スポーツ中継、自動運転に引っ張りだこ!
大学研究室から飛び出したARベンチャー

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 佐々木 正孝  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

国内で自社開発し、多様なニーズに対応。
AR・画像認識をハイレベルで追究する
展開している事業の内容・特徴

20170502-1ここ数年、デジタルサービスのバズワードとして注目を集めている「AR(拡張現実感)」。本領域において、高度な画像認識技術で豊富な実績を誇るのが株式会社コンセプトである。

たとえば、ヘリコプターからの空撮映像とCGのマラソンコースをバーチャルで合成したマラソンの中継。「カップまであと○○ヤード」とグリーン上に距離を表示するゴルフの中継。レシーブ、トス、アタックなどボールの軌道を3Dで再現したバレーボールの中継――。あなたも、スポーツのテレビ中継で同社のコア技術を目にしたことがあるはずだ。

同社はARで求められる画像処理技術を独自に向上させ、トラッキング(画面内の物体の追跡)技術、画像認識などの技術の研究を重ねてきた。画像のスピード処理を追求し、スポーツ世界大会、ライブイベントの生中継など、大舞台での実績は数えきれないほど。

「センサーなどを使わずに画像処理だけでこなし、しかも生放送でもフレーム落ちしないように表示させる。競合もありますが、このレベルの技術を単独で持っているのが我が社のメリット。リアルタイム性やパフォーマンスが重視される放送分野で優位性を発揮できるゆえんです」(同社代表・林建一氏)

林氏の言うとおり、国内で同様の技術を提供する競合は少なくない。しかし、そのほとんどは海外企業のライセンスサービスを提供しており、カスタマイズ、組み込みの幅には限界がある。一方、コンセプト社は社内に技術者陣を揃え、独自に研究・開発を行ってきた。クライアントの要望にきめ細かく応じられる体制において他の追随を許さない。“代表取締役兼CTO(最高技術責任者)”という林氏の肩書が、技術オリエンテッドの企業姿勢を象徴している。

「最近は、ドローンの空撮画像と組み合わせ、ARをさまざまな産業分野に応用したいという要望も増えてきています。そんな時は、利用シーンに応じて認識アルゴリズムを開発している研究者をアサイン。クライアントと足並みを揃え、AR技術を活用した新しい表現や技術開発が行えるのも私たちのストロングポイントです」

大阪大学の研究室からスモールスタート。
R&Dで技術資産をストックしていく
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170502-2コンセプト社の母体になったのは、大阪大学の研究室だ。林氏はAR研究で目覚しい業績をあげていた加藤博一氏に師事。ARの研究に没頭しつつ、さまざまな企業、研究機関に技術を提供しており、同大学のメンバーと共に博士課程の2年次に起業した。コンセプトのコア技術は、林氏が大学の研究室で学び、身につけたスキルがベースだ。

「株式会社コンセプトを立ち上げたのは2008年。ちょうど、スマートフォンやアプリが注目を集め始めていた頃です。それまでは研究対象でしかなかったARが、デバイスの進化によって一気にブレイクスルーの期待をはらむようになりました。博士課程の学生が、身につけた技術をフルに生かせるキャリアパスの一つとして、起業を選んだんです」

当初はあくまでスモールスタートを標榜。受託開発を請けつつ、役員報酬はゼロに設定。ランニングコストを押さえつつ、ARの研究開発に資金と人手を投下していった。

「外部から資金を調達し、プロダクトをリリースして回していく。これがベンチャーとして成功するための最短ルートなのかもしれません。だけど、私たちはあくまでR&Dを地道に進めていきたかったので、当初は受託開発に注力。ただ、案件は厳選しました。エンジニアリング、作り込みがメインのものではなく、基礎技術に生かせそうなものを選択し、集中したのです。会社の技術資産になると思った仕事は、安価でも積極的に受ける。軸がブレないよう、統一した指針を打ち出していました」

2010年7月、同社はメンズライフスタイル誌『GQ JAPAN』とARを共同開発。ネクタイ、腕時計をFlash上で試着できる“リュクス”なARサービスが広く話題を集める。この成功がフックになり、バンダイナムコゲームス、テレビ朝日、電通、凸版印刷など名だたるクライアントのARプロジェクトを成功に導いた。以来、その実績からオファーは引きも切らない。「営業に人員を割くことなく、技術開発にリソースを集中できています」と、林氏は理想的な同社の開発環境に胸を張る。

プロユースからコンシューマー向けを視野に、
ARのさらなる普及を目指す
将来の展望

20170502-3コンセプト社は、ARや画像処理・認識のサービスをライセンス化し、メディアやスポーツ、ドローンサービスなどに提供している。経営を安定させ、技術をさらにスパイラルアップさせていくための仕組みづくりに余念がない。

「2016年度の年商は1億8000万円で、今期は2億4000万円を見込んでいます。ライセンス収入が増え、それが底支えしてくれていますね。受託開発も行っていきますが、軸足はライセンスビジネスに移し、BtoCビジネスも視野に入れていく。これが今後のロードマップです」

林氏がコンシューマー向けに提供を構想するのは、スポーツ系の画像処理・分析サービスだ。プロ野球でもMLBの影響を受けて『マネー・ボール』流ビッグデータ分析が盛んだし、バレーボールでも監督がタブレットを片手にリアルタイムでデータを分析し、作戦を立案している。スポーツ界にも否応なしにデータの奔流がなだれ込んでいるのだ。プレーのデータを分析し、技術や戦術の向上に役立てようとする動きはプロ、メディアにとどまらない。アマチュアでも活発になっていくのは間違いないだろう。

「コンシューマー向けに安価なサービスを提供していく上で、私たちのアプローチが強みになります。海外のサービスは数千万円単位のハイスペックな機器と組み合わせ、高精度の画像処理を提供する。私たちはというと、どこでも安価に購入できる機器を組み合わせることで、極端にいえばスマートフォンのカメラで、それなりの精度が出せる。メディアやプロチームと培ってきた技術をオーソライズし、広く一般に届けていきたいと考えています」

高度な技術を磨き続けながら、汎用性を意識してコンシューマー向けサービスにも注力。林CTOの視線は、AR・画像認識が“コモディティ”になった未来へと向いている。

株式会社コンセプト
代表者:林 建一 氏 設立:2008年7月
URL:http://qoncept.co.jp スタッフ数:12名
事業内容:独自の画像処理技術を開発し、テレビ/放送、スポーツ、土木分野のロボット、ドローンの自動制御などに提供。

当記事の内容は 2017/05/02 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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