リピート率ほぼ100%!原宿で鍛えたプロが仕かけた、介護施設向けの出張美容サービス「trip salon un.(トリップ・サロン・アン)」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

安かろう悪かろうの訪問美容サービスに物申す。感動される美容サービスが大人気!
展開している事業内容・特徴

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超高齢化社会が進む日本。有料老人ホーム、養護老人ホーム、特別養護老人ホームなどの高齢者介護施設に入居する高齢者数は、2011年時点で約30万人といわれている(※厚労省などの統計資料より)。

そうした施設に入居している高齢者の散髪・美容については、訪問型のサービスが一般的で、その多くが、1人当たり500~1000円といった低単価なのだそう。それゆえ時間が短く流れ作業のように行われるため、入居者にとってとても満足いくようなサービスとはいえない。

そんな高齢者介護施設向けの訪問美容サービスで注目を浴びているベンチャーがある。それが今回紹介する「trip salon un.(トリップ・サロン・アン)」だ。

同サービスは、原宿の有名美容室で受けられるようなサービスを売りとしている。実際、原宿、青山の有名美容室で腕を磨いたプロが機材一式を持ち込んで、介護施設内に臨時の美容室を開く。

1人ずつ丁寧に対応するのはもちろん、季節に合わせたアロマを焚いたり、音楽をかけたり、待ち時間にはマッサージなども行う。アロマは数十件のお店を回り、こだわり抜いて選んでいる。シャンプーやカラー材、パーマ材も、すべてオーガニックで身体にも環境にもよいもの、匂いが残らないものを選んでいる。

そうした本物志向、高級感あふれるサービスが受けて、2013年1月にスタートしたばかりだが、すでに大人気。取材した2013年10月時点で、正社員3名と登録美容師が15名。それが常にフル稼働。すでに100施設以上と契約を結んでいる。

具体的な運営方法は、1チーム2~3人で施設に出張。一度の訪問で多い時には30名ほどに対応し、1カ月で約70施設を回る。当然、1日で複数の施設を回ることもザラで、今、新規の依頼には対応しきれないほどの忙しさ。現在は新規の依頼に応えるべく、スタッフ数をどんどん増やし教育している最中だ。

客単価はカットで3000円から。訪問美容の相場からするとかなり高いが、同サービスのリピート率はなんと100%近いという。

「trip salon un.」を運営するのは、株式会社un.。創業者である湯浅一也氏と桜庭 太氏はともに美容師だ。チームを率いて出張サービスに奔走する一方、各地で介護施設事業者向けの勉強会などに参加し、自分たちのサービスの説明もこなしている。最初は高すぎると反発されるものの、一度利用してもらうとみんな感動し、リピート客になるという。

専門学校時代、ボランティアで参加した訪問美容サービスの質の低さを何とかしたいと思い立つ
ビジネスアイデア発想のきっかけ

tripsalon2 湯浅氏と桜庭氏はともに美容師を目指し、美容専門学校へ進学。専門学校を卒業後、湯浅氏は原宿、桜庭は南青山の有名美容室で修業をしていた。

両氏が訪問美容の世界に踏み出すことになるきっかけは、お小遣い稼ぎのつもりで参加したボランティアの訪問美容サービスだった。そこで訪問美容を初めて経験した2人は、訪問美容サービスの質が悪さに驚いた。短時間で流れ的に扱われる様やご利用者様の意思が尊重されていないのを見て、もっと改善できるはずだと思った。

美容業界自体が1000円カットと高級店との二極化しつつあるなか、訪問美容についても質の高いサービスや美容室特有の異空間や高級感をもとめている方もいるはずと思い、独立を決意した。

