まったく問題はありません」

同社の代表的なサービス「SaasBoard」は、クラウド型のWeb会議システムだ。PC、iPad/iPhone、Android系の端末であれば利用が可能で、映像通話、テキストチャット、資料や手書きの図形描画などによるきめ細かな情報共有で円滑なコミュニケーションを図り、拠点の場所や会社の壁を越えた会議を実現できる機能を備えている。そのため、前述のような完全在宅勤務が可能となり、遠隔会議や遠隔セミナー、さらに、遠隔でのプレゼンテーションにも威力を発揮する。特別なソフトウェアは不要で、OSやブラウザも選ばないため、低廉な価格で導入することができるという。無料のプランもあるが、標準的な価格は、小規模事業者・個人向けでは、1ユーザーあたり月額2980円(税別)から、法人利用の場合は、同時100接続の場合、月額30万円(税別)など、多彩なコース設定で、いずれも初期費用は無料だ。

「かゆい所に手が届くさまざまな機能が豊富で、使いやすく、高画質な映像と安定した音声が得られます。中でも、高い同期性を兼ね備えているところが、当社が提供するWeb会議システムの最大の特徴です」。たとえば、通常のWeb会議で10人が出席した場合、資料の同じページを共有するためには、全員が手元の端末で操作しなければならない。ところが、この「SaasBoard」では、プレゼンターがページをめくれば、参加者全員の手元の画面も同時にめくられる。プレゼンターが操作する画面と参加者の端末画面の動きが同期しているため、参加者が途中で自分の端末の操作につまずき、そのために議事が中断することもなく、会議がスムーズに進行する。

こうした機能を実現するのが、画面上に表示される「Webボード」だ。ここに資料を貼り付け、強調させたい箇所を手書きでマーキングしたり、コメントを書き込んだりすることに加え、動画、音声データ、写真を貼り付けるなどの機能が、誰でも簡単に操作できる。「クリエイターが自分の作品を遠隔でプレゼンしながら打合せをするといった場面にも利用可能です。いわば、Web上のコンテンツをはじめ、さまざまなメディアを簡単に展開することができるプラットフォームであるといえるでしょう」

夜中のミーティングを何とかしたい!
「困った」から生まれた起業のヒント
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170608-2前川氏はかつて、数社の外資系IT企業の代表として、ゼロから会社の立ち上げを行った。最後に日本法人代表を務めたのは、世界各国に約5000名の従業員を擁するドイツのグローバル企業で、営業、技術、人事、マーケティングなどの業務を1人でマネジメントしていた。その後、「そろそろ自分の会社を興すことができるのではないか」と考え始め、2002年にニューロネットを設立し、ERPコンサルティング事業を始めた。また、数社の成功企業を立ち上げた手腕を買われ、産業総合技術研究所において、ビジネスシーズの事業化可能性や優秀な研究者選択の目利きを担当する、スタートアップアドバイザーを兼任することとなった。

そして2008年、大きな転機が訪れる。当時、京都大学の講師でWeb会議システムの基礎を研究していた久保田秀和氏との出会いだ。その研究成果に、前川氏は閃きを得たという。

「ドイツ企業の日本法人の代表として立ち上げに奔走していたころ、たびたび会議への出席を求められました。本社はドイツ、海外拠点は北米が多かったため、会議の時間は必然的に欧米の都合で設定されます。それが日本時間の夜中の3時、しかも、月に1回のエグゼクティブミーティングはもちろんのこと、マーケティングや営業のディレクタークラスの会議が、週3回はありました」

当時は音声のみのテレカンファレンス。全拠点約50カ国の人たちが参加する会議は、オランダ語訛りやスペイン語訛りの英語が飛び交い、聴き取りにくいうえに、音声のみでは、対面で会話をする3倍ほどのエネルギーが必要であったという。

「こちらは意識が朦朧となってくる深夜の会議で、『日本はどうだ?』などと突然指名され、『えっ?聞いていなかった!』と頭が真っ白になることもしばしば。そんな状況が続きました。しかし、会議の時間を待つために、オフィスに泊まり込むのもばからしい。顔が見えて自宅で取り組めるテレビ会議のようなものができないものかと考えていました。顔が見えなくても、せめて資料など、ビジュアルでやりとりし、後は音声でできれば、どんなに楽だろうと。そんなことを考えていた矢先に、久保田さんに会い、Web会議なら、この問題を解決できるのではないかと、すぐに、事業化を持ちかけました」

