9カ月で100名の社員を採用。アジア圏で急成長を始めた日本の次世代ソーシャルゲームベンチャー「バンク・オブ・イノベーション」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

リリース4カ月で100万ダウンロード! 海外でも伸び始めたソーシャルゲーム
展開している事業内容・特徴

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左:「征戦!エクスカリバー」韓国版
中央:「征戦!エクスカリバー」日本版
右:コミュニケーションプラットフォーム

ソーシャルゲームのプラットフォームビジネスで急成長したGREEやDeNAを尻目に、2013年はプラットフォームを超えて直接ゲームを提供するタイプのベンチャーが注目を集めている。その筆頭がパズドラだろう。あるいは上場しているベンチャーではコロプラやクルーズなどが挙げられる。

しかし、その次の世代のゲーム系ベンチャーがどこかと問われれば、まだまだ玉石混合だ。しかし、今回紹介する株式会社バンク・オブ・イノベーションは、次世代を代表するゲーム系ベンチャーになる可能性を秘めている。

同社がリリースしているゲームの代表作は、「征戦!エクスカリバー」と9月にリリースされたばかりの「ガールズ×マジック」「ポケットナイツ」の3つ。さらに現在3本の新作を開発している。そのうちの2本は前述の代表作同様、“ネイティブソーシャルゲーム”で、残りの1本は新規事業として、アバター同士でコミュニケーションを行うスマートフォン向けの“コミュニケーションプラットフォーム”の開発を進めているそうだ。

同社が開発・運営しているゲームは日本だけでなく、海外、特にアジア圏で人気だという。例えば、「征戦!エクスカリバー」は2012年12月にAndroidアプリの売上でトップ10に入り、その韓国版はリリース4カ月で100万ダウンロードを超えた。

同社の急成長を示す数字は採用数からも読み取れる。2013年1月には社員数30名ほどだったが、2013年10月には130名にまで拡大。わずか9カ月で100名もの社員を新規採用しているのだ。

年商は非公表だが、利益ベースで前年比約2,000%の成長率とのこと。前述のとおり猛烈な勢いで人員を増やしているにもかかわらず黒字経営で、すでに1、2年後のIPOに向けた準備にも取りかかっている。

なぜ海外でも人気? その秘密は国境への対応にあった
成功の秘訣

bankof2同社のゲームが日本のみならず海外でも人気な原因を、バンク・オブ・イノベーションの代表である樋口智裕氏に伺ったところ、「アバター」にあると教えてくれた。ソーシャルゲームといえばカードゲームタイプが日本では主流だが、実はアジア圏ではあまり受けてない。逆に同社の提供するアバター型が人気を集めているそうだ。

「アバターのデザインには、ある意味国境があります。日本で受けている絵柄(デザイン)が、中国や韓国、台湾で受けるとは限りません。むしろ国ごとに好みがあり、そうした好みに合わせていかなければヒットしないのです」(樋口氏)

しかし、「ゲームシステム」に関しては、国境は存在しない。ゲームを面白いと感じる要素は世界共通。「何をもって面白いと感じるのか」というテーマは議論が尽きないので割愛するが、同社は世界中の人々が楽しいと感じる「ゲームシステム」を軸に、デザインなどを展開する国ごとに変えることで成功している。

ちなみに人気のゲームタイプには、国ごとの違いがあるそうで、日本では「カードゲーム系」が大流行しているが、欧米では「箱庭系」、中国では「ディフェンス系」が受けているとのことだ。

ここで、ソーシャルゲームをやらない人にとっては「~系」と言われても意味が伝わらないだろうから解説を加える。

まず、「カードゲーム系」だが、ゲーム内でカードを集めて敵と戦い進めるものを総称する。カード自体を強化したり、合成してより強いカードにするとゲームが有利に進められる。このカードを集める際、有料で貴重なカードが獲得できる仕組みを「ガチャ」などと呼び、一部でこのガチャによる課金が高額になりすぎるという事で社会問題としてニュースになったこともあり、現在では業界団体によって独自に自主規制やガイドラインが作られている。

「ディフェンス系」とは、簡単にいうと押し寄せる敵を陣地に近づけないよう、砲台や障壁を設置して敵を倒して遊ぶようなゲームの総称。かつて「タワーディフェンス」という無料のゲームが世界的に流行し、その流れをくんでいる。

「箱庭系」はその名のとおり、小さな箱庭の中でいろいろなものを育てて遊んだり育てたキャラクターでバトルを行うゲーム。育成自体に重点をおいて楽しめるようになっている事が特長。

そして、「アバター系」。これはキャラクターを育てることに主眼を置いたゲーム。箱庭系とも近いが、こちらは自分自身に似たキャラクターを作れるという点が大きいな違いだろうか。例えば、サイバーエージェント社が運営するアメーバピグなどのサービスも「アバター系」といえる。

もっとも、どの系統のゲームもバトルや育成するといった要素を持つものが多く、さらにいえば、いわゆる「ソーシャルゲーム」自体の定義が曖昧で、スマートフォンなどで手軽に遊べるゲームやサービスをすべて包括したイメージで使われる事が多い。

