IoTデバイス&プラットフォームで、
未来の画期的なモビリティ社会に貢献!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 髙橋 光二  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

ローンの与信審査業務を軽減する
IoT遠隔起動制御装置「MCCS」
展開している事業の内容・特徴

20170425-1IoTデバイスの遠隔起動制御装置「MCCS」を開発するとともに、2020年までに全世界で500億のIoTデバイスが登場することを想定し、あらゆるデバイスと接合できるIoTプラットフォームを構築するベンチャー企業――。それが、モビリティIoTサービスのグローバル展開を目指す、Global Mobility Service株式会社(以下GMS)である。

現在、同社が注力しているのは、フィリピンの電動三輪タクシー「トライシクル」の販売を支援するIoT×FinTechサービスの普及だ。先述した「MCCS」を車体に取り付けることで、エンジンの起動を安全にリモートコントロールできる。例えば、車を販売した所有者のローン返済が滞った際は、融資した側は約束の支払いが完了するまで車を運転できないように遠隔制御し、ローンの与信補強や審査業務の省略、貸し倒れのリスクを軽減できるというわけだ。

フィリピンではローンが組めない低所得層が人口の7割を占めるといわれており、それがネックで車両販売台数が伸び悩んでいた。しかし今、同社が提供する販売金融システムが、「トライシクル」商売を始めて生活レベルの向上を目指す事業者を増やすことに貢献している。2015年11月のサービス開始から1年数カ月で、1000台近くの販売やリース契約につなげているという。

日本国内では、2016年7月、住友三井オートサービス株式会社と業務提携し、新たなオートリースサービスを共同で検討・提供していく計画だ。その第一弾として、国内信販大手の株式会社セディナと協業し、フィリピン同様のサービスをスタートさせる。ビジネスモデルとしては、GMSがセディナに「MCCS」をサービスとして提供し、セディナは購入費用を金利に上乗せして回収するかたちだ。

フィリピンで電気自動車普及の“壁”に遭遇。
解決策を考え抜き、金融ソリューションに着目
ビジネスアイディア発想のきっかけ

20170425-2同社代表取締役の中島徳至氏は1994年、27歳で自動車パーツメーカー、株式会社ゼロスポーツを起業。1998年には、オリジナル電気自動車の開発に乗り出し、2003年、国土交通省から型式認定を取得、国内17番目の自動車メーカーとなった。自動車メーカーなど約350社が加盟する電気自動車普及協議会の初代代表幹事にも就任し、電気自動車の普及に尽力してきた人物だ。

2011年、電気自動車の事業化スピードを速めるため、ゼロスポーツの電気自動車事業を譲渡した渦潮電機株式会社に転じる。ちょうどその時、アジア開発銀行がフィリピンに電動トライシクル10万台を導入する計画を発表。このタイミングで中島氏は、渦潮電機が100%出資した現地法人BEET Philippine inc.を設立し、初代CEO兼代表取締役社長に就任した。その後、新規格の電動車両を開発し、フィリピンにおいて日系企業で初めてナンバープレート取得に成功したのだが……大きな“壁”が立ちはだかった。

「支払能力があるにもかかわらず、ローンの与信審査に通らずに購入できない人があまりにも多かったのです。ゆえに、現地では経年劣化した車両が大量に走り、大気汚染に歯止めがかからない状況に陥っている。いくら静かで環境に優しい電気トライシクルをつくっても、乗る人がいないのでは本末転倒ですし、補助金などで一時的に導入を進めても、持続できなければやる意味がありません。そこで、持続可能な状態で電動トライシクルを普及させるにはどうすればいいのか、必死で考え抜きました」

試行錯誤を重ねた中島氏が着目したのが、金融ソリューション機能であった。「金融機関が安全に融資を回収できる仕組みをつくれば、この問題は解決できる」と考えていた頃、本社への帰任辞令が降りる。悩んだ末に自動車製造の立場を捨て、サービスに特化した専門会社としてGMSを設立、開発に取りかかったというわけだ。さらには、このデバイスから取得するデータを蓄積、ビジネスに活用する道を見出し、IoTプラットフォームの構築に着手していったのである。

あらゆる分野の企業と連携することで、
新たなサービスや産業を生み出したい
将来の展望

20170425-3「MCCS」を搭載していれば、入金状況やそのトライシクルがいつ、どのルートを、どのくらいの距離を何時間走行したのかという、詳細な“トラックレコード”(稼働情報)を取得することができる。

「この“トラックレコード”は、例えば当該車両がどれほど忙しく稼働しているか、ドライバーがどれ程の収入を得ているかを、完璧に証明してくれます。『事業好調につき、もう1台増やしたい』と“MCCS”搭載車両を使っている業者などが融資を申し込んできた場合、審査の作業がぐっと軽減される。ここに、事業支援はじめ、環境にやさしい新しい自動車の実需を増やすという大きな社会的意義があると考えています」

新規で1台の自動車が販売されると、もれなく燃料、整備、保険、車検などの需要がついてくる。例えば、同社が提供するIoTプラットフォームに保険会社がアクセスすれば、“トラックレコード”が証明する運転状況に応じて、保険料が自在に設定できる画期的な保険商品を提案できる。また、車検違反車両を突き止めて起動を制御したり、自治体の車両流入規制にも活用可能だ。

さらに、「MCCSは車だけでなく、建設機械や工作機器などにも搭載できます」と中島氏。例えば、多くの新興国は、先進国から中古の建設機器を輸入している。その装置内に「MCCS」を組み込み、IoTプラットフォームに接続すれば、車両同様の操作制御や稼働データの収集ができ、その普及をさらに推進することができるだろう。つまり、「MCCS」とIoTプラットフォームによって、まったく新しい“社会インフラ”を創造できる可能性があるのだ。

「金融業者はじめ、各種メーカー、流通業者、サービス業者などあらゆる企業に当社のIoTプラットフォームを導入、連携してもらいたいと考えています。キーワードは、“オープン&クローズ戦略”です。自社独自の技術やサービスを守りつつも、新しいサービスを寛容に受け入れてイノベーションを共創する。そこからきっと画期的なサービスや新たな産業が生まれると確信しています」

Global Mobility Service株式会社
代表者:代表取締役 社長執行役員/CEO 中島 徳至氏 設立:2013年11月
URL:http://www.global-mobility-service.com スタッフ数:45名
事業内容:IoTデバイスとプラットフォームシステムを活用した、モビリティIoT×FinTechサービスの提供

当記事の内容は 2017/04/25 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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