そんな経緯から開発をスタートさせ、2010年に「SaasBoard」を製品化する。ただ、その時点では、完全な在宅勤務の実現を念頭に置いていたわけではなかった。きっかけは、2011年3月11日の東日本大震災だ。

「震災後、当社は平常業務を継続していましたが、多くの一般企業では数日間、業務が滞る事態となりました。その時に考えたのです。交通手段が使えなくなっても、在宅勤務を完璧にできる仕組みがあれば、有事の際でも仕事は止まらないと。そこから模索が始まり、さまざまな機能を追加し始めました」。そうやって進化させた「SaasBoard」を活用し、2012年から自社で完全在宅勤務を導入したというわけだ。前川氏は完全在宅勤務には主に3つの効果があると指摘する。

「1つ目は、首都圏で行っている仕事を、人を含めて各地に分散できれば地方の活性化につながります。2つ目は、通勤者が減れば、オフィスのスペース自体も減り、必要な資源や電力、交通手段にかかるエネルギー消費が低減され、省エネルギー社会の醸成につながること。3つ目は、育児中の人や介護をしている人たちの雇用機会の拡大にも寄与できることです。これらを支援するのが、当社のミッションでもあります」

双方向映像音声顧客サービスで、
リアル店舗のようなWeb接客を実現
将来の展望

「Saasboard」に加え、同社が力を入れているのは、双方向映像音声顧客サービス「MOSHIMOSHI INTERACTIVE」だ。これは、映像、音声、テキストチャット、資料などの共有を双方向で行いながらFace to Faceでの会話ができたり、画面を見ながらサポートを受けることが可能な次世代のWeb接客コミュニケーションツールだ。同社はこのサービスにACD(Automatic Call Distribution)という、もともとコールセンターで用いられてきた、スイッチング技術を採り入れた。「当社のACDはコールセンターに着信があると、オペレーターの役割を担う最適なエージェントに電話をつなぐもので、これを映像音声の中に組み込んだのは、世界初の技術です」

「『MOSHIMOSHI INTERACTIVE』を用いると、Web店舗であってもリアル店舗のような接客が可能となります。たとえば、従来、音声のみで対応していたコールセンター業務は、当社のサービスにより、お客様の顔やトラブルを抱えている商品などを画面で視覚的に確認しながらやりとりすることで、問題点の迅速な解決につながるでしょう。また、わかりにくい契約書や注文申込書も、内容を画面に表示させながら、エージェントが説明や確認、さらに、お客様に代わって入力することができるため、記入ミスや注文をする個人の負担を軽減する効果が見込まれます。お客様への『いらっしゃいませ』から、資料の説明、ナビゲーション、注文受付、クレーム処理まで、必要となるリアル店舗運営業務が完結できるというわけです」

ネット通販や各種カスタマーサポートのほか、金融機関や旅行代理店などのリアルの店舗であれば、顧客の待ち時間の短縮や機会損失解消にも一役買うだろう。また、遠隔医療など、さまざまな分野への利用が考えられる。さらに、年々深刻さを増している人手不足の解消にも貢献するはずだ。「働き方改革が浸透しつつある今だからこそ、力を入れて行くべきだと考えています。『MOSHIMOSHI INTERACTIVE』を広く展開し、販売手法の革命につなげていきたいですね。将来は高額商品も販売できると確信しています」と前川氏は自信をのぞかせる。

本サービスの価格は、フリーパックのほか、テキストチャット、音声・テキストチャット、映像・音声・テキストチャットの3コースで、1エージェントにつき、月額3000円(税別)から1万8000円(税別)、そのほかに設置費用などが必要となる。

前川氏は「MOSHIMOSHI INTERACTIVE」を、年内に数十社に導入できると見込んでいる。一方、「SaasBoard」は官公庁や自治体、大学、民間企業など、すでに約500社に導入されているという。

「実績豊富な『SaasBoard』と次世代のWeb接客システム、『MOSHIMOSHI INTERACTIVE』の両輪で事業を拡大させ、3年から5年後のIPOを計画しています。現在、シリコンバレーに拠点を置く準備を進めており、米国では、『MOSHIMOSHI INTERACTIVE』をコアビジネスとして展開する予定です」。世界一のネット通販大国に、日の丸企業が革命をもたらす日は近いのかもしれない。

ニューロネット株式会社
代表者:代表取締役 前川 博文 氏 設立:2002年
URL:http://www.neuronet.co.jp/ スタッフ数:
事業内容:Web会議システム「Saasboard」の提供など

当記事の内容は 2017/06/08 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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