美容室を辞めて会社を設立したのは2012年8月。最初の3、4カ月は土日に美容室スペースを借りて得意客の髪を切りながら、平日は介護業界について猛勉強を続けた。

売上目標、営業計画書なども作成し、サービスの内容も固まり始めたところで、2人が最初に訪問した施設は、なんと精神科病院だった。

そこでは、カットの途中で暴れる人、手を噛んでくる人、クロスを脱ぎ取って暴れる人など、強烈な体験が待っていた。しかし、それは覚悟の上。

実際に精神科病院に最初に足を踏み入れた時は、施設独特の臭いや雰囲気などに怖くなったそうだが、2人は逃げずにサービスをやり遂げた。終了後、2人で拳を合わせた……。

そうして、次々と精神科病院の文化祭や介護施設を回り、自分たちのサービスに長蛇の列ができているのを見て、人間の美への欲求は年齢に関係なく高いということを実感した。

彼らが訪問した施設の認知症の方が描いた「思い出の絵」には、自分たちが訪問美容した時のことが描かれていた。その時は、思わずうれし涙が出そうになったそうだ。

店舗型に比べて格段に低い初期投資。人件費や材料費を高くすることで、より良いサービス提供が可能に
成功のポイント

tripsalon3そうした数々の経験を乗り越えて独立を果たしたわけだが、事業としての成功確度は高いと計算していた。というのも、美容室の開業までには、まず最低でも4~5年は修行期間が必要だ。実際、湯浅氏と桜庭氏が独立するまでには7年かかっている。

しかし、独立する美容師が多いものの、大半が途中でやめてしまう。朝5時起床で準備をして、夜は12時過ぎに帰宅するという激務に加え、独立したての頃の給与は月給12~13万円程度という辛い世界。しかも独立して店を開くには最低でも500~600万円はかかる。1店舗だけだと経営は安定せず、2~3店舗と拡大するようにならない限りは継続するのが難しいそうだ。また、店舗を経営していた美容師が廃業して1000円カットの雇われ美容師に転職したら、給与が増えたという話もあるくらいだ。

しかし、「trip salon un.」は店舗を持たないため、初期投資が少なく済んだ。実際にかかった開業費用は100万円以下。材料を一とおりそろえる費用が約50万円で、残りの50万円で出張用の機材を用意した。事務所も月10万のマンションからスタートしている。

店舗を持たないので家賃などの固定費は当然かからない。代わりに発生するのは営業車の費用や燃料費だが、店舗費用と比べれば格段に安い。そのため、原価である材料費や人件費を高めに設定できる。また現金商売なので運転資金が途切れることもない。現在のところ無借金経営とのことだ。

正式にサービスをスタートさせ、最初の顧客は埼玉の朝霞にあるデイサービス施設。たまたまFacebookで知り合った方からの問い合わせがきっかけだった。

また、思いがけない出会いもあった。以前にドリームゲートのマイベストライフで紹介した日本介護福祉グループ会長の藤田英明氏からお食事に誘って頂き、介護業界のいろはや業界の熱さ等ご指導頂き、今でも私達の背中を押して頂いている。それからメディアからの問い合わせも急激に増え、NHKやラジオに出演して事業のPRをしたり、高齢者住宅新聞という業界誌にも取り上げられた。

介護業界や訪問美容業界の暗くてダサいイメージを根本から変えたい!
将来への展望

tripsalon4湯浅氏と桜庭氏にこれからやりたいことを伺ったところ、「介護業界や訪問美容業界につきまとう、暗くてダサいイメージを払底したい、そして新卒からでも訪問美容師の道を選ばれる世の中にしたい」という答えが返ってきた。

実際、2人はそうしたイメージを変えるべく、定期的にヘアーショー講演等に参加している。ヘアーショーというのは渋谷などのクラブで開かれるイベントで、トークライブやライブの演出をしながら、実際のヘアカットを見せるものだ。

また、パンフレットなども“いかにオシャレに見せられるか”を意識し、デザインや言葉の一つひとつまで細部にこだわっているそうだ。そうしたブランディングも重要な事業戦略として意識して行っているところに、湯浅氏と桜庭氏の視点の高さがうかがえる。

インタビューの最後に、2人からもらった起業・独立を目指す方々へのメッセージを紹介したい。

「人間やればできるもの。0からでも必死に努力すれば、必ず結果は出る。楽しんで仕事をしよう」

株式会社 un.
代表者:湯浅 一也氏、桜庭 太氏。 スタッフ数:18名
設立:2012年12月 URL: http://c-b-un.com/
事業内容:
介護施設などへの訪問美容サービス「Trip salon un.」を展開。

当記事の内容は 2013/10/31 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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