目に見えないドットを印刷し、紙をIoT化!
モノと情報をつなぐ「スクリーンコード」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 佐々木正孝  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

“京”単位の情報を集積できる
不可視のプリント技術を独自開発
展開している事業の内容・特徴

20170530-1一見すると普通の印刷物だが、専用ペンで読み取ると音声を再生したり、スマホをかざすと動画にリンクしたり……目に見えない精巧さでプリントされる「スクリーンコード」。これぞ、印刷物に付加価値、情報を集積させる株式会社アポロジャパンのコア技術だ。岸上郁子代表に、その先進性を語っていただこう。

「私たちは、このコードを“世界を変える見えないドット”と呼んでいます。バーコードやQRコードのように目に見えないので、誌面やプロダクトのデザインを制約することはありません。しかも、スマホアプリを使って高精度に読み取りができる。3〜10mm角の中のドットの組み合わせパターンは“兆”を超えて“京”単位に。従来の二次元コードではなし得なかった大容量のデータも埋め込めるようになったのです」

見えない情報をどうやって印刷するのか。それは、CMYK画像のK版(墨インキ)をスクリーンコード専用にして、従来のK版はCMYKの掛け合わせで表現するから。精度を高めた専用の印刷方式もあるが、現行スタイルでも、このスクリーンコードは十分に印刷可能なのだ。

スクリーンコードはアイデアしだいで無限大の可能性を秘める。同社は音声ペン「スピークン」を独自開発。ペンをタッチすると音声を読み上げる機能にスクリーンコードを起用した。こちらは大手の子供英会話教室に導入実績があり、失語症患者、視覚障害への支援など医療福祉分野でも活用されている。スマホでのスクリーンコード読み取りは、サービス業のインバウンド対応などでも大活躍するはずだ。音声読み上げや動画リンクによる観光案内、メニュー、商品説明など、多言語に対応するガイドコンテンツとして、用途はいくらでも考えられる。

「私たちは中国にも関連会社を持っていますが、中国では真贋判定、セキュリティ、トレーサビリティなどでも活用されています。たとえば、スクリーンコードはコピーすると原稿のCMYKのドットが読み取れなくなり、本物とコピー商品の見分けが簡単につけられます。中国政府発行のパスポートにもスクリーンコードが使われるなど、着実に実績を積んでいます」

中国と日本をブリッジしながら
高度なものづくり技術、知見をストック
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170530-2アポロジャパンを創設したのは中国・天津市出身の顧澤蒼氏。日本のものづくりに魅了された顧氏は、1995年に天津で起業。日本企業と組んで電子組版ソフトを開発し、印刷、カラー合成の技術、知見を深めていった。そして、独自研究を重ねて開発したのがスクリーンコードだ。2005年にアポロジャパンを設立したが、2016年、顧氏は中国市場の開拓に専念すべく日本法人の代表を退任。その後も、現在、顧氏の妻でもあり同社代表となった岸上氏を技術面、そして緻密な特許戦略でサポートしている。

「日本・中国で合わせて90以上の特許を申請してきました。一つの特許の有効期間は十数年程度が一般的ですが、周辺技術、関連機器に拡大すると長期間にわたって特許を保持できるんです。真贋判定にニーズのある中国ではセキュリティ関連を中心に取得し、日本では厳選して取得する。集中と選択が弊社の特許戦略のストロングポイントになっていますね」

日中をブリッジしてビジネス戦略を構想する一方、資金調達は地に足の着いた姿勢で進める同社。起業後の開発資金は助成金、銀行からの借り入れでスマートに確保してきた。「ものづくり補助金」に6度申請し、4度にわたって取得。横浜市販路開拓支援事業にも認定された。社会貢献・課題解決に寄与する技術が高く評価されているのだ。

「スクリーンコードを検査するための基盤、スマホアプリの関連技術など、既存のスクリーンコード技術をブレイク・スルーするものは、助成金によって開発できてきました。広く一般に向けた普及を視野に入れる上で欠かせないコア技術、機器はここぞという場面で集中的に開発してきたのです。最先端なだけでは意味がありません。あくまで、人の生活に寄りそう最先端技術でなければ」

ハードやデバイスに縛られず
技術をアピールして未来に生き残る
将来の展望

「もっとも強い者でも賢い者でもなく、もっとも変化に適応した者だけが生き残る」。かのダーウィンの言葉を引き、岸上氏はアポロジャパンのロードマップを振り返る。

組版ソフトの開発に始まり、印刷技術への造詣を武器に起業。スクリーンコードという根幹技術を開発後は、音声ペン、スマートフォンといったデバイスと次々に連動させ、IoT時代の潮流に乗って人とモノ、情報をつないできた。今後は、スクリーンコードの汎用性をさらに高めるべく、さまざまなパートナー企業との連携を模索する。

「現在はモバイルからのスクリーンコード読み取りに注力しています。ハードづくりから脱却し、ファブレスで開発を進めてきました。音声ペンの事業も、ペンを売るのではなく技術、ライセンスを売るビジネスモデルを採っています。変化に適応し、生き残っていくためにはフットワーク軽く、変わりやすいスタイルを保っていかなければなりません」

技術開発から、スクリーンコード関連のライセンスビジネスに移行しつつあるという同社。前々期の年商は約9000万円、前期は5000万円を切ったというが、利益率はむしろ向上した。ライセンスビジネスに軸足を移す転換期、ビジネスはさらに加速している。

「スクリーンコードの検査機開発、プロダクトへのプリントなどでさまざまな企業と協業を進めています。私たち先端技術と生活をつなぐ、そして中国と日本をつなぐ、いろんな意味でのブリッジカンパニーでありたい。小さくてもキラリと光るものを持ち続けていたら、自社商品、サービスと掛け合わせたいというパートナーが現れるはず」

東京オリンピックに向けたインバウンド、ゲート管理、チケットセキュリティ。ドローンやシステム化による流通新時代のトレーサビリティ。コピー技術の巧妙化を防ぐ真贋判定。2020年代に向け、スクリーンコードが活躍するフィールドは広がる一方だ。

見えないコードがリンクさせるのは、先端技術と生活が寄りそう未来。人とモノ、情報をつなぐ同社がプレゼンスを増していくことは間違いないだろう。

株式会社アポロジャパン
代表者:代表取締役 岸上郁子 氏 設立:2005年
URL:http://www.apollo-japan.ne.jp/ スタッフ数:5名
事業内容:スクリーンコードのライセンス事業、関連事業のソフトウェア開発。IoT技術向けのスマートフォンアプリの開発。

当記事の内容は 2017/05/30 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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