産地から消費者まで、食べ物が届くまでを見える化する。NPO東北開墾の「東北食べる通信」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

モノだけでなく、情報もコミュニケーションも流通にのせる。
展開している事業内容・特徴

20140612_12013年7月、食べ物と情報誌が毎月届く「東北食べる通信」が始まった。毎月1980円(送料・消費税込)で、ホタテや魚、お米やわらび等、東北各地の生産物が会員である消費者に産地から直送される。

一度届いた商品をリピートする「おかわり」や、会員ではない友人知人にプレゼントする「おすそわけ」というサービスもある。

運営しているのは岩手県のNPO法人「東北開墾」。2014年6月時点で「東北食べる通信」の会員は1200名ほど。毎月、こだわりの生産活動を続ける生産者を取材し、情報誌を製作。食べ物とセットにして全国の会員に配送している。

また、同NPOでは生産者と消費者の間に顔の見える関係を築くため、モノを届けるだけではなく、情報誌で産地の紹介や生産者の思いを伝え、さらにソーシャルメディアを通じて生産者と会員の直接コミュニケーションにも積極的に取り組む。ソーシャルメディアには、読者からの届いた食材への感激の声や、届いた食材をもとにしたレシピが投稿されるなど、とても活発なコミュニティとなっている。

今回取材に応じてくれたのは、「東北食べる通信」運営現場の責任者である阿部正幸氏。3.11の東日本大震災の後、当時勤務していた大阪から、ボランティアで岩手を訪れるようになり、現代表の高橋 博之氏と出会い、同NPOの設立から参画している。

阿部氏は語る。「現在は、農家が生産した産物が消費者に届くまでの間に、さまざまな情報が削げ落ちてしまう」

例えば、牡蠣ひとつとっても、生育環境によって個性があり、生産者の創意工夫、作る過程の苦労などさまざまな背景が存在する。牡蠣ひとつひとつが生き物で、個性もあるはずだ。しかし、都会で買う牡蠣は流通等のなかで規格化された「商品」にすぎなくなり、店頭で購入する消費者は、値段と見た目で判断して買うしかない。

東北食べる通信は、モノとしての食べ物だけではなく、流通の壁で見えなくなってしまった生産地の情報に本質的な価値を見出し、見える化を図る事業だ。

また、この「食べる通信」は全国に広がっている。東北以外では2014年5月「四国食べる通信」が創刊された。隔月発行で一冊3980円。創刊号からすでに250人の会員が集まっている。

2014年中には、宮城県の「東松島食べる通信」、北海道から「北海道食べる通信」と、4~5誌の食べる通信がスタートする見込みだという。

「東北、日本の一次産業をなんとかしたい。自分もリスクをとって手を動かすべきだ」と決意した、代表の高橋氏の強い想いが共感を呼んだ。
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20140610-4NPO法人「東北開墾」の代表である高橋 博之氏は、もともとは政治家だ。20代の頃は東京で議員秘書などを務め、30歳を機に地元の岩手県に帰郷。その後岩手県議会議員を2期8年務め、2011年の岩手県知事選に出馬したが、次点で敗れた。

その後、高橋氏は被災地支援を続けながら、議員時代から課題と考えていた岩手・東北の一次産業の現場にも何度となく足を運ぶことになる。

生産者達が多くの被害を受け、数百万、数千万と多額の借金を抱えながらも、生業を取り戻そうと必死な姿を見て、高橋氏は自分自身もリスクをとり、口だけではなく手を動かして行動をおこさなければならないと腹をくくり政治家を引退、事業家として再スタートすることを決意する。

「岩手の一次産業をなんとかしたい。それには事業として取り組むべきだ。」高橋氏のこの強い想いと決断に、現在の理事をはじめさまざまな人の共感が集まり、2013年7月、「東北食べる通信」の創刊にこぎつけた。

現場責任者の阿部氏は北海道の出身で、震災当時は大阪で営業職に就いていた。震災後、1週間の予定で岩手県にボランティアにやってきたが、被災地の状況を目の当たりにし、「社会人で経験をつんだ人間がもっと必要だ」と感じた阿部氏。ボランティアの期間は、1週間の予定が1カ月、1カ月の予定が1年に延び、その中で2012年8月、高橋氏と出会うことになる。

阿部氏によると、「東北食べる通信」は、生産者と消費者の顔の見える関係を築くための導入的な事業という位置づけで、いずれは欧米を中心に広がりをみせている農家会員制度(CSA:Community Supported Agriculture)を日本で定着させたいという。

CSAでは、年会費を会員が前払いし、天候や不作などリスクも生産者とシェアしながら顔の見える関係で農作物を定期購入する仕組みだ。同法人が運営するCSAでは、年に2-3回、生産者から生産物が届く。現在120名ほどの会員がいる。この数をもっと増やしていきたいと語る。

日本食べる通信リーグの規模拡大、CSAコーディネーターの養成。東北から全国へスケールアウトする。
将来への展望

20140612_3現在の「東北食べる通信」は2000人の会員が目標というが、2000人を超えてスケールアウトするには、地域を広げる必要がある。また、一次産業が抱える問題は、東北だけではない。

「モノが産地から消費者に届く間に失われる価値を、見える化する」これに共感する人々を増やし、5年後には全部で30~50の食べる通信が存在すること、できれば各都道府県に最低一つの食べる通信を創刊する。これが将来の目標だ。

これらの目標を現実のものにするため、同法人は「一般社団法人 日本食べる通信リーグ」を立ち上げた。この一般社団法人では、システムの運営、商標の管理、加盟地域の審査を行う。ただしフランチャイズのような上下関係ではなく、各地域の運営母体の代表らが集まり、運営ルールなどを決めていく方式をとる。

また、CSA事業では、5年後に6億の流通規模にのせること、これを達成するためにCSAコーディネーターを制度として発足させ、30人ほど養成したいという。CSAコーディネーターは、生産者とCSA会員の間にはいってCSAの運営や情報発信をサポートする役割をもち、CSAコミュニティのハブになる。

「平日は都市部で就業し、休暇には生産地でリフレッシュしながら、インターネットに強い人なら生産者の直販サイト作りをしたり、飲食関係に強い人なら生産物の販路拡大に生産者とともに取りくんだりと、CSAコーディネーターとして活動もする。コーディネーターは自身の強みを活かしながら都会と生産地をつなぐパイプ役を果たす。そういった働き方もできる環境を創っていければ。」阿部氏は語る。

食べる通信を通じて、東北のみならず全国に、地域振興、流通の見える化が広がっていくことを応援したい。

特定非営利活動法人東北開墾
代表者:高橋 博之氏 設立:2013年10月
URL:
http://taberu.me    http://kaikon.jp/
スタッフ数:8名
事業内容:
・メディア事業、食品流通業、通信販売業

当記事の内容は 2014/6/12 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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