ちなみに、日本オンラインゲーム協会によれば、ソーシャルゲームの市場規模は2012年には4,351億円(※)に達しているという。

(※)日本オンラインゲーム協会の発表より引用
http://www.onlinegamer.jp/news/201307230033/

最初に手がけた動画検索サービスを売却してソーシャルゲームに方向転換
ビジネスアイデア発想のきっかけ

樋口氏が起業を意識したのは高校2年の時。子供の頃は物理学者なりたかったそうだが、中学時代、親にパソコンを買ってもらい、ITの面白さに触れた。そして高校2年の頃に読んだ本田宗一郎の自伝に衝撃を受けたという。「起業家ってすごい!」と感銘した樋口氏は、自分も起業家になろうと決意する。

青山学院大学在学中に、学生ベンチャーの創業メンバーとして参加。携帯アプリケーションや企業向けの業務システムの開発などを手がけた。独学でプログラミングを習得し、大学卒業と同時に半年ほどフリーのエンジニアとして活動した後、同社を設立。自宅を拠点に、パソコン一つでのスタートだった。そして、「YouTube」や「ニコニコ動画」などの動画サイトのユーザー数が急速に拡大した当時、多数の動画サイトを横断的に一括検索できたる検索エンジンがあると合理的だろう、と考えた樋口氏は、ほぼ独力で動画検索エンジンの「Fooooo(フー)」を開発する。スペインからのお声がけでスペイン語版をリリースしたり、米国のベンチャーキャピタルから投資話も持ちかけられるなど「Fooooo」は、国内外で数多くのメディアに取り上げられたそうだ。「自分のつくった独創的なものを世界に認めてもらいたい」という生粋のエンジニア魂が震えた瞬間だった、と当時のことを樋口氏は語る。しかし、このサービスは2009年後半に売却。同時期にソーシャルゲームに参入した。

すでに動画検索エンジンで注目され、1億円単位の出資も受けていたため開発資金は潤沢にあった。ソーシャルゲームに参入してすぐ、本格的なゲームをリリース。その後に手がけたゲームも軒並み大ヒットし、前述したとおりの急成長を続けている。

 同社のゲームは海外でも受け入れられているが、特に日本以外のアジア圏はAndroidが強く、iPhoneとAndroidのシェアは、同社のユーザー比で1対9にもなる。iPhoneは端末自体が高価なため、日本やアメリカなどの先進国では売れているが、アジア圏ではまだ高嶺の花。そうした状況を把握したうえで、同社はAndroid向けのゲームに力を入れているというわけだ。

アバターに注力しているゲーム会社がまだ少ない。今こそチャンス!
将来への展望

実は、「アバター系」のゲームを本格的に手がけている会社はまだ少ない。ちなみに同社の陣容は、130名の社員のうち、デザイナーが50名、エンジニアが40名、企画・プロデューサーに当たる人材が30名。6チームが稼働しており、1チーム平均で9カ月ほどかけて1本の新作をリリースするそうだ。1チーム20名で9カ月となれば、かかる人件費等のコストだけで膨大な額が必要となる。もちろんプロモーション費用などは別だ。

最近、ソーシャルゲームの開発費高騰が叫ばれているが、そのほとんどを占めるのが人件費。つまり、どれだけの手間と時間をかけて1本のゲームがつくられているのかがわかる。

同社は、外注費率を10%以下に抑えており、すべてのゲームを樋口氏が監修している。少しでも品質に問題があればつくり直し、お蔵入りも辞さない。樋口氏は言う。「業務の70%をゲームづくりに、残りの20%で人材採用。経営・マネジメントに割く時間は10%ほど」。樋口氏は、あくまで本田宗一郎さんのような「ものづくり社長」としてのスタンスを崩さないのだ。

一度市場のクオリティが上がってしまうと、ユーザーはもう低い品質のゲームには戻らない。それゆえ樋口氏は、今一番売れているゲームより2歩先の、一流といわれるクオリティにこだわり続ける。

特にスマートフォンなどで遊べる無料ゲームは気楽にダウンロードして試せるため、気に入らなければすぐほかのゲームに浮気される。しかし、ユーザー数と時間は有限だ。よくいわれることだが、エンターテインメントの競争相手は業種を超える。コンシューマーゲーム機はもちろん、テレビや音楽、映画などといった競争相手に対して、どれだけユーザーの興味・時間を獲得できるかが勝負だ。

その限られた余暇時間をいかに獲得するか、移り気なユーザーをつなぎとめておくためには、常に高い水準の品質のゲームを出していかなければ、あっという間に競争に負けてしまうというわけだ。しかし反面、ソーシャルゲームは人気が一気に高まりやすく、びっくりするような大ヒット作が生まれる土壌にもなっている。

栄枯盛衰の激しい世界だが、ゲーム産業は日本の十八番。ゲームクリエイターに憧れる子供も増えていると聞く。そんな世界にまた新しいスターが生まれている予感がした。経営陣3名とも30歳、社員の平均年齢は25歳という若手ベンチャー企業の同社に「次世代を代表するゲーム系ベンチャー」として、これからのさらなる成長を期待したい。

株式会社バンク・オブ・イノベーション
代表者:代表取締役社長 樋口 智裕 設立:2006年1月
URL:http://www.boi.jp/ スタッフ数:130名
事業内容:
スマートフォン向けネイティブアプリの開発・運営。 ・ソーシャルゲーム ・コミニケーションプラットフォーム

当記事の内容は 2013/10/15 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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